古屋敬多(Lead)と桜井玲香がW主演で挑むミュージカルFLOWER DRUM SONG』が4月23日(土)の東京公演(日本青年館ホール)からスタートする。本作は、『サウンド・オブ・ミュージック』や『王様と私』など、多くのブロードウェイの名作を生み出した名コンビ“ロジャース&ハマースタイン”が手がけたミュージカルのリバイバル版で、今回が日本初演。サンフランシスコチャイナタウンを舞台にショービジネス界で生きる人々の“夢”や“愛”が描かれる物語のなかで、中国からの移民ウー・メイ・リーを演じる桜井玲香に意気込みを聞いた。

【写真】元乃木坂46の桜井玲香が、自分と真逆の役柄をミュージカル『FLOWER DRUMSONG』で演じる 

■難しい作品に挑戦することがステップアップの大きなきっかけになるかもしれないと思った

――本作は、ミュージカル黄金期を作った名コンビによるミュージカルのリバイバル版。出演が決まったときの気持ちを聞かせてください。

桜井玲香】お話をいただいてから、映画版を観たり、資料音源を聞いたりしました。ただ、曲が難しそうで……。私が演じるメイ・リーは曲数も多く、ソプラノの曲が多い印象があり「私、大丈夫かな」という気持ちが大きかったです。

でも、こういった難しい作品に挑戦することも自分がステップアップできる大きなきっかけになるかもしれないと思い、出演を決めました。今は、とにかくやるしかない!という気持ちです。

――今日は稽古の様子も拝見させていただきましたが、桜井さんが歌い出した瞬間は「おお!」という感じで、インパクトがありました。

桜井玲香】ありがとうございます。でも、無音のなか、自分で太鼓をたたいて歌い始めるというのは……。ものすごい緊張とプレッシャーです。本番はどうなるのかなと思うくらい、稽古場でも緊張していて、誰かの助けがほしい!と毎回思っています。思い返すと初めてのグランドミュージカルだった『レベッカ』も私のソロ、アカペラから始まる演出でした。その経験が活きていると思う瞬間もあります。あのころに比べたら、落ち着いて歌えている気もします。

■守りたいなと思われるような純粋なキャラクター像を作っていきたい

――演じるメイ・リーは、どんなキャラクターですか。

桜井玲香】中国からサンフランシスコに移住してくる女の子で、自分で新しい場所を探しながら人生を切り開いていくというキャラクターです。なので、意志は強い子だと思います。でも、時代背景が少し昔ということもあり、私のなかでは男性の1、2歩後ろを歩く奥ゆかしいイメージです。デート、恋愛経験がない箱入り娘なので、自分の主張が強い女の子というよりは、守りたいと思われる純粋なキャラクター像を作っていきたいなと思います。

――ご自身と似ている部分はありますか。

桜井玲香】その奥ゆかしい部分は全く似ていないです。立ち稽古でも、もっと仕草に気をつけなければ、と反省ばかりです(笑)。メイ・リーは京劇をやっていて、動きにしなやかさもあるので、そういう動きの部分も気をつけていきたいです。普段の私とは真逆なので、メイ・リーなりきりまた新しい桜井玲香をお見せできるように頑張ります。

――稽古場での様子はいかがですか。

桜井玲香】こんなにマイペースな人が多い現場は、初めてです。私は普段どこにいっても天然だ、マイペースだと言われることが多いのですが、多分ここでは目立ちません(笑)。皆さん、ほんわかしているので安心して稽古に臨めています。

■リバイバル版はキャラクターたちのラブストーリーが交錯するような新しい構成になっている

――リバイバル版の上演は今回が日本初になりますね。

桜井玲香】もとの作品や映画版を観たことがある方もいらっしゃると思います。でもリバイバル版は内容が少し違います。私も映画版を観てびっくりしたくらいです。クラシカルな要素もありますが、リバイバル版はキャラクターたちのラブストーリーが交錯するような新しい構成になっています。なので、そこは若い方が観ても楽しめるのかなと。登場人物がみんな片思いで、一方通行なので、それがもどかしいながらも面白いのかなと思います。

