これまで2度ドラマ化された重松清の同名小説を、初めて映画化した『とんび』が4月8日(金)より公開となる。瀬々敬久監督がメガホンをとった本作は、昭和、平成、令和と時代を超えて紡がれる、破天荒な父親と、男手ひとつで育て上げた息子との絆を描いたヒューマンドラマだ。MOVIE WALKER PRESSではそんな本作の試写会を開催した。

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「原作、テレビドラマで感動しているので、期待し、応えてくれました」(60代・女性)

「テレビで2回、今回映画で3回目ですが、それぞれよい点がありました」(50代・女性)

と原作&ドラマファンからもお墨付きで、来場者の満足度も5点満点中、平均4.4点と高い評価を得ている本作の見どころを、ひと足早く試写会で鑑賞した映画ファンから寄せられたコメントと共に紹介したい。

■愛情深い父と子の関係に感涙する人続出!

昭和37年瀬戸内海の街、備後。不器用な男、ヤス(阿部寛)は、妻の美佐子(麻生久美子)との間に息子アキラ(北村匠海)をもうけ、幸せな日々を過ごしていた。幼いころに両親と離別し、なによりも家族に憧れたヤスがつかんだ幸せも束の間、美佐子が事故で亡くなり、脆くも崩れ去ってしまう。悲しみに暮れるヤスだったが、人情味にあふれる町の人たちの叱咤激励を受け、アキラを育てあげていく。

「とても気持ちのいい余韻が残る映画。一人の人間の一生懸命生きた証を見ました」(女性)

「終始涙が止まりませんでした。いろいろな親子の形があって、思うところもたくさんありましたが、深刻になりすぎず笑えるシーンもあって最高でした」(20代・女性)

と引き込まれたという声が多く寄せられた本作は、時には衝突しながらも絆を築いていく不器用な父と子、彼らを支える周囲の人々によって温かな物語が紡がれていく“人情”ドラマ。“人”にスポットを当てた作品だけあって、登場するキャラクターは誰も彼もチャーミングだ。

なかでも、たくましくも時に情けない頑固で人間臭い「ザ・昭和の男!」(20代・女性)な主人公ヤス、そしてそんな父に振り回さながらもまっすぐな大人になっていくアキラ。物語の中心を担う2人に心をつかまれた観客が続出。共感や感動の声が多く挙がった。

「子を想う父、父を想う子の姿が印象的だった」(20代・女性)

「アキラのことが好きだが素直になれないヤスの不器用さが好きです」(20代・男性)

「ヤスはとても不器用で言葉不足なところもあるけれど、周りから愛されているし、アキラへの愛をとても感じました」(20代・女性)

「唯一、子どもから大人へ成長する姿が描かれていたアキラの成長過程を細かく演じていたのがすばらしかった」(20代・女性)

「どうしても親の立場と子どもの立場と分けて観てしまい、どちらの気持ちにもなってしまいます」(50代・女性)

2人の関係性を表し、「心に残った」と挙げている人が多かったのが、町の祭りでヤスが担ぐ神輿が倒れそうになった時に、アキラがとっさに支えるシーン。互いに素直になれなかった親子が自然と通じ合った瞬間に心動かされたようで、下記のような声がズラリ。

「神輿を父子で持ち上げたシーンに一番グッときました」(50代・男性)

「ヤスが傾いた時、アキラが支えに行って、親子神輿をしていたところに感動しました」(40代・女性)

「神輿を一緒に担ぐシーン。アキラが、母はヤスを守って死んだと聞かされていたが、本当は自分自身を守るために死んだことを知って、今度は自分が助けなきゃと動いたところにグッときた」(20代・女性)

また、進学で東京に行くアキラからの置き手紙をヤスが読み、アキラを載せた車を必死に走って追いかけるシーンも「手紙を読んでアキラの気持ちに気づくところ。2人の親子の絆に感動した」(20代・女性)「東京へアキラが飛び立つシーン。寂しさを押し殺したやり取りが素敵だった」(30代・男性)など観る者の涙腺を刺激したようだ。

不器用な父子を見守る周囲の優しさが沁みる

さらに「ヤスと彼を取り巻く周りの人が魅力的だった」(30代・男性)という言葉のとおり、2人を見守る町の人々も印象的。ヤスの幼なじみで時にキツい言葉をぶつけながらも、誰よりも父子のことを気に掛けてくれる寺の跡取り坊主、照雲(安田顕)やその父の海雲(麿赤兒)。薬師丸ひろ子が演じた小料理屋の女将たえ子は、ヤスにとって姉のような存在で、自身も複雑な事情を抱えているにもかかわらず父子を優しく包み込んでいく。

