欧州連合(EU)は3月24日、巨大IT(情報技術)企業に対し広範に規制をかける新たな法案に合意したと発表した。
ベステアー執行副委員長「10月に施行」
新法の名称は「デジタル市場法(DMA)」。米グーグルや米アップル、米アマゾン・ドット・コム、米メタ(旧フェイスブック)など巨大プラットフォーマーの市場支配力に制限をかけ、競争阻害行為の抑止を狙っている。
米ウォール・ストリート・ジャーナルによると、新法は2023年に施行される見通し。だた、ロイター通信によると、欧州委員会で競争政策を担当するマルグレーテ・ベステアー執行副委員長は22年10月に施行されるとの見通しを示している。
新法に違反すれば、世界年間売上高の最大10%の罰金を科される可能性がある。また違反が繰り返される場合は上限が20%に引き上げられ、企業買収(M&A)が禁じられるなど他の罰則が科される場合もあるという。
新法では、時価総額が750億ユーロ(約10兆1000億円)以上か、EU域内の年間売上高が75億ユーロ(約1兆100億円)以上の巨大企業を「ゲートキーパー(門番)」に指定し、ルールを順守させるという。EU域内で月間4500万人のエンドユーザー、あるいは、年間1万人のビジネスユーザーを抱える企業も対象になるようだ。
アップルとグーグルが懸念表明
アップルは3月24日夜に声明を出し、「DMAの一部の条項は、利用者に不必要なプライバシーとセキュリティーの脆弱性を生み出し、その他の条項は、当社が多額を投じて築いた知的財産に課金することを禁じるものだ」と反発した。
グーグルは「消費者の選択と相互運用性に関する熱心な取り組みを支持する」とし、一定の理解を示したものの、「新たなルールがイノベーションと欧州の人々の選択肢を減らす恐れがある」とも述べ、懸念を表明した。
ウォール・ストリート・ジャーナルなどによると、ゲートキーパー企業は、自社製品や自社サービスを、プラットフォームに参加する他社の製品/サービスよりも優遇して表示することが禁じられる。これにより、グーグルは自社のインターネットブラウザーや航空便検索、電子メールなどのサービスを検索結果の上部に表示できなくなる可能性がある。また、アマゾンは自社商品を出品業者の商品よりも優先して表示することが困難になる。
また、サービスを別の自社サービスと連携させることも禁じる。例えばメタは、対話アプリの利用者に、フェイスブックのアカウント取得を要求することが困難になる。
さらに、アプリ開発企業がアプリストア「App Store」を介すことなく、iPhone用のアプリを配布できるようアップルに要求する可能性もあるという。アップルはかねてアプリを正規ストア以外からインストールする「サイドローディング」に反対している。
同社の主張は「ハッカーやネット詐欺師がマルウエア(悪意にあるプログラム)をiPhoneにインストールさせることを許してしまう」というもの。今回も「セキュリティとプライバシーのリスクが生じる」と批判している。
「デジタルサービス法案」も協議中
欧州委は20年12月、DMAとともに、「デジタルサービス法案(DSA)」を公表していた。DSAでは、違法なコンテンツや偽情報、違法商品・サービスの速やかな削除などを義務付けるほか、利用者ごとに異なるオンライン広告について、その表示基準の開示も求めるもよう。こちらもグーグルやメタ、アマゾンが対象になるとみられている。
ウォール・ストリート・ジャーナルの別の記事によると、EUではDSAに関する協議も着々と進んでいるという。
同紙によると、米テクノロジー大手の欧州における売上高は巨額。アップルは全売上高の24%、メタは25%と、それぞれ4分の1を占めている。また、グーグルの欧州・中東・アフリカ地域の売上高は全体の31%。アマゾンの欧州売上高(ドイツと英国)は全体の15%だという。
(参考・関連記事)「アップル幹部が異例のEU批判「規制はパンドラの箱」 | JDIR」
[もっと知りたい!続けてお読みください →] 頑固なアップル、罰金厭わず命令無視 EU幹部が苦言
[関連記事]
コメント