映画『カモン カモン』の試写会が4月6日に都内で開催され、上映後に映画コメンテーターLiLiCoと映画ライターのよしひろまさみちによるトークイベントが行われた。ふたりが作品と自身とを重ねながら語った、その模様を以下にレポートする。

本作は『ジョーカー』でアカデミー賞主演男優賞を受賞したホアキン・フェニックスと『人生はビギナーズ』『20センチュリー・ウーマン』のマイク・ミルズ監督が初タッグを組んだA24製作。

ラジオジャーナリストのジョニー(フェニックス)が妹に面倒を頼まれた9歳の甥っ子ジェシー(ウディ・ノーマン)との共同生活を通して、初めての子育てに戸惑いながらも、絆を見出していく姿を美しいもモノクロームの映像で綴った感動のヒューマンドラマだ。

甥っ子との“想定外”の日々を描いた本作を観た感想を、LiLiCoは「自身を重ね合わさることがあった。子供って本当に色々考えてますよね」とコメント。よしひろが「お互い子供はいないけど、自分の子供の頃のことを思い出しません?」と質問すると、LiLiCoは「プラスお友達の子供たちのこともね。お腹にいるときから知っている彼らとお話しをすると、彼らすごく大人なんですよね」と同意。

さらに「独身の時代とか『LiLiCoがフラれたよ』って親が子供に言ってるんでしょうね。そうすると5、6歳の子供が『なんでかな、LiLicoはキレイなのに』って言うの。親の言葉を受けて、自分の中で噛み砕いて、子供ながらに色んなことを考えて話しているんだろうね」と自身を振り返る。

実際に姪っ子と甥っ子がいるLiLiCoは「地球の反対側にいるので、遠い存在になったら嫌だなと思っている。私も叔母は、遠い存在だった。だからこそ自分はそうならないように、姪っ子たちに会ったときは頑張ってお話ししようと思っているし、この映画のジョニーと被っていることが多い」とコメント。

一方で「私が9歳のとき弟が生まれて、弟のお世話をするお母さんになった気持ちもあるけど、自分も本当はお母さんに甘えたい。どういう風に大人たちと接したら、私と真剣に接してくれるんだろうかと、まさに映画に出てくるような。甘えたいし我が儘でいたい、だけどどこか大人にならないといけないジェシーの気持ちがすごく分かる」と、ジェシーにも共鳴したことを明かす。

LiLiCoが好きなシーンは、ジョニーが子供へ「自分の親が自分の子供だったら何を教えたい?」と尋ねる場面だという。よしひろは「自分の親がどう思っていたんだろうって、考えさせられたよね。もっと話を聞いていれば、もっと仲良くなれたかもしれない。もしこの映画が20年前に作られていたら、親に見せたかった。たらればを考えるときりはないんですけど、今あるものも大事にしたいって思えるのが、この映画をきっかけに出来るんじゃないかなって思う」と熱く語った。

それを受けてLiLiCoも「私もお祖母ちゃんが亡くなる前にもっと話せばよかったなと未だに思う。何歳になっても、どこか離れてしまっても、例えどんなに話していても、もっと話しておけば良かったって皆が思うこと。だから家族や周りがご健在のうちに、ちゃんと話をしてくださいね」と観客に訴えた。

本作はジョニージェシーが関係を築くにあたり、両者の会話が重要になる。よしひろは「難しい世の中じゃないですか。その中で会話って本当に重要」と強調すると、そこにLiLiCoは「全ての問題はコミュニケーション不足。カップルも夫婦関係も、コミュニケーション不足が原因」と重ねる。

さらに「家でもこれだけ喋っているから、家でも円満なんですよね」とよしひろが指定すると、LiLiCoは思わず照れ笑い。「会話を大事にしてるの。話したくないこともあるけど、嫌われる勇気で会話する。でも、それを乗り越えたときに良いものが生まれる。家では、ご飯を食べるときはテレビもラジオも消す。夫婦で必ず向き合っている」と夫婦円満のコツを明かした。

ジョーカー』の狂気のイメージから一転、甥っ子に振り回される主人公を自然体で演じたフェニックスについては、「実は、『ジョーカー』より『her』やこの映画のホアキンが好きなの。ジョーカー役より、本作のように普通を演じることの方が難しい」と語るLiLiCo。よしひろは、フェニックスの相手を務めたジェシー役のノーマンについて「イギリス人なのに完璧なアメリカ英語を話している。これまで天才子役は何人も出てきましたけど、この子は伸びしろが凄そう。将来の目標はティモシー・シャラメと公言している」と期待を込める。

ジョニージェシーの物語と並行し、劇中では所々、ジョニーによる子供たちへのインタビューシーンが織り込まれる本作。これらのシーンには、ミルズ監督の「すべての大人は子供と彼らの未来に責任がある」という強いメッセージが込められている。このインタビューシーンについて、よしひろは「お先真っ暗な話ではない。これだけ情報過多な社会だと、子供たちの耳に環境破壊だとか色んな暗い話が入っている。それでも子供たちは希望を持っている。子供たちから教わることの方が多い」と説明。これにはLiLiCoも深く頷いていた。

最後にLiLiCoは「なかなかコミュニケーションがとれない世の中で、SNSなど便利なツールもいっぱいあって、繋がっている感じになっている。でも直接話さないと、自分を表現できなくなってしまう。この映画をきっかけに、電話でもいいから、家族や友達とか誰かと本気で向き合って、訊いてみたこともないような話をしてみると何かが広がると思う」と作品に太鼓判。

よしひろは「映画のキャッチコピーにも“君の話を聞かせて”とあるように、まずは対話しましょうって思える作品。一言で伝わりきらない作品だからこそ、自分の言葉で伝えてほしい」と観客にメッセージを贈った。トーク終了後には、映画のポスターを真似たポーズを披露し、大盛り上がりでトークイベントは幕を下ろした。

『カモン カモン』
4月22日(金)全国公開

『カモン カモン』試写会トークイベント