突然、学校に行けなくなった息子さんに関する体験を描いた漫画「息子が学校に行けなくなった理由」。花森はなさん(@hanamori_h)がSNSにアップしているこの作品が、同じような経験を持つ親などから共感の声を集めている。

【漫画】休み時間は教室に。少しずつ学校での時間が増えていく

小学4年生の6月には一度、完全に学校に行けなくなった息子さんだが、給食登校などを経て、支援学級に登校する日々が始まった。

支援学級に通うようになった息子さんについて、「大きな変化はなかったのですが、『学校へ行ける』『学校に行けた』という達成感はあるようで、家でずっと寝ているばかりだったころよりは顔色がよくなったように思いました。家にいたころは、生ける屍のような感じでした」と花森さんは話す。

花森さん自身も、支援学級には好印象を抱いたという。「付き添いで普通学級の教室に行った時に、私でもキツイなと感じたんですよね。40人でギュウギュウの教室、休み時間に起きるけんか、先生はいつ怒るかわからない逃げ場のない空間…。それに対して支援学級はいろんな意味で呼吸がしやすいというか。少人数なので授業もとても丁寧に教えていただけて、私も勉強になりました」

学校で過ごす時間は2時間になり、付き添いの花森さんも息子さんのためにさまざまな物を持ち歩くように。「勉強は1時間は集中力がもたないので、折り紙は基本的に持ち歩くようにしていました。また、支援教室には結構おもちゃがあるんですよね。ぬいぐるみやすごくリアルな野菜の形をしたおままごと道具や、日本地図のパズルなど遊びながら学べるもの、魚の図鑑、卓球セットなんかもありました。休み時間にはおもちゃに触っていいので少し遊んでみたり、紙飛行機を一緒に折って、教室の端から端まで飛ばしてどっちが長く飛んだか競争したり。よく飛んだ紙飛行機は普通学級の教室に行った時にも飛ばしていました」

小学校生活のなかでも大きな存在になったという支援学級の担任・Y田先生とのやりとりも描かれている。「最初は、先生も息子との距離を測りかねているようでした。ただ、雰囲気がやわらかい方で、勉強もわかりやすく教えてくださるので、通ううちに徐々に壁が崩れていったような形です」

20話では、息子さんが夢中になっていた鍵盤ハーモニカがY田先生との距離を縮めることになったエピソードも。先生が楽譜を書き、一緒に練習した曲を普通学級の教室で披露するとほかの子供たちも大盛り上がり。その後、学校に行ける日も増えていったという。「『この曲弾きたい』と言われて楽譜に音符をふってあげたものを用意すると、少し練習しただけですぐに弾けてしまって、息子はそれがおもしろかったみたいです。このころ、週の半分は登校していましたが、特に教室での鍵盤ハーモニカの一件以来は、『行く!』という感じになりました」

その後は、休み時間を普通学級の教室で過ごすことが増えたそう。「友達と遊びたいというのはずっと言っていたので、本当に目がキラキラとしていました。支援学級と息子の(普通学級の)クラスは校舎の端と端くらいに離れていたのですが、少しでもクラスに行きたいようでチャイムが鳴るのを心待ちにしていました」

友達とも楽しく過ごせるように。「先生方に話しかけられるとパニックになる場合もあるのでなるべくこちらへ話しかけてこないようにしてくれていましたが、2年生の時の担任の先生はフラットな感じで、その先生とは話しやすかったようです。お友達は遠巻きに見ている子と積極的に話しかけてくれる子の両極でした。自分からは話しかけに行きづらかったみたいで、話しかけてきてくれる子と楽しそうに過ごしていました」

最後に、付き添いをする時に花森さんが気を付けていたことを話してくれた。「付き添いをする際、基本自分は影になることを意識しているのですが、息子が上手く話を返せない場合はさりげなく話をつないだり、髪を切ったなどお友達の変化に気付いたら声をかけてみたりしていました。また、挨拶は、先生や同学年の子には必ず大きな声でするようにしました。息子と周囲の空気がつながった瞬間に影になるという感じです。あとは、うつむかないようにしていました。なるべく背筋を伸ばして前を向いて、自分も学校を楽しむようにしました。そうじゃないと、息子が私を無理やり付き合わせていると気にしてしまうからです」

21話の最後には、息子さんが久しぶりに普通学級の教室で授業に参加する様子が描かれている。支援学級での時間などを通じて、少しずつ変わっていく息子さんを描く「息子が学校に行けなくなった理由」。今後の展開を見守りたい。

取材・文=上田芽依(エフィール)

支援学級での時間を経て、普通学級の教室で過ごす時間も増えていく