10日に行われるプレミアリーグ第32節では、首位マンチェスター・Cが本拠地『エティハド・スタジアム』に勝ち点1差で2位につけるリヴァプールを迎える。
 
 2016年夏にマンチェスター・C指揮官となったジョゼップ・グアルディオラ監督と、2015年10月からリヴァプールを率いるユルゲン・クロップ監督。バイエルンドルトムント指揮官としてドイツでも熱戦を繰り広げた2人の名将は、戦いの舞台をイングランドに移した後も、それぞれのクラブを確実にレベルアップさせて観客を魅了し続けている。
 
 両監督が“プレミアリーグ”で対戦するのは今回が12回目。過去の対戦はグアルディオラ監督が4勝、クロップ監督が3勝、残り4試合は引き分けと、ほぼ互角だ。世界中が注目するシーズン終盤での首位攻防戦で勝ち点3を手にするのは、どちらの監督になるのだろうか。
 
 そこで今回は、両監督のプレミアリーグでの対戦をシーズン別に振り返る。

[写真]=Getty Images
 

◆【2016-17シーズン】 最終順位:マンチェスター・C=3位(勝ち点78)、リヴァプール=4位(勝ち点76)

 
 グアルディオラ体制1年目だったマンチェスター・Cは、プレミアリーグを3位で終了。監督キャリアで初めて無冠のままシーズンを終えたグアルディオラ監督は、イングランドの戦いの厳しさを痛感する1年となった。一方、2015年10月からクロップ体制を敷いていたリヴァプールは、サディオ・マネやジョエル・マティップを獲得し、黄金期到来に向けて着実に戦力をアップ。プレミアリーグでは前年度の8位から4位に順位を上げた。
 

◆▼第19節 2016年12月31日リヴァプール 1-0 マンチェスター・C

【得点者】
8分 ジョルジニオ・ワイナルドゥム(リヴァプール
 
 プレミアリーグの舞台で両名将が初めて顔を合わせたのは、2016年12月31日のアンフィールドだった。2位リヴァプールを勝ち点1差で追う3位マンチェスター・C。相手よりも上位で年内を締め括りたい両チームの戦いは、互いの良さを消し合う展開に。8分にジョルジニオ・ワイナルドゥムのゴールで先制したリヴァプールが、4試合の出場停止明けだったセルヒオ・アグエロを最後まで封じ込めて完封勝利を収めた。
 

◆▼第29節 2017年3月19日マンチェスター・C 1-1 リヴァプール


 
【得点者】
51分 ジェイムズ・ミルナー(リヴァプール) PK
69分 セルヒオ・アグエロマンチェスター・C
 
 ドイツ時代を含めて、通算10回目の「グアルディオラクロップ」。1試合消化試合が少ない3位マンチェスター・Cが、4位リヴァプールを勝ち点1上回っている状況だった。4日前にチャンピオンズリーグ(CL)ラウンド16でモナコにアウェイゴール差で敗退したマンチェスター・Cにとって、負けられない一戦だった。PKで先制されたマンチェスター・Cだったが、アグエロのゴールで同点に追いつき勝ち点1を獲得。CL敗退で落ち込んだチームがスピリットを見せてくれたと、グアルディオラ監督は喜びを露わにした。
 

◆【2017-18シーズン】 最終順位:マンチェスター・C=1位(100)、リヴァプール=4位(75)

 
 エデルソンを正守護神として迎えたマンチェスター・Cが、開幕から圧倒的な強さを見せつけた。5試合を残してリーグ制覇を決めたマンチェスター・Cは、最終的にプレミア史上初となる「勝ち点100」を達成。2位チームとの勝ち点差が「19」も、史上最多となった。そんなマンチェスター・Cリーグでシーズン初黒星を喫した相手がリヴァプールだった。このシーズンにモハメド・サラーフィルジル・ファン・ダイクを加えたリヴァプールは、CL準々決勝でもマンチェスター・Cに2戦2勝。リーグでは前年度と同じ4位に終わったが、CLでは決勝進出を果たしている。
 

