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 寝る時にはカーテンを閉めて、ライトはすべて消して暗くして寝よう。

 『PNAS』(2022年3月14日付)に掲載された研究によると、睡眠中に少しの光を浴びるだけでも、睡眠が浅くなり、心拍数が上がった状態が続き、インスリンの作用が十分に発揮できない状態になるという。

 たった一晩、適度な照明がついた部屋で眠るだけで、ブドウ糖と心血管系の制御機能が損なわれ、心臓病・糖尿病・肥満になるリスクが高まるのという。

 睡眠中に浴びる光をできるだけ少なくすることがとても大切なのだという。

【画像】 明るい部屋で体はうまく休めない

 昼に光を浴びると、心拍数が上がることは以前から知られていた。心臓のギアを上げ、意識をはっきりさせるために、交感神経が活発になるのだ。

 これは、目が覚めている間に遭遇するさまざまな出来事にうまく対応するための人体の仕組みだ。

 「今回の結果は、夜に光を浴びた場合も同じようなことが起きることを示しています」と、イリノイ州ノースウェスタン大学のフィリス・ジー博士は説明する。

 「明るい部屋で眠ろうとすると、たとえ適度な明るさでも心拍数が上がります」と、ノースウェスタン大学ダニエラ・グリマルディ助教は話す。

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 「睡眠中でも、自律神経が活発になるのです。好ましいことではありません。通常、心拍と心血管系の活動は昼に上がって、夜には低下するものです」

 昼と夜の生理機能は、交感神経と副交感神経によって調節されている。昼その役割を担うのは交感神経だ。夜になれば副交感神経が交代して、休息をとるよう全身に伝える。

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寝室が明るいと糖尿病や肥満のリスクも

 今回の研究では、灯りのついた部屋で眠ると、翌朝に「インスリン抵抗性」が上がることが判明している。

インスリン抵抗性が高まると、体の中の細胞がインスリンに鈍くなり、本来ならエネルギーになるはずの血中のブドウ糖をうまく利用できなくなる。

 それを埋め合わせるために、膵臓(すいぞう)はさらにインスリンを分泌する。これを長い間繰り返すと、徐々に血糖値が上がっていく。

[もっと知りたい!→]寝落ち問題。スマホやテレビを観ながら眠りにつくことは悪いことなのか?

 過去には、明るい部屋で寝ると、健康な人でも太りやすくなることを明らかにした研究もあると、ジー博士は説明する。そして今回は、その基礎的なメカニズムが浮き彫りになっている。

 「今回、この現象を説明する上で基礎になるかもしれないメカニズムが判明しました」と、ジー博士は話す。「それがブドウ糖の調整能力に影響するようです」

 なお今回の研究の参加者は、夜に自分の体に起きている生物学的な変化に気づいていなかったという。

 「ですが、脳は感じています」とグリマルディ助教は言う。

 「その脳の活動は、浅く、途切れ途切れにしか寝ていない人の脳であるかのようです。つまり本来あるべきように休めていないのです」

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人工光で照らされた社会が健康にもたらす影響

 夜眠るとき、人工の光に照らされるのはよくあることだ。室内の照明だけでなく、都市部なら外からも照明の光が差し込んでくる。

 また最大で4割もの人たちが、ベッドライトやテレビをつけっぱなしにして眠っているという。

 「睡眠・栄養・運動以外に、昼間に光を浴びることも健康にとっては大切なことです。ですが、夜になれば、たとえ適度な明るさであっても、心臓や内分泌系の健康を損ねる恐れがあります」と、ジー博士は述べる。

 この研究では、部屋の明るさが一晩の眠りに与える影響を、100ルクス(適度な明るさ)と3ルクス(薄暗い)で比較して調査した。

 その結果、適度な明るさであっても体の警戒レベルが上がるほか、心拍数が上昇し、心臓が収縮する力が強まり、酸素を含んだ血液が血管に送り出されるスピードが速まることが明らかになった。

 「こうした発見は、夜になれば内外から照らされる現代社会で生きる人々にとって、とりわけ大切なことです」と、ジー博士は話す。

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部屋を暗くしてぐっすり眠るヒント

 ということで寝る直前にはカーテンを閉め、ライトを完全に消して暗くして寝よう。以下はぐっずり眠るための3つのヒントだ。

1. 眠るときは消灯する。安全のためなど、どうしても灯りが必要ならば、薄暗いものを床の近くに設置する。

2. 照明の色が大切。琥珀色・赤・オレンジの光(電球色)は脳への刺激が少ない。白や青い光(昼光色)は眠りの大敵なので、寝室には使わないようにしよう。

3. 外から光が入ってくるなら、遮光カーテンやアイマスクがオススメ。ベッドを動かして、外の光を避けるのもありだ。

 なおジー博士によると、眠るときに部屋の「物がよく見えるのなら、明るすぎ」であるそうだ。

References:Close the blinds during sleep to protect your health: Even moderate light exposure during sleep harms heart health and increases insulin resistance -- ScienceDaily / written by hiroching / edited by parumo

 
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部屋を明るくして寝ると眠りが浅くなるだけではなく、心臓病や糖尿病、肥満のリスクが上がる