嗅覚についての国際的な研究が行われた。それによると、ライフスタイルや文化、民族などに関わらず、人が好きな匂いと嫌いな臭いは変わらないという。
もちろん個人差はあるだろうが、好きな匂いと嫌いな臭いのランキングを作ったところ、甘いバニラの香りを好む人は多く、足の裏の臭いを嫌う人は多かったという。
『Current Biology』(2022年4月4月付)に掲載された研究では、北米、南米、アジアの3大陸から文化的背景の異なる235人の参加者にいろいろな分子を嗅いでもらい、好きな匂いランキングを作ってもらった。
ニューヨーク、メキシコシティ、ウボンラーチャターニーといった都市暮らしの人たちもいれば、農業や狩猟採集生活を営む人たちもいた。
参加者の生活圏は、熱帯雨林・沿岸部・山岳部・都市部などだった。ゆえにまったく違う匂いに触れている体験の持ち主たちが、実験に参加していたわけである。
用意された匂い分子は、バニラの香り成分「バニリン」、バナナやパイナップルのような香りがする「酪酸エチル」、汗ばんだ足の臭いがする「イソ吉草酸」など10種。これらをフェルトペンのような検査器具につけて、その嗅いでもらった。
「私たちの匂いに対する感覚は、暮らしている地域と無関係なものなのか、それとも文化的に学習されたものなのか? これを確かめようと思いました」と、研究の主執筆者であるカロリンスカ研究所のアルティン・アルシャミアン氏は語る。
匂いの好みは人類共通
その結果判明したのは、匂いの好みはどの人も大体同じであるということだ。
一番人気だったのは甘いバニラの香り漂う「バニリン」で、2番目が桃などフルーツ系の香りである「酪酸エチル」、3番目が花の香り「リナロール」だった。
もっとも嫌われたのはチーズや汗、足の裏などに含まれるがする「イソ吉草酸」だった。
このことから、人間の匂いの好みは、学習を通じて形成されるのではなく、普遍的なものであろうことがうかがえる。
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それを裏付ける別のデータもある。同じ文化圏で暮らす人々の好みの類似と、違う文化圏の人たちの好みの類似を比較してみると、前者は後者よりわずかに高い程度(τ= 0.32対0.28)でしかなかったのだ。
つまり、同じ文化圏で暮らす人同士だから匂いの好みがより似ているとは(統計学的には)言えないということだ。
なぜ匂いの好みは普遍的なのか?
では、生まれ育った文化的背景があまり関係ないというのなら、人の匂いの好みを左右するのは何なのだろうか?
研究グループによれば、まずもっとも大きな影響を与えているのは、「個人的な好み」であるという。
ある人とある人とで好きな匂いが違ったとしたら、その54%は個人的好みの違いによって説明することができる。だが次に大きな要因は「分子構造」で、41%を説明するという。
分子構造が匂いの好みに与える影響をさらに調べるため、研究グループはAIに人間の匂いの好みを学習させ(466種の匂い分子の評価データを利用)に、分子構造から人間がそれを好みそうかどうか予測させることにした。
するとAIが予測した今回の匂い分子10種のランキングは、参加者が評価したものと非常によく似ていたのだ。このことからも、匂い分子の構造が、人の匂いの好みに強く影響していることが裏付けられるという。
「匂いをどう感じるかは、分子構造によって決められた普遍的なものであることがわかりました。だから人から好まれる匂いや嫌われる臭いがあるわけです」と、アルシャミアン氏は話す。
今後の研究では、今回判明したことと、匂いを嗅いだ時に脳で起きる現象とを関連付けて、その理由を解明していきたいとのことだ。
References:People around the world like the same kinds of smells / The perception of odor pleasantness is shared across cultures: Current Biology / written by hiroching / edited by / parumo
要するに細かい好みの匂いは人によって異なるけど、人類の好む、匂いの分子構造ってやつが普遍的に存在するってことかな。
確かにバニラの匂いが嫌いっていう人はそんなに聞いたことないよね。好き嫌い分かれる匂いはたくさんあるけども。
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