春アジから夏アジへ

 手軽で身近な釣りのターゲットのマアジ。

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 関東から東海にかけての太平洋側沿岸で春本番を迎え、海水温が17度を超えてくると、アジの活動も活発になり始めます。

 そして初夏の産卵期に入る頃には、脂が乗って体色も黄色に変化していきます。

 一方、釣り人の視点からは、春先から初夏にかけて次第に捕食が盛んになり、アジの「食い」が良くなり始める頃です。

 沖釣りから順に各陸釣りのエリアでも釣れ始め、これから甘いお刺身や、ふわふわのフライなど「絶品アジ」を食するチャンスがやってきます。

 今回はアジの沖釣りの中でも、通った人ならではの視点から、春から初夏にかけての「走りの時期」と「最盛期」それぞれの特徴や楽しみ方、そしてアジ釣りの課題の中でも意外に地味でも効果のあるワンポイントなどご紹介させていただきます。

 毎年、恒例行事のように関東地域の船宿に通っているアジ釣りですが、例年、春先から各釣果情報が入り始める頃になると、以下の選択をもとにワクワクしながら釣行準備に入ります。

1.時期の選択
2.沖釣り方法の選択

1.時期の選択と楽しみ方

 例年、東京湾や相模湾では4月頃から6月頃まで、アジは荒食いとともに脂の乗る時期とされ、船宿では美味しいアジを求めて通う常連さんで賑わいます。

 私は年に2回ほど、「①走り」と「②旬」の時期に、まるで初ガツオと戻りガツオのごとく、それぞれ性格の違う春と初夏の沖のアジ釣りを楽しんでいます。

①走りの春アジ

 何といっても「走り」の春アジ。脂の乗り始めたアジの味覚を先取りできる喜びは釣り人ならではです。

 若干ムラがあって気難しい時期ですが、この時期は沖のさらっとした風と太陽が気持ちよく、多少釣況が渋くとも洋上で竿を振る一日は最高に感じます。

 釣り方の基本は同じですが、傾向として朝は反応弱く、お昼に向かって盛り上がっていくことが多く、アジの「捕食スイッチ」が入るまで、前半戦はコマセを切らさないよう、遠いアタリでも誘いや待ちなど工夫しながら、その日の「答え」を探してチャンスを拾っていくゲームを楽しみます。

②旬に踊る夏アジ

 夏本番の少し手前の6月頃、例年、海況は比較的安定して釣行日も比較的決めやすいのがこの時期。最盛期ですので、入れ食いに出会うことも期待の一つです。

 何といっても、産卵前に脂の乗り切ったアジは体表の黄色みが強くなり「金アジ」とも言われます。下記にご紹介の沖釣り方法での釣果いずれも、味は抜群に美味しい時期です。

 旬で賑やかな季節ですので、海況の安定と釣りやすさから、釣行者にとっては沖釣り方法の選択肢が増え、経験を広げるには良いタイミングかもしれません。

 ただ、乗り合う人も増えてくるこの時期、基本動作はしっかりと実践して、周りの釣行者と協調しながら楽しむことが留意点です。

2.アジの沖釣り方法の選択

 以前にもご紹介いたしましたが、大関東地方でアジの沖釣りをする場合には、おおまかに以下の場所と方法を選んでいきます。

1.東京湾の沿岸で半日船を主体に、比較的軽い道具を使って浅場の小・中型のアジを狙う「ライトアジ船」

2.東京湾口あたりの比較的深場主体の1日船で本格的な道具を使った中・大型のアジを狙う「ビシアジ船」

3.相模湾の各港から出船しますが、江の島沖、茅ヶ崎沖、小田原沖など、比較的深場で釣況の良い場所を狙う1日船で、大型のアジを主体に嬉しいゲストにも期待ができる本格的な「ビシアジ船」

 その他、私が楽しむ関東地方のアジの沖釣り方法の詳細につきましては、「第6回:シーズン到来、アジ釣りのタイプ別楽しみ方(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/60891)」をご参考いただけますと幸いです。

サバのかわしかた・ワンポイント

 アジ釣りの基本動作はウエブでよく紹介されていますが、意外とよくあるケースにもかかわらず、常連ゲストのサバの猛攻対策はあまり見かけません。

 今回、段階的な対応も含めて少しまとめてみました。

 サバは美味しいゲストですが、棚を間違えていたり、サバの大好きなアイテムが仕掛けについていたりすると、ひたすらにサバを掛けて走られ、船中オマツリ多発で厄介なことになります。