あと、ブロードウェイで上演する際はアジア人を出演させる指定があったり、作家のこだわりが強かった、と演出の上島さんから伺いました。それもあって、名作なのにあまりポピュラーではなかったそうです。なので、今回の上演で、この作品がもっと広まったらいいなとも思っています。日本でも再演を重ねていく作品になるように、微力ながら貢献できたら嬉しいです。

――桜井さんが思う本作の魅力はどこにありますか。

桜井玲香】こういう東洋モチーフの曲調やメロディを使っているミュージカルは少なく、すごく新鮮に感じると思います。そこが最大の魅力かなと。歌いながら引き込まれることも多いです。あとは、クラブが舞台のお話なので、ショータイムの華やかなシーンが随所に散りばめられているところもポイントです。ストーリーはもちろんですが、エンターテインメント的な楽しさも感じてもらえる作品だと思います。

――ショータイム的なシーンは衣装も楽しみですね。

桜井玲香】そうなんです。すごくきらびやかです!京劇のシーンでは、実際に京劇で使われている衣装をお借りしています。日本で上演されるミュージカルではなかなか観られないものだと思いますし、衣装も楽しんでもらいたいです。

――コロナ禍で中止になってしまった作品もありましたが、近年はミュージカル作品に多く出演されている印象があります。2年前にインタビューしたときもお聞きしたのですが、桜井さんにとって、ミュージカルの魅力とは?を改めてお伺いできますか。

桜井玲香】そうですね、やっぱり変わらずに音楽の力が一番の魅力です。ストレートプレイの2時間ずっとセリフだけでストーリーが進んでいくことももちろん面白いですが、ミュージカルは音楽にのった瞬間、一気に情報量が何十倍にも膨らみます。そこがミュージカルの強みであり、魅力なのかなと思います。あとは、単純に楽しいです(笑)。音楽は楽しいです。

■気軽に観ていただけるような分かりやすい構成、ストーリーになっている

――舞台に立つときに大切にしていることも教えてください。

桜井玲香】楽しむこと、自信を持つこと。乃木坂46のときはキャプテンとして見せなくてはいけないポイントがありました。今は全部見られているという気持ちで自信を持たなくちゃと思うことが多いです。一人になってグループのときとは感覚が変わりました。

――今後、演じてみたい役や挑戦したい作品は?

桜井玲香】実は、小池修一郎先生の作品に出演したいと思っています。『1789 ―バスティーユの恋人たち―』は、何回も通っていたくらい好きなんです。時代的には、フランス革命あたりの作品に出てみたいです!やりたい役を言葉に出すことは苦手ですが、これから口に出していこうかなと思います(笑)。チャンスが来るといいなぁ!

――最後に本作への意気込みをお願いします。

桜井玲香】オリジナル版が出来てから、かなり時間が経っていて、クラシカル要素の強い作品ではあります。でも今回上演するリバイバル版は、ラブストーリー要素が強くなっているなど、普段あまり舞台を観ない方にも気軽に観ていただけるようなわかりやすい構成、ストーリーになっていると思います。

もちろん当時の社会問題などがしっかりと色濃く描かれている部分もあり、切なくなってしまうようなシーンもあります。昔の作品なのに今でもこんなに理解できるというか、共感できる部分があるのは私たちがもっと向き合っていかなくてはいけないということだと思います。

メイ・リーが中国からアメリカに渡ってきた理由は戦争だったり、今の時代とリンクする問題が描かれています。どこか他人事に感じてしまいがちな戦争のことを、もう少し身近に自分のこととして考えられる機会を与えてくれる作品でもあるのかなと思っています。

今回、東京と大阪どちらも公演数が多くないので見逃さないでください。早めに観に来ていただけたら嬉しいです。精一杯頑張ります!

撮影・取材=野木原晃一 文=yoshimi

W主演でミュージカル『FLOWER DRUM SONG』に出演する桜井玲香