桜の開花がニュースになる時季ですが、「桜の開花日」といえば、一般的にソメイヨシノが基準になっています。ヤマザクラやエドヒガンザクラ、早咲きで有名なカワヅザクラなど、桜にはいろいろな種類があるのに、なぜソメイヨシノなのでしょうか。気象庁観測整備計画課の担当者に聞きました。

全国どこでも観測できる桜

Q.気象庁が桜の開花や満開を観測している目的、どのように活用しているかを教えてください。

担当者「桜の開花などを気象庁で観測するのは、季節の遅れ進みや、気候の変化など、総合的な気象状況の推移を知ることが第一義です。桜でいえば、毎年の各地の開花状況を観測することで、その推移をまとめることができます。

気象庁ホームページの『地球温暖化』のコーナーでは、昔の開花状況と近年の開花状況を比べて、気候変動の影響を知ることができるページがあります。桜の開花日は、1956年1985年の平年値では、関東から瀬戸内、山陰にかけてが4月1日に開花するラインでした。ところが、1991年~2020年の平年値では、かなり北に上がっています。茨城県から北陸辺りが4月1日開花のラインです。この要因の一つはやはり、気温が上がったためと思われます。そのために桜の開花が早くなっているとみられます。

よくニュースで『観測史上、一番早い開花』と流れることがありますが、つまり地球温暖化が進んでいるのです。桜の開花の早まりは、2月、3月の気温の上昇と相関関係を示しています。もちろん、それがすべてではありませんが、桜を観測することは、地球温暖化の影響を知る目安にもなるのです」

Q.桜はいろいろな種類があるのに、なぜ主にソメイヨシノを観測しているのでしょうか。

担当者「ソメイヨシノが日本で一番、一般的な桜だからです。南西諸島など一部を除いて、全国どこでも観測できる桜はソメイヨシノです。各地の観測結果を互いに比較するため、日本全国に広く分布しているものを観測対象にしています。なるべく統一性を持たせないと比較できないためです。

Q.ソメイヨシノの代替としているエゾヤマザクラ、ヒカンザクラを選んでいる理由も教えてください。

担当者「北海道の一部地方では、ソメイヨシノが一般的ではありません。昔から咲いていた桜を選ぶというのが、気象庁の生物季節観測の指針にあり、地域を代表する桜として、北海道の一部ではエゾヤマザクラ、沖縄県鹿児島・名瀬ではヒカンザクラを観測しています」

Q.各地の標本木は、どのような基準等で決まっているのでしょうか。

担当者「標本木は、原則的には気象官舎の構内で定めるのですが、付近の公園などにある木を標本木にする場合もあります。『付近』とは、気象官舎からおおむね5キロ未満の距離にあり、標高がおおむねプラスマイナス50メートル以内の場所を指します。東京都心については、靖国神社ソメイヨシノの標本木を定めています」

Q.昨年2021年は広島市の開花が3月11日で、統計開始以来2番目の早さと聞いています。「統計開始」は何年でしょうか。また、昨年、全国的にも開花の早い地域が多かったのは、なぜでしょうか。

担当者「1953年から統計を開始しています。ソメイヨシノについて全国で最も早い開花は3月10日で、高知市などで3月10日に開花した記録があります。開花が早くなっている要因ですが、気象庁がまとめている『気候変動監視レポート』でも触れています。桜の開花が早まっている要因の一つとして、長期的な気温上昇の影響が考えられます。今のデータをみていると、これまでになく、早く咲いている傾向があります」

オトナンサー編集部

なぜ「開花日」がソメイヨシノ?