 サバは避けてもいくらかは掛かるため、私の場合は持って帰りたい場合でも、アジ釣りに集中した工夫をします。

 以下は自身の経験や釣行者との会話、船長からのアドバイスをまとめてみました。

1.指示棚より上に仕掛けを上げない(基本動作が大事です)

2.「1」でもサバの猛攻に遭うとき、1メートル下げてみる

3.仕掛けの夜光玉を外す

4.アカタンを付けずに5ミリほどに切ったイソメを付ける

5.「4」でも掛かるときは空針(針に何もつけない)にする

6.針の色は金に反応が強いためシルバーにする

 などです。特に棚は大事でサバの層に仕掛けを入れないことは、乗船しているみなさんと協力して取り組みます。

今回の釣行

 花冷えの寒気が抜けて暖かな高気圧が張り出し、初夏のような陽気が数日続く予報。週末に待望の春アジを楽しむチャンスが来ました。

 今年も早々に始まった相模湾の大型アジ。今回は茅ヶ崎からビシアジ船で出船します。

 春先ですので、久々に洋上で気持ちの良い一日を過ごして、お土産程度の釣果が出れば十分という期待値です。

 船は西に進路を向け、二宮・小田原方面に向かいます。当日の相模湾は弱い北西風からお昼にかけて弱い南の風に変わる凪の予報で、水温は18.3度です。

 洋上を疾走する船上では明け方の冷たい風が当たりますが、ウィンブレイカーを着ていれば寒く感じることもなく、日が昇れば半袖の一日になりそうです。

 到着し、合図とともに開始です。

 序盤戦はコマセワークでアジを寄せることを中心に考えておりましたが、嬉しいことに朝の第1投目からアタリが出ます。現れたのは何と黒ムツ。幸先良い嬉しいゲストです。

 チャンスとばかりに手返しよく仕掛けを入れて指示棚までコマセを振り、ゆっくりと誘いを入れると、「ズン」と持たれかかったようなアタリが出ます。

 針掛かりを確信するため竿をゆっくり上に聞き合わせて少し巻き上げると一気に竿先に重みがかかり、魚が乗ります。この乗り方は待望のアジです。

 竿を手持ちのまま、途中でバレ(外れ)ないかとハラハラしながら巻き上げていきます。この時間が堪らなく楽しい緊張感です。

 無事船中に取り込んで計ってみると、32センチほどの良い型のアジ。これを待っていました。

 そこからは毎投魚信があり、一日中釣れ続く幸運な日となりました。

 途中、サバの猛攻に遭い、アジの釣果は停滞。

 夜光玉や赤タンを外してイソメや空針で対応しながらも、時折釣れる40センチ程度の型の良いサバは美味しいので、選んでキープしていきます。

 しばらくして船長からの指示で、乗船者が一斉に1メートルほど棚を下げながらやってみると、再びアジだけ掛かり始めます。

 後半盛り上がり、落とせばアタる入れ食いモードが続きます。

 私の方は37センチを筆頭に30センチ前後の大型アジを30匹ほど数えたあたりで満足し、打ち止めにします。

 その他サバ、大きなウルメイワシ、黒ムツなどを交えると、賑やかな結果となりました。

 今回の釣果の多くはご近所に楽しんでいただき、自宅では以下の料理を楽しみました。

 1日目は畑の野草や野菜(のらぼう・ネギ坊主・アスパラ)とアジ・ウルメイワシ天ぷらに。

 2日目は脂の乗ったサバは焼いてタップリ生姜醤油とともに、単純絶品料理に。

 3日目は寝かせたお刺身と、クロムツ・ジャンボウルメの炙りに。

 今回は初夏のような天候と凪の海況に恵まれただけではなく、一日釣れ続く釣果や一足お先に脂の乗ったアジの味覚も楽しめ、心に残る釣行でした。

 これがあるから船釣りはやめられません。

これまでの連載

第1回:ITが激変させた釣りの楽しみ方と釣果(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/59294

第2回:SNSを駆使して釣りの楽しみ10倍増(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/59542

第3回:ITを駆使してお金をかけずに釣りを楽しむ(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/59827

第4回:好奇心と予算コントロールで釣果を上げよう(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/60091

第5回:手軽に楽しめる「江戸前小物釣行」(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/60560

第6回:シーズン到来、アジ釣りのタイプ別楽しみ方(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/60891

第7回:