今シーズンからFA女子スーパーリーグアーセナルプレーしている日本代表FW岩渕真奈。ここまでは途中出場が中心となっているが、首位を争うチームにおいて、得難い経験をしていることは間違いない。

 3月末には国内10~30代の女子サッカープレーヤーを対象としたアディダス主催のトークイベント「Mana Talk! ‐岩渕真奈と100人のサッカーガールズトーク-」を実施し、イングランドなどこれまでの経験や様々なアドバイスを伝えた。

 その岩渕にアーセナルでの現状やWEリーグアジアカップでベスト4に終わった日本代表について聞いた。

インタビュー=小松春生
取材協力=アディダス

―――多くの女子プレーヤーと直接コミュニケーションを取れる機会でした。コロナ禍にあり、岩渕選手自身は海外でプレーしているので、日本の子どもたちなどと話す機会は多くないと思います。

岩渕 楽しかったですし、未来のWEリーガーに向けて話をする機会はあまりなかったので、ものすごく新鮮でした。子どもたちのためにも、改めて自分自身ももっと女子サッカーのためにできることをやらないといけないと強く思いました。

 今、海外に来て、女子サッカーがもう少し盛り上がったらいいと感じています。コロナ禍などでいろいろな状況がありますけど、こうやってオンラインを通じて応援してもらえていることを改めて感じる機会をいただけたのは、選手として嬉しいことですし、また頑張らなければと思いました。オフの時間などに少しでもできることはやっていきたいですね。

―――アーセナル加入後、最初のシーズンはいかがでしょうか。ピッチ内外で多くの刺激があると思います。

岩渕 まず、本当に楽しいです。サッカーってこんなに楽しいのかと、この歳になって改めて感じています。環境がものすごく充実しているので、初めての経験と言えるくらい、「女子サッカー選手になってよかった」とすごく感じています。今までのチームに比べれば、試合に出る時間が限られていますが、レベルの高い選手たちから日々学べて、ものすごく高いレベルでの競争ができている部分では、サッカー選手として幸せなことなので。もう少し試合時間に絡めるように頑張りたいと思っています。

―――途中出場が多いシーズンですが、どのように状況を打破しようと取り組んでいますか?

岩渕 自分自身の良さはあると思いますし、監督も理解してくれていると思います。ただ、レベルが高い相手に対しての守備の部分は、すごく求められています。そこは意識をして取り組んでいますし、当たり前のことですけど、日頃の練習からしっかりと頑張ることです。少しでも試合に出たらチャンスをものにできるように意識をしています。1月のアジアカップ以降、コンディションに納得いかないところはありますが、去年までは試合に絡めていた自信もあるので、まずはしっかりとそこを上げていきたいです。

―――コンディション調整のお話にもつながりますが、イングランド全体でウィメンズサッカーバックアップする流れがある中、アーセナルという素晴らしい施設などを有したクラブに在籍していることでのプラスもあると思います。

岩渕 イングランドにはプロとしてあるべきものが全部あると思っています。もちろん、アーセナルというクラブの大きさから来るプレッシャーもありますが、恵まれているとすごく感じています。だからこそ、子どもたちにも先ほど話しましたが、日本女子サッカーもこうなってほしいと、アーセナルに来てすごく感じるようになったので。ものすごく充実しているということが自分自身の中ではありますけど、ギャップも反面で感じています。

―――昨年12月のFAカップ決勝では、チェルシーに敗れてしまいましたが、ウェンブリー・スタジアムで、4万人という観客の前でプレーしました。

岩渕 チケットが1万枚…、2万枚…、3万枚売れましたというSNSでの報告を見るたびに、選手たちのテンションも上がっていました。価値もどんどんついていって、FAカップの決勝、しかもウェンブリーでプレーできて。負けたことは残念でしたけど、たくさんのお客さんの前でサッカーができることは幸せです。お客さんの層、熱はイングランドと日本で違いがあるとは思いますが、少しでも日本でもたくさんの人に見てもらえる機会があればいいなと思います。

―――その機会で言うと、FAウィメンズスーパーリーグは公式サイトで登録すれば日本でもネット配信で視聴できますが、一番はDAZNやYouTubeで視聴できるチャンピオンズリーグだと思います。グループステージでは現在“世界最強”と言っていいバルセロナと対戦しました。CLを戦うことで感じていることはありますか?

岩渕 アーセナルに来て、初めて代表を引退する人の気持ちがわかった気がします。今までは「なぜ代表を引退するんだろう」と感じていたんですが、トップレベルのチーム、アーセナルというクラブで感じる、戦うインテンシティの高さもありますし、CLでバルセロナと対戦するといったことへの価値をすごく感じています。そういう対戦相手といつも一緒に練習している選手たちと戦えることは、すごく楽しいですし、今までになかった感覚なので。それは今シーズン、一つ学べたことで、いい経験ができていると感じます。ピッチに立って試合に絡むことはサッカー選手として当たり前ですし、一番大事なことなので、そこに絡めるようにもっともっと頑張りたい気持ちです。

―――以前、お話をうかがった際、岩渕選手や長谷川唯選手がイングランドで活躍すれば、日本人選手の価値が上がり、いい循環が生まれるというお話がありました。海外とWEリーグの循環が活性化すれば、WEリーグももっと盛り上がることにもつながるかもしれません。WEリーグ外でプレーする立場として、WEリーグの現状はどうご覧になりますか?

岩渕 正直、自分が何かを意見をする立場ではないのかなというのが一つあります。自分も日本代表として試合をするにあたって、試合の結果が国内の女子サッカーの盛り上がりにつながると思っています。だから、まずは選手としての結果を求めてしっかりと戦わないといけないと思っています。

 ただ、海外でプレーして感じることは、W杯優勝、オリンピック優勝を目指すのであれば、絶対に海外でやったほうが経験値になるし、選手としての幅も広がるという意見を持っています。一方、国内でどう盛り上げつつ、やっていくかを考えたとき、海外の選手に日本へ来てもらうことがあります。そこは少しずつ、自分やWEリーグが日本サッカーの魅力を発信していくことで、海外の選手を知る機会があると思うので、そこはやっていきたいですね。

―――今、新しく感じていることや経験がある中、先日のアジアカップではワールドカップの出場権は取りましたが、結果としては準決勝敗退でした。大会後、Instagramで「サッカーはもちろん、1人の人間としてものすごくいろんなことが見えた」と投稿されていました。新しいものを得ているからこそ見えたのか、これまでの継続の中で見えたのか。その見えたものは何でしょうか。

岩渕 もちろん今いる自分の環境や、過去の代表での経験値を得て、自分自身で感じたことですが、もっとチームとして戦術などを積み上げていかないと、個ではなかなか難しいとイングランドに来て感じています。結果が出ていないとなったときに、その部分をすごく感じました。もっとチームとして積み上げなければいけません。でも、その反面ものすごく可能性があるチームだとも思っています。もちろんアジアで優勝できれば良かったですが、この悔しさを全員が経験した中で、もっともっとやるべきことをチームとしても個人としても上を目指すという部分でやらないといけないと思います。

イベント後、取材に応じた岩渕真奈