本が好きな人の間でも意見が分かれがちな「紙or電子」問題。昔ながらの紙の本に愛着を持つ人は多い一方、スマートフォンなどでいつでも好きな本を買えて読める電子書籍の利便性にはメリットも多い。しばしば優劣をつけてしまいがちなこの問題、かつて蔵書を全て電子化しながら紙の本に戻ったという人の体験談漫画がSNS上で大きな共感を呼んでいる。

【漫画】「それでもやっぱり紙の本が好きな話」を読む

作者は、『山田全自動の日本文学でござる』などの著作があるイラストレーター・山田全自動としても活動する、ブロガー・郷土史研究家のY氏(@y_ta_net)さん。自身のTwitterでは自分の身の回りの体験と感じ方を描いた作品を多く投稿していて、2月末に投稿した「それでもやっぱり紙の本が好きな話」では、紙と電子書籍双方を体験した上での紙の本の魅力をつづっている。

■合理的じゃなくても…物としての「紙の本」ならではの「体験」

以前、持っている全ての本を手放し電子化しながら、再び紙の本を買い戻したというY氏さん。漫画では「単純に物質として紙の本が好き」と語り、その感覚を「紙の本が好きな人に『別に電子書籍でよくない?』と言うのは、フィギュアを集めている人に『写真で見ればよくない?』と言っているようなものかもしれません」とたとえている。

単に情報を得るためだけに留まらず、本を買いに出かけたり、書店で選んだり、装丁をじっくり見たりという行為も含めて「読書」体験だとY氏さんは語り、情報収集の場面では電子書籍、体験を楽しみたい時は紙の本というように使い分けているという。

Y氏さんはそうしたスタイルを「時代と逆行している気もします」と前置きしつつも、紙の本での読書を今度は「旧車に乗るようなものじゃないかと思います」とクラシックカーになぞらえる。技術が進歩した今、乗り物としては不合理な部分も多い旧車にあえて乗る人がいるのと同じように、「非合理をいかに楽しめるかが人生を豊かにするカギだと思います」と、不便さも含めての紙の本の「体験」の魅力を描いている。

本好きによる、不合理だからこその紙の本の魅力を描いた本作。投稿には6900件以上のいいねとともに、「めちゃくちゃわかります」「フィギュアや旧車の例えが的確」と、紙の本を愛するユーザーから共感のコメントが多く寄せられた。

ついつい効率や合理性ばかりにとらわれて忘れがちなアナログの楽しみ。紙と電子書籍は同じ内容でも違うアイテムとして、それぞれが輝く場面でこれからも共存していくのかもしれない。

画像提供:Y氏は暇人(山田全自動)(@y_ta_net)

紙の本と電子書籍、本好きが語るそれぞれの魅力と使い分け/画像提供:Y氏は暇人(山田全自動)(@y_ta_net)