◆▼第4節 2017年9月9日マンチェスター・C 5-0 リヴァプール


 
【得点者】
24分 セルヒオ・アグエロマンチェスター・C
45+6分 ガブリエウ・ジェズス(マンチェスター・C
53分 ガブリエウ・ジェズス(マンチェスター・C
77分 レロイ・サネ(マンチェスター・C
90+1分 レロイ・サネ(マンチェスター・C
 
 2チーム揃って2勝1分けで迎えた第4節は、1つの判定が試合を分けた。マンチェスター・Cの1点リードで迎えた37分に、リヴァプールのFWマネが相手GKエデルソンへの危険なファールで一発退場。さらに1点を失ったリヴァプールは後半から5バックに布陣を変更したが、マンチェスター・Cの攻撃陣の勢いを止めることはできず。プレミアでのマンチェスター・C戦には4戦無敗だったクロップ監督も、成す術がなかった。なお、クロップ監督が5点差の大敗を喫したのは、マインツ時代の2006年10月以来、11年ぶりだった。
 

◆▼第23節 2018年1月14日リヴァプール4-3マンチェスター・C


 
【得点者】
9分 アレックス・オクスレイド=チェンバレンリヴァプール
40分 レロイ・サネ(マンチェスター・C
59分 ロベルト・フィルミーノリヴァプール
61分 サディオ・マネリヴァプール
68分 モハメド・サラーリヴァプール
84分 ベルナルド・シルヴァ(マンチェスター・C
90+1分 イルカイ・ギュンドアン(マンチェスター・C
 
「20年後も語られるような歴史的試合になっただろう」と激戦を終えたクロップ監督は胸を張り、「勝ったリヴァプールを祝福したい」とグアルディオラ監督は勝者を称えた。攻撃の核の一人だったフィリペ・コウチーニョが1週間前にバルセロナへ移籍したばかりのリヴァプール。首位を独走中のマンチェスター・Cを相手に開始9分に先制すると、後半はロベルト・フィルミーノ、マネ、サラーが揃ってゴールを記録。終盤に追い上げられたが、逃げ切りに成功。開幕から続いたマンチェスター・Cリーグ無敗記録を22試合でストップさせた。
 

◆【2018-19シーズン】 最終順位:マンチェスター・C=1位(98)、リヴァプール=2位(97)

 
 プレミアリーグに2強時代が到来した。最初から最後までハイレベルな優勝争いを繰り広げた両チーム。プレミアリーグを1ポイント差で制したマンチェスター・Cは、FAカップとリーグカップも獲得して史上初の国内三冠を達成。リヴァプールは弱点だったGKのポジションにブラジル代表のアリソンを加えて守備が安定し、わずか1敗しかしなかったにもかかわらず、リーグ制覇を逃すことになった。しかし前年度に決勝で敗れたCLではリベンジに成功。イングランド勢同士となったファイナルトッテナムに勝利し、ビッグイヤーを掲げている。
 

◆▼第8節 2018年10月7日リヴァプール0-0 マンチェスター・C


 
 開幕7戦を揃って6勝1分けで終えていた両チーム。序盤の天王山は両者一歩も譲らずにゴールレスドローに終わった。この一戦に向けて監督同士のライバル関係に注目が集る中、クロップ監督はグアルディオラ監督とは“ボリス・ベッカーミヒャエル・シュティヒ”のような関係を築きたいと発言。いずれもドイツが誇るテニス界のレジェンドの名前だ。どちらがグランドスラムを6回制したベッカーなのか言及しなかったクロップ監督だが、未来のスポーツ界の指導者たちはきっと、“クロップグアルディオラ”のような関係を築きたいと願うはずだ。
 

