ロシア軍との戦闘が続くウクライナでは、すでに170万人以上の人びとが隣国ポーランドハンガリーなどに避難している(国連難民高等弁務官事務所、3月6日)。南東部のマリウポリ市では、病院、スーパーマーケット、住宅も大きな被害を受けている。水も電気も暖房もなく、インターネットや電話も遮断された。国境なき医師団(MSF)は、この壊滅的な人道的状況に際し、民間人の安全な避難に関する両国の合意の動向を注視。激しい交戦地から民間人が避難する機会は一回限りの、時限的なものであってはならず、民間人の安全と医療・人道援助へのアクセスは常に確保されなければならないと強く主張する。また、MSFは、「国際人道法」が規定する紛争地における医療・人道援助活動の保護において、独立・中立・公平な立場の人道援助従事者が、医療を提供できるよう安全が保証されるべきと訴える。

ポーランド南東部の国境の町で夜を過ごすウクライナの人びと=2022年3月1日 (C) Maciej Moskwa
  • 街のあちこちで砲撃の被害

マリウポリに滞在しているMSFスタッフのオレクサンダーは現地の状況について、こう話す。「(3月5日は)街のあちこちで爆発があり、ひどい状態でした。砲撃が激しく、廃墟と化している地区もあります。飲料水はどこにもなく、水を積んだ支援のトラックを見つけましたが、長い列ができていました。大半の店やスーパーマーケットは、食料を見つけられなかった人たちによって商品が持ち去られていました。薬を売っている店もありません。人びとは壊れた薬局から、残っているものを取っていくしかないのです」

「今日(6日)、避難するための道路が確保されるという情報があり、子どもたちと白いリボンのステッカーを貼った多数の車を見かけました。しかし、その後、マリウポリからザポリージャへの道路で継続的に砲撃があったため、中止されたようです」
  • 民間人の保護、そして医療・人道援助提供のための安全確保を

シリアイエメンなど、紛争地で多くの活動経験のあるMSF日本事務局長の村田慎二郎は、「紛争下で長年活動してきたMSFの経験から、時限的な人道回廊は助けにはなり得ますが、それだけでは十分でないことは明らかです。避難は自発的なものであるべきで、強制されるべきではありません。また、避難できない病人、避難しない医療従事者など、避難期限後も紛争地に残る民間人は保護されなければなりません。たとえ戦時下であっても安全を求める権利と人道援助のためのアクセスは、紛争当事者が勝手に決めた、限定的なものであってはならないのです」と話す。

MSFは、今回のウクライナでの戦闘における軍の交戦で、例外なく国際人道法が順守され、この戦争による民間人への被害を避けるためのあらゆる予防装置が講じられるよう求めている。時と場所を問わず武力をもたない民間人は戦闘員と区別して保護されなければならない。また、負傷して戦闘能力を失った戦闘員への医療行為においても、医療従事者の安全が確保されなければならない。




配信元企業:国境なき医師団(MSF)日本

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