4月が定期健康診断の時期という会社も多いと思いますが、お酒が好きな人やメタボ体形が気になる人にとっては、気が進まないものかもしれません。一部の人は、健診前に「にわか禁酒」で数値改善を図ったり、ダイエットに励んで体重を減らしたりするようですが、ネット上では「健診前だけ禁酒しても意味がないのでは?」「いつも通りの状態で受けるべきだ」という声もあります。

 医師の目から見て、「にわか禁酒」「にわかダイエット」は避けた方がよいのでしょうか。内科医の市原由美江さんに聞きました。

普段から節制を

Q.飲酒習慣によって、健康診断で数値が悪くなる項目を教えてください。体のどういう問題点が分かるのでしょうか。

市原さん「飲酒習慣が数値に関係するのは、AST(GOT)、ALT(GPT)、γ(ガンマ)-GTP、尿酸、中性脂肪です。AST(GOT)、ALT(GPT) 、γ-GTPは肝機能の検査で、肝臓がどれだけダメージを受けているかの指標になります。

尿酸値が高いと、痛風発作を引き起こす可能性や、腎機能に悪影響を与える可能性があります。中性脂肪脂肪肝や肥満の原因となります。また、脂肪肝は肝臓がんのリスク因子でもあり、血糖値を上げる原因にもなります」

Q.健診前に一定期間禁酒をすると、これらの数値は改善されるのでしょうか。例えば、1週間程度の場合と1カ月の場合では違いますか。

市原さん「一定期間禁酒をすると、前述のどの項目も改善するのが一般的です。禁酒する期間で数値が改善する程度は、個人差が大きいので説明しにくいですが、期間が長いほど、1週間よりは1カ月の方が改善する程度が大きいのは確かです」

Q.健診前に禁酒をして数値改善を図ることは、やめた方がよいのでしょうか。それとも、健康を保つ方法の一つとしてアリなのでしょうか。

市原さん「『普段のありのままの状態』を知るという意味では、禁酒せずに健康診断を受けるのがいいでしょう。過去の検査で自分の数値がある程度分かっているのであれば、普段から節酒すべきです。

ただし、一定期間禁酒すること自体は、先述した体の機能、特に肝機能に良いので、健康のため一時的に禁酒するのはアリだと思います。もっとも、そもそも長期間禁酒できる程度の依存状態であれば、普段から適度な量の飲酒にできるはずですが…」

Q.個人的経験なのですが、健診でγ-GTPの数値が高かった際、保健師から「1カ月禁酒してから再検査を受けてください」と言われ、1カ月後に再検査を受けて数値が正常範囲に戻った経験があります。

市原さん「一時的とはいえ、体の負担が軽くなったと考えられます。また、禁酒によって数値が改善したのであれば、異常値は飲酒の影響であったことが分かります。もし、禁酒で改善しない場合は別の原因、例えば、胆石などでγ-GTPが上がってるのではないかと考えられるため、別の病気が見つかるきっかけになることがあります」

Q.体重を気にする人についてですが、健診前にダイエットをすることはアリでしょうか、NGでしょうか。

市原さん「食事制限だけでダイエットをしても、見た目の体重は減りますが筋肉量が減っているだけで、結果として代謝が落ちてしまい、リバウンドしやすくなります。運動も並行して行うのであればアリです。

しかし、健診が終わったと同時にダイエットをやめると体重は元に戻り、そのときに蓄積する脂肪で脂肪肝のリスクも増すので、健診のための一時的なダイエットはおすすめできません。ダイエットは、健康的な生活習慣を継続することで安全に行えるものです」

Q.喫煙など、その他の健康に関することを含め、健診前は日常通りの生活をしていた方がよいのでしょうか。それとも、多少なりとも健康的な生活を送るよう気を付けた方がよいのでしょうか。健診に臨む姿勢を教えてください。

市原さん「初めて健診を受ける人であれば、自分の体の状態を知るために普段通りで受診することをおすすめします。毎年健診を受けていて、悪い数値が分かっており、自分の生活の中に改善すべき点があるのであれば、健診前だけではなく普段から改善を行うことが健康のためにはよいです。実行するのは難しいですが、健康は日々の生活の結果。無理なく継続できるような生活習慣を身に付けたいものです」

オトナンサー編集部

「にわか禁酒」「にわかダイエット」、意味はある?