米アップルからスマートフォン「iPhone」の組み立てを請け負っている台湾・和碩聯合科技(ペガトロン)が、中国の上海市と昆山市の工場で操業を一時停止したと、ロイター通信が4月12日報じた

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ペガトロン「工場再開は政府の承認次第」

 中国政府の新型コロナ感染防止対策が理由だという。上海では2022年4月11日、新規感染者数が11日ぶりに前日を下回った。だが1日当たりの新規感染者数は2万人を超える状況が続いている。こうした中、中国は22年3月下旬から上海を厳重封鎖し、隣接する昆山でも規制を強化している。

 ペガトロンは、「工場の再開は政府の承認を得られるかに左右される」とし、「顧客やサプライヤーと緊密に連絡を取り、可能な限り早期の操業再開に向け、地方政府に積極的に協力している」と述べた。

 台湾の金融監督当局の金融監督管理委員会によると、22年4月7日時点で台湾の上場企業161社が上海と昆山で事業を停止した。そのうち41社が電子機器を製造しているという。

台湾企業30社、1週間生産停止を発表

 ロイターの別の記事によると、電子機器部品を製造する台湾企業約30社は22年4月13日、中国東部における行動規制を理由に1週間生産を停止すると明らかにした。

 例えばノートパソコン携帯電話デジタルカメラの部品を製造する亜洲電材(アジア・エレクトロニックマテリアル)は、昆山工場の稼働を4月18日まで停止する。液晶ディスプレーの部品を製造する迎輝科技(EFUNテクノロジー)は江蘇州蘇州市の工場を同じく4月18日まで停止する。

 また、米アップルや米インテルを顧客に持つ、プリント基板の欣興電子(ユニマイクロン)は、昆山工場の閉鎖を4月19日まで延長すると明らかにした。同社では、顧客への影響を軽減するために経営資源の調整を行っているという。22年1〜3月期における昆山の2工場の売上高は同社全体の約13%を占めたという。

著名アナリスト「4月下旬〜5月上旬まで再開不可能」

 アップルなどの電子機器の市場動向に詳しい中国TFインターナショナル証券アナリストのミンチー・クオ氏はこうした状況について、「最良のシナリオでも、生産の完全な再開は22年4月下旬あるいは5月上旬になるまで不可能かもしれない」と述べている。一方で「アップルはその強力なサプライチェーン(供給網)と、中国政府との良好な関係により、影響を最小限に抑えることができるだろう」と同氏は予想する。

 ただ、台湾の調査会社トレンドフォースは、操業停止による影響は長引くとみている。物流停滞や材料不足、人員確保といった様々な問題が生じているという。「都市封鎖が解除された後の物流と資材需要の急増は、税関当局の業務をまひさせ、配達遅延を引き起こす可能性がある」としている。

 また中国の消費者が支出を携帯電話などの電子機器から生活必需品に振り向けるため、iPhoneの需要も打撃を受ける可能性があるとロイターは報じている。

 中国では22年3月に、電子産業の集積地と言われる南部の広東省深圳市でも都市封鎖が実施された。同じくiPhoneの組み立てを請け負う、台湾・鴻海(ホンハイ)が同市に持つ工場の中断を余儀なくされた。

 (参考・関連記事)「中国のコロナ都市封鎖、iPhone工場など操業一時停止 | JDIR

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