新型コロナウイルスの感染拡大を受け、中国の製造拠点である主要地域が都市封鎖ロックダウン)を実施した。これにより電子機器や自動車の工場で生産が止まっていると、ロイター米ウォール・ストリート・ジャーナルなどが3月14日に報じた。世界のサプライチェーン(供給網)にとって新たな打撃になりそうだという。

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 米アップルのスマホ「iPhone」の製造を手がける台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業や、中国国有自動車大手、中国第一汽車集団との合弁工場を持つトヨタ自動車などは工場の操業を一時停止したと明らかにした。

電子産業の集積地がロックダウン

 電子産業の集積地である南部の広東省深圳市では少なくとも1週間、都市封鎖する方針。市政府は全市民が3回のPCR検査を受ける必要があるとし、1週間後に封鎖を延長する必要があるかどうかを決めると述べている。

 深圳市では、2022年3月13日に86人の新規感染者が確認された。ウォール・ストリート・ジャーナルによると、中国の感染者数は世界水準に比べると少ないが、「ゼロコロナ政策」を徹底する同国では、検査と都市封鎖を通じてすべての感染拡大を抑え込もうとしている。ここ最近中国では1日当たりの新規感染者数が20年初頭以降で最多を記録した。変異型のオミクロン株が感染拡大の原因と当局はみている。

 深圳市では現在、バスと地下鉄が運休している。市当局は市内や近隣の香港の住民に不可欠なエッセンシャルサービスを除いてほぼすべての事業活動を停止するよう要請した。

深圳は鴻海、ファーウェイ、BYDの製造拠点

 鴻海の深圳工場では、アップルのiPhoneのほか、タブレット端末「iPad」、パソコンなどを製造している。ただ、iPhoneのほとんどは中国中央部の河南省で製造している。同社は「中国の他の工場にラインを移して生産体制を維持するつもりだ」と述べている。

 また、プリント基板の台湾・欣興電子(ユニマイクロン)も深圳での操業を停止した。ユニマイクロンもアップルの主要サプライヤーの1社だが、同社は現在深圳でアップル関連の製造を行っておらず、東部の浙江省や北海道、台湾でアップル向け製品を製造している。ユニマイクロンによると、同社の売上高のうち、深圳工場が占める比率は3%未満にとどまるという。

 アップルが開示しているサプライヤーリストによると、深圳を拠点とするアップルの取引先は少なくとも6社ある。深圳は、通信機器の華為技術ファーウェイ)や電気自動車(EV)の比亜迪(BYD)など中国大手メーカーの本拠地でもある。

自動車産業の拠点も都市封鎖

 自動車産業の集まる東北部の吉林省長春市では22年3月11日から都市封鎖が実施された。吉林省は3月14日、住民が省・市をまたいで移動することを禁止すると発表した。

 長春市に本社を置く中国第一汽車集団は工場をここ数日間停止していると明らかにした。独フォルクスワーゲン(VW)は22年3月14日から3月16日まで市内の車両と部品工場の稼働を停止すると発表。トヨタ3月14日に長春工場を一時停止した。トヨタの広報担当者は、今後政府の指示に基づいて操業を再開する予定だと述べている。

 トヨタフォルクスワーゲンはそれぞれ、中国第一汽車と合弁工場を運営している。 中国第一汽車は、2社との工場に加え、他の3工場も停止したと関係者は話している。

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写真は吉林省長春市内(写真:AP/アフロ)