国立研究開発法人「理化学研究所(理研)」の有期の研究系職員およそ600人が来年3月末で雇い止めになるとして、一部職員でつくる労働組合が見直しを求めている。

3月25日には理研への働きかけを求めて、文科省厚労省に要請書を提出。「無期転換逃れ」のための違法な雇い止めだと主張している。

組合によると、対象者の内訳は2023年で勤続10年を超える研究職が約300人。これに伴い、約60の研究チームが解散することになり、そこで働く約300人も仕事を失うという。計約600人。これは理研の全職員の8分の1に相当するという。

当事者らは「移転先が決まっていない。科研費をもらっているが研究が中断してしまう」「日本の科学の危機。技術が海外に流出してしまう」などと訴えている。

●研究者の「無期転換10年ルール」

2013年施行の改正労働契約法により、有期雇用の労働者でも、同じ職場で5年を超えて働くと無期雇用に転換できる権利を得られる「5年ルール」が導入された。

ただし、研究者らは例外とされ、長期のプロジェクトもあることから、「イノベ法(科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律)」により、「10年ルール」が採用されている。

今回、大量の雇い止めが懸念されているのは、2023年がちょうど10年のタイミングになるからだ。組合側は一律に10年で雇い止めするのは、法の趣旨を潜脱するものだと主張している。

●過去には事務職の「5年ルール逃れ」も問題に

理研では「5年ルール」の適用がはじまった2018年にも、大量の事務系職員の雇い止めが予定されていた。ただし、このときは労働組合の交渉により撤回された。

ポイントになったのは、理研が就業規則で有期雇用の更新上限を事務職5年、研究職10年と定めたのが、改正法が施行されて数年後の2016年4月だったことだという。

少なくとも、それより前に採用された事務職については、さかのぼって更新上限が適用されることはないと主張し、該当者が上限の適用除外になった。

組合側は今回の研究職についても、2016年4月より前に採用されているため適用対象外だと指摘。そもそも上限の撤廃を求めている。

弁護士ドットコムニュースでは、理研に対し、組合主張への見解・反論を求めている。回答があり次第、掲載する。

理研の非正規研究者、「無期転換逃れ」で大量雇い止めの危機 労組が撤回求める