◆▼第21節 2019年1月3日マンチェスター・C 2-1 リヴァプール


 
【得点者】
40分 セルヒオ・アグエロマンチェスター・C
64分 ロベルト・フィルミーノリヴァプール
72分 レロイ・サネ(マンチェスター・C
 
 開幕から無敗を続けていた首位リヴァプールは、マンチェスター・Cに勝ち点7差をつけていた。グアルディオラ監督は「現時点においてヨーロッパでナンバーワンのチーム」とリヴァプールを警戒しながらも、「可能な限り最後まで優勝争いを演じて見せる」と宣言していた。エティハドでのリヴァプール戦は、全リーグ戦でゴールを決めていたアグエロが先制ゴール。一度は追いつかれたホームチームだったが、サネの決勝弾でトップとの勝ち点差を縮めることに成功。最終的にこの年のリヴァプールは、2位以下に「7ポイント差」以上を付けて新年を迎えながら、トップリーグで優勝を逃した史上初めてのチームになってしまった。
 

◆【2019-20シーズン】 最終順位:マンチェスター・C=2位(81)、リヴァプール=1位(99)

 
 新型コロナウイルス蔓延によるシーズン中断中も、心を切らさなかったリヴァプールが、30年ぶりにトップリーグを制覇した。前年度に勝ち点1差で優勝を逃した経験を踏まえ、引き分けではなく“勝利”にこだわったリヴァプール。第28節ワトフォード戦でシーズン初黒星を喫するまで、26勝1分けと勝利を重ねまくった。第29節終了後にプレミアリーグが中断期間に入った段階で、2位マンチェスター・Cとの勝ち点差は「25」。その後、約3カ月の時を経てリーグは再開。6月25日マンチェスター・Cチェルシーに敗れた瞬間、リヴァプールプレミアリーグ初制覇が決まった。なお、このシーズンの開幕直前に、両チームはコミュニティー・シールドでも対戦。PK戦の末にマンチェスター・Cがタイトルを獲得していた。
 

◆▼第12節 2019年11月10日リヴァプール 3-1 マンチェスター・C


 
【得点者】
6分 ファビーニョ(リヴァプール
13分 モハメド・サラーリヴァプール
51分 サディオ・マネリヴァプール
78分 ベルナルド・シルヴァ(マンチェスター・C
 
 首位リヴァプールを勝ち点6差で追う2位マンチェスター・C。直接対決を制して差を縮めたいところだったが、先制したのはリヴァプール。開始6分にファビーニョの目が覚めるようなミドルで口火を切ると、13分にはサラーが追加点。後半に入っても勢いは止まらず、マネのゴールでリードを3点に広げた。78分にベルナルド・シルヴァに1点を返されるが、マンチェスター・Cの反撃もそこまで。ディフェンディング王者はレスターチェルシーにも抜かれて4位に転落した。
 

◆▼第32節 2020年7月2日マンチェスター・C 4-0 リヴァプール


 
【得点者】
25分 ケヴィン・デ・ブライネマンチェスター・C) PK
35分 ラヒーム・スターリングマンチェスター・C
45分 フィル・フォーデンマンチェスター・C
66分 オウンゴールマンチェスター・C
 
1週間前にマンチェスター・Cチェルシーを下していれば、この試合が持つ意味は変わっていた。しかし、マンチェスター・Cの“アシスト”により、リヴァプールリーグ王者としてこの試合を迎えることに。目標を達成済みのアウェイチームに対し、容赦なくゴールを重ねたマンチェスター・C。25分のケヴィン・デ・ブライネのPKを皮切りに4得点。試合後には「イングランドと欧州の王者を倒すことができて嬉しいよ」と話したグアルディオラ監督だが「来シーズンは全く別のものになる」と早くも新シーズンを見据えていた。
 

◆【2020-21シーズン】 最終順位:マンチェスター・C=1位(86)、リヴァプール=3位(69)

 
 リヴァプールの選手たちは改めてコップの威力を痛感しただろう。3年連続でクリスマスを首位で迎えながら、年明けに大スランプに陥ったリヴァプール。クラブ史上初のホーム6連敗を喫した理由を問われたクロップ監督は「観客がいないこと」と明言。負傷者が続出したことも不調の一因だったことは間違いないが、クロップ監督は「サポーターなしの我々は全く同じではない」とコップの不在を何よりも嘆いていた。残り6試合の段階で7位に低迷していたことを考えれば、最終順位は御の字だろう。一方のマンチェスター・Cは2位マンチェスター・Uに12ポイント差でリーグを制覇。リーグカップ4連覇も成し遂げ、CLでも決勝進出を果たした1年だった。
 

