<研究のポイント>
◆日本人のみを対象とし、背景情報を取得した十分な数の対象者を確保している
◆300名弱の健常者に加え、10を超える疾患罹患者も対象者としている
◆全ての検体の腸内細菌叢解析を全く同じ手法で行っている

京都府立医科大学、摂南大学、株式会社プリメディカは、三者共同研究「腸内細菌叢研究データベースの統合的解析による腸内環境評価システムの開発」(以下「本研究」)を実施し、本件に関する論文が学術雑誌『Microorganisms』に2022年3月20日付で掲載されました。(https://www.mdpi.com/2076-2607/10/3/664/html

健康な人から様々な疾患を持つ人まで、多数の日本人を対象とした腸内細菌叢プロファイルに関する報告は、我々の知る限り、本研究が初めてとなる成果です。

本研究では、全く同じ手法で腸内細菌叢を解析した16の臨床研究で得られた、合計1,803名分の日本人の健常者と疾病有病者の腸内細菌叢データの統合解析を行うことで、日本人腸内細菌叢データベースを構築しました。

【論文概要】
1.研究の背景
近年、分子生物学的手法を駆使した腸内細菌叢解析の発達により、腸内細菌叢の全容が明らかにされつつあり、様々な疾病との関わりも示唆されております。しかし、従来の腸内細菌叢の研究においては、人種や食生活など、背景にある環境因子の影響を大きく受けることや、測定においても前処理技術などの違いにより結果の解釈が分かれることが課題となっておりました。

2.研究の成果
本研究ではAI(人工知能)を用いて、日本人に最適なエンテロタイプ※1の解析に着手し、38細菌属の存在比率に基づき5つのタイプ(Type A~E)に定義図1し、各タイプと疾患との関連性図2を明らかにしました。
最も健常者が多かったType Eのプロファイルをもとに、各疾患のオッズ比※2を算出し、健常者が少ないType A、 Type Dでは、様々な疾患との関連が示されました。Type Aでは、循環器系疾患、神経系疾患、生活習慣病で特に高いオッズ比を示し、Type Dでは、炎症性腸疾患(IBD)、機能性胃腸障害で高いオッズ比を示しています。
※1 腸内細菌叢の特徴を表す指標
※2 ある事象の起こりやすさを2つの群で比較して示す際の指標

3.今後の展望
今後は本研究成果を社会実装した腸内細菌叢検査サービス「Flora Scan」を通して、引き続き研究を行いながら更なるデータを収集し、腸内細菌叢改善効果のある食品機能性等の研究における標準的な評価指標として、幅広く用いられることを目指します。


図1:(38細菌属の存在比率に基づいた5つのタイプ分け)
最も健常者が多かったType Eは食物繊維の摂取と関連性が深いと考えられているPrevotella属の存在比率の高さが特徴的です。

図2:(エンテロタイプと各疾患との関連性)
Type DはBifidobacterium属の平均占有率が約20%と顕著に高くなることが特徴的なタイプで、IBDのオッズ比が27倍と非常に高値です。Type Aは複数の疾患で有意に高いオッズ比を示しています。


■本件に関するお問い合わせ先

配信元企業:株式会社プリメディ

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