京都・先斗町歌舞練場で上演された『魂神楽』が4月16日(土)よりイープラスStreaming+にてオンデマンド配信されることが決定した。

本公演は、日本遺産『神々や鬼たちが躍動する世界~石見地域で伝承される神楽~』の広報活動の一環として、島根県益田市の石見神楽社中で作る、益田市神和会の選抜メンバーである石見神楽@Masudaと、日本舞踊家・尾上菊之丞、人形浄瑠璃文楽太夫・竹本織太夫らが初競演。演出・演奏を音楽家・吉井盛悟が、脚本を戸部和久氏が担当し、古来日本の街道の起点となった京都三条大橋のたもと、先斗町歌舞練場にて上演。盛況の内に幕を下ろしている。そんな『魂神楽』初日3月27日(日)公演のレポートが到着した。

『魂神楽』公演初日レポート

3月27日、京都鴨川の畔は、晴れわたる空に桜が映える。日差しも穏やかな鴨川の畔に立つ先斗町歌舞練場の客席は 1 階から二階まで満員の熱気に包まれた。

開演を迎え、神楽の奏楽が奏でられると、この公演の実行委員長を務め、本業も神主という神田惟佑(かんだゆいすけ)が現れ、緞帳に向かい、修祓の儀式を見せ、これより始まる神楽、神遊びへの期待は高まる。いよいよ幕が明くと、笙の音に乗せ竹本織太夫(たけもとおりたゆう)が古事記の序言葉をおりこんだ語りを始める。太陽の如く赤く浮かび上がった大太鼓の前に控える吉井盛悟(よしいしょうご)が語りに合わせて厳かに太鼓の音を響かせると、尾上菊之丞(おのえきくのじょう)が魂を吹き込まれ、踊り始める。菊之丞演じるは神々のなかにあるすさぶ魂、荒御魂。そして、スサノオの荒御魂が高天原で荒ぶり乱暴を働く荒々しさを演じ、舞台に掛かる注連縄を切って押すと、今度はアマテラスの荒御魂を演じる。男神、女神の荒御魂を素踊りで見事に演じ分け、アマテラスの岩戸が隠れとなりこの世が闇へと包まれていくと様子を観客は引き込まれるように固唾をのんで見守っていた。

舞台は石見神楽の代表的な演目である『天の岩戸』へと展開し、面をかけたしなやかなアメノウズメ(天の宇津女)の舞の後、勇壮なタジカラオ(天の手力男)が幾度も幾度も思い岩戸をこじ開けようと挑み、ついに岩戸を開くと世界に光がさした。

幕間となり、第二幕はこれも石見神楽の代表的な演目である『八岐大蛇』。幕開きより笛の音に織太夫の語りに会わせるなど、神楽と語りがコラボレーションする舞台となる。スサノオ(須佐之男)が出雲の地に到り、生贄となる稲田姫を土地の大蛇を退治しようと、毒の酒を用意すると、その香りに引き寄せられて、八頭の大蛇が現れる。蛇腹の胴に鹿の角を付けたいかめしい出で立ちの色とりどりの蛇胴が現れ、酒に酔っていく様子を、様々な形に決まりながら見せて行く場面では、決まりの形になるごとに客席から大きな拍手が送られ、熱気は高まっていく。それを太夫の語りがさらに盛り上げて行くと、ついに大蛇は酒に酔いつぶれる。そこへ、スサノオが現れ、大蛇の首を取って行く。あらん限りの力で挑み合う大蛇とスサノオ姿に観客の目はくぎ付けとなり、最後の一頭の首を取ると、客席から万雷の拍手が沸き上がった。

この世の闇は去り、大蛇から取り出した天の叢雲の剣を日本の神器としてアマテラスに捧げたスサノオの悪行は許され、大団円を迎えると、神々と人々の魂は和やかな和御魂となり、壮大な舞上げとなる。この中でアマテラス(菊之丞)も人と人の間に見えずとも存在する絆を結んでゆく光のように解き放たれていく。そして、再びこの世が闇に包まれることがないように、赤く浮かぶ太鼓を太陽に見立て、舞台奥に向かい二礼二拍手一礼をもって幕切れとなった。

日本遺産石見神楽の底力と新たな一歩に客席は興奮冷めやらず、出演者に鳴りやまぬ拍手が送られた。