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 小さな物体を包み込んだり、切られても自己修復し、どんな狭い場所でも通り抜ける、変幻自在なスライムのような磁性ロボットが開発された。

 スライムは磁場で制御できるるだけでなく、導電体として優れており、電極の接続にも応用できるという。

 スライムといってもドラクエスライムのように可愛らしくはない。薄汚れた茶色をしており、視覚的には汚物とかヘドロ的クリーチャー感満載だ。

 だがしかし、ふざけて作ったわけではない。これはれっきとした科学研究であり、人間の体内に入り、様々な治療を行うことが期待されている。

【画像】 磁気で動くスライムみたいなロボット

 その動きはまるで生命体のようだ。色さえ変えてもらえば少しは嫌悪感も払しょくされるだろうが、とりあえず覚悟して見てみよう。

Scientists develop a moving, shape-shifting magnetic slime

 スライムは磁性粒子を含んでいるので、磁力を照射すれば、移動や回転させたり、O型からC型に変形させたりと、さまざまな操作ができる。

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 『Advanced Functional Materials』(2022年3月25日付)に掲載された研究によれば、正式名称は「磁気スライム・ロボット」だ。

 開発を行った香港中文大学のジャン・リ教授は、「最終的な目標は、ロボットのように普及させることです」と語る。

 ロボットと言っても、現時点では自律的に行動することはできないという。まだ基礎研究の段階で、その特性の理解に努めている最中であるそうだ。

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粘弾性に優れ自己修復できる素材

 磁気スライム・ロボットの大きな特徴の1つは、「粘弾性」があることだ。つまり、あるときは固体に、またあるときは液体になる。

 その原料は、「ポリビニルアルコール」、洗剤によく使われる「ホウ砂」、「ネオジム磁石」を混ぜたもの。

 固体にも液体にもなる奇妙な性質は、「水」と「コーンスターチ(トウモロコシの澱粉)」を混ぜたものに似ているという。

 この2つを混ぜると、「ウーブレック」という非ニュートン流体が出来上がる。

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 力を加えると粘度が変化するという不思議な特性があり、ぎゅっと握れば固体、ゆっくり優しく扱えば液体になる。スライムの粘弾性もこれと同じだ。

 更に自己修復も可能で、この丈夫なスライムは、わずか数ミリ幅の複雑で狭い通路を移動することができ、その速度は1秒間に30ミリにも達するという。

人体の中で治療活動

 このスライムは、人体に入れることを前提に開発されており、治療に役立つ可能性があるという。たとえば、子供が誤って電池を飲み込んでしまったら、スライムで電池を包み、消化器を守るのだ。

 「有害な電解質が漏れるのを防ぐために、スライムで電池を包んで、いわば不活性コーティングとして使えるかもしれません」

 たたし、スライムに含まれる磁性粒子は毒性があるため、砂の主成分であるシリカでコーティングし保護膜が作られた。その安全性は、体内に入っている時間に大きく依存されるため、今後の研究課題となる。

 他にも、より低侵襲な手術や、体内の適切な場所に薬物を届ける為に役に立つそうだ。

 ちなみに今はヘドロを思わせるスライムだが、顔料や染料を使えばもっとカラフルな装いにチェンジすることもできるそうだ。

 今の色のままだと飲み込むことに抵抗がありすぎるので、早急になんとかしてもらいたいね。というか発表する前に色を何とかするべきだったかもね。

References:‘Magnetic turd’: scientists invent moving slime that could be used in human digestive systems | Science | The Guardian / written by hiroching / edited by / parumo

 
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人間の体内に入り、自由自在に動くことができるスライムみたいな磁気ロボット