国道を中心に、峠越えの区間で新しいトンネルが相次ぎ開通・計画されています。全国的に老朽化が進んでいることが背景にありますが、新トンネルの掘削が選択されたトンネルは、それだけでない課題を抱えています。

上越国境「三国峠」に新トンネル開通

2022年3月、群馬・新潟県境の国道17号に「新三国トンネル」が開通しました。旧トンネルである三国トンネルに並行して、標高約1300mの三国峠直下を貫く新トンネルが掘られ、旧トンネルは閉鎖されました。

ここに限らず近年、こうした旧トンネルを代替する国道の新トンネルが全国的に開通・計画されています。

2021年3月には北海道小樽市国道5号で「新塩谷トンネル」が開通し、海側の旧ルートにあった塩谷トンネルと笠岩トンネルを代替しました。

山梨県では、甲府盆地の入口にあたる国道20号「新笹子トンネル」に新トンネルを建設し、さらに付近の観音トンネルは橋梁で代替する事業が進んでいます。愛知県では、名古屋・豊田方面と長野県飯田市をつなぐ国道153号の「新伊勢神トンネル」(豊田市)が5月に着工。これらはそれぞれ、旧道、現道のトンネルに次ぐ3本目になります。

背景にあるのは、主に老朽化の問題です。上に挙げた旧トンネル・現道トンネルは昭和30年代に開通しており、建設から60年以上が経過しています。

現在、橋梁などの道路インフラは老朽化とその対策が課題になっていますが、トンネルも同様で、2029年には全国のトンネルの約35%が、建設後50年を経過するとされているのです。

トンネルは橋梁に比べて数は大幅に少ないものの、老朽化は、より進行しているようです。国土交通省の資料によると、2020年時点で約41%が健全度III評価「構造物の機能に支障が生じる可能性があり、早期に措置を講ずべき状態」とされ、うち1%は健全度IV「構造物の機能に支障が生じている、または生じる可能性が著しく高く、緊急に措置を講ずべき状態」とされています。ちなみに橋梁の場合、III評価は全体の10%、IV評価は0.1%でした。

もう一つの目的「激セマトンネル解消」

先に挙げた4つのトンネルは、いずれも小さいなど、今の規格に合っていないことも作り替えの大きな要因です。大型車のすれ違いが困難な狭い箇所があったり、断面が小さいことで大型車の上部がトンネルの壁(覆工)に当たったりするなどの課題がありました。なかでも新三国トンネルは、過去の補修工事で覆工が増したため、余計に狭くなっていました。

一方で、三国トンネルや伊勢神トンネルなどは、並行する関越道関越トンネル中央道恵那山トンネルが長さ5000mを超えるため危険物積載車の通行ができないなど、ここを通らざるを得ない車両も少なくありません。円滑な物資輸送を確保する観点からも、作り替えが進みました。

もっとも、こうした課題は、荷車などが通れればよかった旧トンネルの代替として昭和の時代にトンネルが新設された際にも生じたことでしょう。近年開通・計画されている新トンネルは、老朽化対策と道路改良を兼ねて実現に至ったものといえます。

ただ、こうした老朽トンネルの対応は、数のうえで多くを占める地方公共団体都道府県市町村など)が管理するトンネルでは遅れています。2018年度末時点で健全度III、IV判定とされたトンネルのうち修繕着手済みの箇所は、国管理のもので64%、高速道路会社管理のもので72%であるのに対し、地方公共団体管理のものでは24%にとどまっています。

3月に開通した新三国トンネル(画像:高崎河川国道事務所)。