歯医者・歯科医

ロシアによるウクライナ侵攻の影響で、日用品が次々に値上げしている。そんな中、歯科医にもその影響が出ているという。一見、ウクライナ情勢と関係なさそうに見えるが、実は歯の治療に必要な材料が高騰しているのだ。

歯科医の間では、「治療しただけ赤字になる」という悲鳴も聞こえてきて…。


■日用品や食材が値上げ

2月下旬から始まったロシアウクライナ侵攻によって、食料の国際市場は混乱が続いている。冷凍食品、肉や魚、野菜、小麦粉、そして石油と、日用品や食材の価格が高騰。

さらにコロナ禍による工場稼働率の低下、輸送停滞も加わり、先日はマクドナルドがフライドポテトの販売を一時縮小するなど、庶民にとっても手痛い状況が続いている。


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■「銀歯の材料が高騰」

この値上げの波は歯科医の間にも。あまりピンとこないかもしれないが、歯の治療に必要な素材の価格が高騰しているのだ。

東京・品川区内で開業している40代の歯科医は表情を曇らせる。「3月初めから、取引業者から治療の詰め物に使う合着材や手術で使う縫合糸の在庫が安定していないと言われました。今まで働いていてこんなことは初めてです」(歯科医)。時期的に見て「ウクライナ情勢が影響している可能性が高い」と話す。

特に、虫歯の治療に使う銀歯は甚大な「被害」を受けている。「銀歯に含まれるパラジウムという金属の価格が高騰して、原料である合金の値段が上がっています。ロシアパラジウムの世界生産量で上位に入っているので、関係ありそうですよね…」(前出・歯科医)。

■「治療費に上乗せできない」

そうなると、今後、歯科医の治療費も上がるのだろうか。前出の歯科医は否定する。

「銀歯は患者の保険適用。材料費が一気に高くなっても治療費を同時に上げるというわけにはいかず、医院側で負担せざるを得ない。治療すればするほど赤字になってしまうんですよ」(前出・歯科医)。治療に必要な物の値段が上がっているのに、それを患者に求めることができないところが頭の痛い問題だ。

この歯科が取引をしている、歯科材料を扱う総合商社にこの件について問い合わせたが、混乱が続いているせいか「回答できない」と返答があった。


■日本歯科医師会が要望書を提出

ウクライナ情勢歯科医に打撃を与えているのか。日本歯科医師会に問い合わせると、「断定はできないため、コメントできない」としたが、「3月16日にホームページでリリースを出している」と記者を案内した。

それによると、日本歯科医師会は15日、政府に対して、歯科用金属の安定供給を求める要望書を提出。要望書では、ウクライナ侵攻の影響で金やパラジウムの価格が急騰していること、さらに今後戦争が悪化した場合、医療現場における歯科用金属材料の入手が困難になることへの懸念を表明している。

その上で、国民へ安心かつ安定的な歯科医療提供を確保するために、国として必要な措置を講じるよう要望したという。とはいえ、この問題の解決策は、やはり1日でも早く平和が訪れることだろう。

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(取材・文/Sirabee 編集部・斎藤聡人

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