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 今回の髪の話は夢と希望を与えてくれるかもしれない良い方のニュースだ。

 イェール大学の研究者たちが、一般的な関節炎治療薬を転用したところ、円形脱毛症で半分以上髪の毛を失った被験者のうちの、3人に1人が約8か月で髪をほぼ完全に回復させたという。

 今回の研究は、この円形脱毛症に対するヤヌスキナーゼ阻害薬「バリシチニブ」の効果を試した第III相治験に基づくものだ。第III相は治験の最終段階なので、これを首尾よくクリアできれば、晴れてアメリカにおける製造販売の承認を申請できるようになるそうだ。

 『The New England Journal of Medicine』(2022年3月26日付)に掲載された研究では、円形脱毛症で苦しむ大勢の人たちを救えるだろうことが示されたという。

【画像】 円形脱毛症の原因

 円形脱毛症になる原因については様々な説があるが、現在有力なのが「自己免疫疾患」を原因とする説だ。免疫細胞であるTリンパ球が、何らかの要因で、毛根を包む毛包を攻撃することで起こるという。

 免疫に異常が生じる要因としては、疲労や感染症などの肉体的・精神的なストレスや体質的な素因がなどがあるという。

 米国では毎年約20万人が新たに発症し、そのほとんどが40歳未満で発症しており、100人に1~2人の割合で起きるという。年齢や性別に関わらず発症し、ひどいときには髪の毛だけでなく、眉毛やまつ毛まで抜けてしまう。

 現時点で米国食品医薬品局が承認した円形脱毛症の治療法はない。

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photo by iStock

関節炎治療薬の投与で3人に1人が髪を取り戻す

 今回、米イェール大学医学部の准教授で、製薬会社イーライリリーの治験責任者でもあるブレットキング博士らの研究チームは、1200人を対象に2つの大規模無作為化試験を行った。

 治験に参加したのは、髪の毛の半分以上が抜け落ちてしまった円形脱毛症の患者で、その多くは髪がすべて抜けているほど重いものだった。

 使用したのは自己免疫疾患による関節炎治療薬として市販されている、バリシチニブ(製品名:オルミエント)という経口のヤヌスキナーゼ 阻害薬だ。

 治験では、36週(約8か月)にわたりバリシチニブ4ミリグラム、2ミリグラム、プラセボのいずれかを毎日投与した。

 その結果、4ミリグラムという最も多い用量を投与されたグループでは3人に1人で発毛が確認され、髪を元に戻すことに成功したという。

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 こうしたバリシチニブの発毛効果は、毛包を攻撃する免疫細胞のコミュニケーションを阻害するために発揮されると考えられている。

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36週間にわたって実験的治療を行った脱毛症患者のビフォア・アフター / image credit:Yale University

自分らしさを取り戻すために

 「円形脱毛症になると、気持ちが乱れ、深い悲しみに包まれるなど、辛い日々が始まります」とキング博士。自分らしさを取り戻せる薬が開発されれば素晴らしいことだと語る。

 本研究はスタンフォード大学や製薬会社イーラリリーのほか、日本の杏林大学医学部ソウル大学医学部エルサレム・ヘブライ大学、カリフォルニア大学アーバイン校、ミネソタ大学などが参加している。

 この研究は、米国皮膚科学会の年次総会でも発表された。

 なおキング氏は、円形脱毛症だけでなく、ヤヌスキナーゼ阻害薬で皮膚炎・白斑・環状肉芽腫・サルコイドーシス・糜爛性扁平苔癬を治療する方法も開発してきた。

 バリシチニブについては、現在臨床試験が実施中であり、いずれその長期的な効果や安全性が確認されるだろうとのことだ。

References:New trials for alopecia areata treatment are a success | YaleNews / written by hiroching / edited by / parumo

 
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また髪の話をしよう。関節炎の治療薬が円形脱毛症患者の3分の1の髪を回復させることに成功