「照雲がぶっきらぼうながらも、友人もその子も家族も大切にしていて好ましかったです」(20代・男性)

「ヤスがあまりに不器用すぎて、照雲さん、たえ子さんたちがそばにいて本当によかったです。関係性が大好きです」(50代・女性)

「安田さんの演技もすばらしかった。薬師丸さんの温かい感じもほっこりした」(40代・女性)

そんな父子と周囲の人々との家族のような関係を象徴しているのが、雪の降りしきる冬の海でのひと幕。美佐子を失った悲しみからくるヤスの弱音を聞いた海雲は、ヤスとアキラ、照雲を連れて夜の海へ。極寒のなか、ヤスの胸に抱かれたアキラの毛布を取ると「アキラ、お父さんにしっかり抱いてもらえ。顔と腹は温いだろう。それでも背中は寒い。お母ちゃんがおったら背中を抱いてくれた」と説き、静かにその背中に手を当てる。たくさんの人に支えられていることを伝えるこの重要な場面に対して、

「海で背中に手を当てるシーン。周りの心の温かさが伝わった」(20代・男性)

「海雲さんがアキラの背中を手で重ねるところが沁みる」(10代・女性)

と、「印象に残った」というコメントが多く寄せられた。

またこのシーンは、アキラが大人になってから出会う由美(杏)の連れ子である健介の背中にそっと手を当てるシーンにつながっており、「アキラが健介の背中にそっと手を当てる場面。アキラがまっすぐ優しい人間に育ったことがわかる演出だったと思う」(30代・男性)と物語を通じて描かれるメッセージは、観客の心に刺さったようだ。

■親に、子に、伝えたい!様々な家族の形に共感の嵐

「様々な家族の形があって、各々が葛藤のなかで生きているというポイントにフォーカスが当てられていたと思いました。とても素敵な作品でした」(20代・男性)

「人は一人では育たないこと。血のつながりよりも大事な絆もあるということ」(30代・男性)

「様々な親子の絆を見ることができ、なににも代えられない絆っていいなと思いました」(10代・女性)

これらの感想にあるように、本作はヤスとアキラ親子だけでなく、その周囲の人々、さらにアキラとシングルマザーの由美との関係など、多様な形を通して家族の在り方を見つめていく。“家族”という身近な題材を扱う作品のため、キャラクターを自分自身に置き換えて鑑賞した人も多かったようだ。

「自分自身が母子家庭なので、自分と重ねるところがたくさんあって、母にいままで愛情深く育ててくれてありがとうと言いたくなった」(20代・女性)

「いつも粗暴だと思っていた父も、自分が気づかないほどの愛があったのかもしれないと思った」(20代・女性)

「育ててくれた親に改めて感謝の言葉を伝えたいです」(20代・女性)

「映画を観て、伝えたいことは?」という質問に対して、若い世代から親への感謝が数多く並んでいるのがなんとも印象的。その一方、親から子どもへのメッセージも。

「最初から最後まで泣けた。自分は子どもがいるのでヤスと同じ親目線で観ていた。子を想う気持ち、子が親を想う気持ちが温かくて、いい内容だと思った」(30代・女性)

「子どもが大きくなったら一緒に観たい作品」(40代・男性)

「私は息子と2人暮らしで、まだまだ人生いろいろあると思いますが、ヤスとアキラのように親子の関係が離れてもつながっていられたらいいなと思いました」(40代・女性)

「自分の子に、血がつながってなくても自分の子だと伝えたい」(50代・男性)

親と子ども、どちらの視点も描かれた誰もが共感できるような本作。家族に向けられた熱い言葉の数々は、この作品が真に迫るものだということを証明しているだろう。

「とにかく感動したと伝えたいです」(10代・女性)、「泣くからなにも考えずに観て!」(20代・女性)、「人情味あふれるすばらしい映画!」(60代・女性)と、シンプルだがストレートな言葉で推す人も多く、劇中の登場人物同様に愛される作品となっている『とんび』。

「人生で一番泣きました」(20代・女性)、「ずっと泣ける映画という体験が初めてだったので、観て本当によかったです」(20代・女性)といった感想のとおり、号泣シーンの連続なので、劇場に足を運ぶ際はハンカチをお忘れなく。

文/サンクレイオ翼

様々な家族の形に号泣!人間ドラマ『とんび』の魅力とは?/[c]2022「とんび」製作委員会