◆▼第8節 2020年11月8日マンチェスター・C 1-1 リヴァプール


 
【得点者】
13分 モハメド・サラーリヴァプール)  PK
31分 ガブリエウ・ジェズス(マンチェスター・C
 
 9月中旬に開幕した異例のシーズンに多くのチームが苦戦した。リヴァプールはシーズン序盤のアストン・ヴィラ戦で2-7の大敗を喫しながらも首位として第8節を迎えることに。前年度のCLスケジュールの影響で消化試合が1つ少なかったマンチェスター・Cは10位に沈んでいた。リヴァプールが13分にサラーのPKで先制するも、31分にガブリエウ・ジェズスのゴールで試合を振り出したマンチェスター・C。40分にはPKを獲得したが、キッカーのデ・ブライネが枠を外し、絶好の勝ち越しの機会を逃した。
 

◆▼第23節 2021年2月7日リヴァプール 1-4 マンチェスター・C

【得点者】
49分 イルカイ・ギュンドアン(マンチェスター・C
63分 モハメド・サラーリヴァプール) PK
73分 イルカイ・ギュンドアン(マンチェスター・C
76分 ラヒーム・スターリングマンチェスター・C
83分 フィル・フォーデンマンチェスター・C
 
 勝ち点差7で直接対決を迎えた首位マンチェスター・Cと4位リヴァプールリヴァプールは連覇を狙うのであれば、消化試合が1つ少ないマンチェスター・Cを相手に、ホームで勝ち点3が必須の試合だった。マンチェスター・CのギュンドアンがPKを失敗し、前半をスコアレスで凌いだリヴァプールだったが、後半だけで4失点。大敗を喫した直後のインタビューで、レポーターに怒りをぶちまけたシーンも話題となったクロップ監督。この結果を踏まえて優勝ではなく、トップ4争いに集中するのかという問いに対し、「シティは抜きんでている。当然だ」とタイトルレースからの脱落を認めた。
 

◆【2021-22シーズン】 現在の順位:マンチェスター・C=1位(73)、リヴァプール=2位(72)

 
 グアルディオラ監督とクロップ監督のそれぞれの“イズム”がすっかりと浸透したマンチェスター・Cリヴァプールが、今季も上位2つの椅子を独占している。リヴァプールはすでにリーグ杯を獲得済み。揃ってCLベスト8に入り、ファーストレグを制している2チームは、来週にはFA杯の準決勝での直接対決も控えている。一つでも多くのタイトルを取りたいという思いはどちらも共通だが、最優先はプレミアリーグという意識も互いにぶれていない。勝ち点差「1」で迎える文字通りの首位攻防戦を制するのは果たして・・・

◆▼第7節 2021年10月3日リヴァプール 2-2 マンチェスター・C


 
【得点者】
59分 サディオ・マネリヴァプール
69分 フィル・フォーデンマンチェスター・C
76分 モハメド・サラーリヴァプール
81分 ケヴィン・デ・ブライネマンチェスター・C
 
 今季も首位の座を争う両チーム。シーズン最初の対戦は、見応え十分なシーソーゲームとなった。前半はシュートわずか1本の劣勢ながら、スコアレスで折り返しリヴァプール。1-1のスコアで迎えた76分に、サラーがアンフィールドを魅了した。3人のDFに囲まれながらもボックス内に侵入したエジプト代表FWは、さらに寄せてきたDFを深い切り返しで交わし、右足シュートをゴールに突き刺した。マンチェスター・Cの大ファンとして知られるノエルギャラガーでさえも「あのゴールは凄かった。彼の恐ろしいところはどこか分かる? 最高に好ましいってことさ」とサラーの虜であることを認めるほど。その後、デ・ブライネにゴールを割られて勝利を逃したクロップ監督だったが、「後半だけを見れば勝ちたい試合だったが前半を考えれば勝ち点1が妥当」と結果に納得していた。

(記事/Footmedia)

12度目の対戦はどちらに軍配が上がるのだろうか [写真]=Getty Images