スポーツ選手が、「ふくらはぎの肉離れで戦線離脱」というニュースをよく見ます。普段から運動しない人が急に激しい運動をした場合にも、肉離れを引き起こすことがあるようです。しかし、不思議なのは「肉離れ」という呼び方です。字のごとく読めば「肉が離れる」であり、「筋肉が骨から離れてしまうのか?」と思ってしまいますが、そうではないようです。なぜ、筋肉が骨から離れるわけではないのに、「肉離れ」と呼ぶのでしょうか。お茶の水セルクリニックの寺尾友宏院長(整形外科)に聞きました。

筋肉が部分的に切れるけが

Q.「肉離れ」とは、どういう症状なのでしょうか。どのようなときに発症しますか。

寺尾さん「肉離れは、筋肉が部分的に切れてしまった状態のことをいいます。そのため、『部分断裂』と呼ぶことが多いです。

筋肉は、線維が集まったような構造をしており、その線維が伸び縮みすることで筋肉の長さが変わり、その長さの変化が骨に伝わることで動きになります。筋肉の伸び縮みに無理が生じると、筋肉の線維が切れて肉離れを起こします」

Q.「肉離れ」は、字のごとく「筋肉と骨が離れてしまう」のではないということでしょうか。

寺尾さん「筋肉が骨から離れるのではありません。筋肉と筋肉が離れてしまう状態です。筋肉が骨につく部分は『腱(けん)』(筋肉と骨がつく際に仲介をする強い結合組織)になっていることが多いため、筋肉と骨が離れる場合は、腱が骨から剥がれた状態になります。腱が骨から離れてしまうとき、薄く骨が剥がれてしまうと『剥離骨折(裂離骨折)』という、けがになります」

Q.なぜ、筋肉が骨から離れるわけではないのに、「肉離れ」と呼ぶのでしょうか。

寺尾さん「推測にはなりますが、筋肉が切れて、筋肉同士が離れてしまっているように見えることから、名付けられたのかもしれません。重度の肉離れを起こすと、外から筋肉にへこみができているように見えることもあります。そのような状態を見て、筋肉が離れ離れになってしまったと考え『肉離れ』という名前で呼ばれるようになったのかもしれません」

Q.アスリートで肉離れを繰り返す人がいます。注意をしていると思うのですが、なぜ、繰り返してしまうのでしょうか。

寺尾さん「原因は2つ考えられます。1つ目は、体の使い方の癖に由来するもの、もう一つは、肉離れ後の組織修復に由来するものです。

肉離れを起こすアスリートの中には、特定の部位に極端に負担のかかるような体の使い方をしている人もいます。そのような癖があると、同じ場所に繰り返し負担がかかってしまい、同じ場所の肉離れを起こす可能性があります。

肉離れを起こした後、修復する過程で筋肉だけでなく、繊維組織ができてしまうことがあります。そうすると、筋肉の中に固い組織ができてしまうため、周囲組織との柔軟性に差が生じ、切れやすくなってしまうことがあります」

Q.一般人が肉離れを引き起こさないためにできることは何ですか。

寺尾さん「運動の前後に、ストレッチをしっかりと行うことが基本になります。あまり動かしていない筋肉は伸び縮みがしにくい状態になっているため、急に動かすと切れてしまうことがあります。運動前のウオーミングアップ、運動後のクールダウンを行い、筋肉に過度な負担がかからないようにすることが重要です」

オトナンサー編集部

「肉離れ」と呼ばれる由来は?