映画はもちろん、音楽、お笑い、アート、ワークショップと多岐にわたるコンテンツが楽しめる総合エンタテインメントの祭典「島ぜんぶでおーきな祭 第14回沖縄国際映画祭」が、4月16日(土)と17日(日)に開催される。

【写真を見る】伝説のロックバンド、紫のドキュメンタリーから馬場ふみか主演作まで、「島ぜんぶでおーきな祭 第14回沖縄国際映画祭」の注目作は?

今年は沖縄本土復帰50周年の節目ということで、沖縄芸能年表をベースに雑誌、レコードといったアイテムが並ぶインスタレーション「OKINAWA MEMORIES AND RECORDS ー沖縄・記憶と記録ー」や、貴重な8ミリ映像を映しながら、当時の沖縄をマニアックに解説する「デジタルで甦る8ミリの沖縄」など、歴史をひも解くような企画も用意。那覇市桜坂劇場を中心に上映が行われる映画部門でも、沖縄をテーマにした作品が数多くラインナップされている。

そのなかでも今回は「特別招待」「特別上映」「沖縄ヒストリカムービー」「地域発信型映画」「クリエイターズ・ファクトリー」の5部門全23プログラムから、注目作をピックアップし紹介していく。

■伝説的バンドが語る激動の時代とは?「特別招待」部門には沖縄を感じられる作品がそろい踏み

これから公開を控える新作を中心とした作品が並ぶ「特別招待」部門。そのなかでも最大の目玉と言えるのが、今年の秋ごろからの全国順次公開に先立ち、本映画祭がワールドプレミアとなる『紫』。1970年に結成された沖縄の伝説的ハードロックバンド、紫に迫るドキュメンタリーで、17日の上映の際には、紫と野田孝則監督の登壇も予定されている。

70年代の音楽シーンをリードし、一度は解散したものの、2007年の再結成を経て、2020年には結成50年を迎えた紫。コロナ禍により記念ライブのキャンセルを余儀なくされるなか、新アルバムを制作し、1年越しのライブに挑む姿にカメラを向ける。さらに結成からこれまでの活動や沖縄激動の時代をメンバーが語るほか、本土デビューをその目で見ていたLOUDNESS影山ヒロノブ、紫に影響を受けた聖飢魔IIX JAPAN石垣島で紫をコピーしていたBEGINら多くのミュージシャンの紫に対する想いも語られていく。

16日に上映される馬場ふみか主演作『てぃだ』も沖縄を題材とした作品。都会で愛する人に裏切られ、生きることに疲れてしまった女性が、石垣島の大自然や離島の人々の温かさに触れ、人として成長していくヒューマンドラマだ。監督を中前勇児が務め、中村静香武田航平今泉佑唯、青柳翔らが共演。裏切り、憎悪、友情、別れといった様々な経験しながらも必死に生きる主人公の姿を丁寧に描いていく。上映では監督と馬場、中村がステージに上がる予定だ。

シネマ組踊 「孝行の巻」』(16日上映)は、約300年間にわたり受け継がれている伝統的歌舞劇「組踊」を新しい切り口で映像化するプロジェクトの一作。初日の上映の際に登壇予定の宮平貴子監督をはじめ、沖縄の映画制作を支えるスタッフが集結。組踊の様式美や立方の繊細な表情、緊迫感あふれる地謡の音楽、流麗なセリフ回しなど、魅力を余すところなく映像で捉えている。

歴史や見どころの紹介もあるため、予備知識なしでも楽しめるのはうれしい限り。なお本作で扱われる「孝行の巻」は、組踊創始者である玉城朝薫(たまぐすくちょうくん)作、組踊五番の一つで、母を助けたいと願う姉弟が、村を襲う大蛇を鎮めるために生贄となることを決意する内容。別れの悲しみを描く“静”と、獰猛な大蛇が火を吹く“動”の対比に魅了されることだろう。

ワンダフル旅行社』(17日上映)は、『シュナイダー』(08)や『あの娘、早くババアになればいいのに』(13)などで知られる頃安祐良監督が手掛けた中国映画。都会での生活をあきらめ帰郷した大学院生の青年が、自分の研究を役立てながら父の事業を手伝い、不和だった父と和解していく様子が綴られる。中国を中心に活躍する日本人女優の中西悠綺も研究に力を貸す日本人女子大生役でメインキャストに名を連ねているので注目したい。

■土地の特色が色濃く現れた作品で地域活性化を図る「地域発信型映画」

“自分たちが住む街の魅力を全国に伝え、地域を活性化させたい“という想いを、映画を通じて実現するプロジェクト「地域発信型映画」部門には、日本全国を舞台にしたバリエーション豊かな4作品がラインナップ。沖縄は西表島を舞台とした『バーミィトーリ』(16日上映)は、世界中でこの島にしかいない絶滅危惧種イリオモテヤマネコにスポットを当てた作品だ。

イリオモテヤマネコの交通事故が減らないことに危機感を覚える島の若者の前に、ある日現れた美しくも不思議な娘。言葉は話さないが島の童歌を口ずさむ彼女は手仕事で美しい紙を作るが、その紙で一獲千金を夢見る者たちがよからぬ計画を企てる。若者と神秘的な娘が織りなす物語を通じ、人間とヤマネコは西表島で共生することができるのかというメッセージが投げかけられていく。

『ある公務員〜益田岩船伝説〜』は、市内に古墳が点在する歴史の深い奈良県橿原市が舞台のサスペンスコメディ社交性のなさから煙たがられている橿原村役場勤務の田所は、数日前に村内で起きたある人物の失踪事件の真相を調べる中学時代の旧友と再会。強引に調査へと巻き込まれ、村の大物が絡む秘密を突き止めることに。17日の上映の際には副島新五監督と福本愛菜が登壇予定だ。

これらの作品以外にも、1972年の本土復帰に湧く沖縄を題材とした大島渚監督の青春映画『夏の妹』(72)や、千葉真一主演作『麻薬売春Gメン 恐怖の肉地獄』(72)といった旧作も上映。当時のロケ地が現在どうなっているかを画像付き解説したりと見どころ満載だ。

今年もバリエーション豊かな作品がそろう「島ぜんぶでおーきな祭 第14回沖縄国際映画祭」。沖縄に足を運ぶのはハードルが高い…という人は、オンラインで楽しめる作品もあるので、ぜひチェックしてみてほしい。

文/サンクレイオ翼

全国順次公開予定に先立ってワールドプレミア上映される、沖縄のレジェンドバンド、紫を題材としたドキュメンタリー『紫』/[c]株式会社エコーズ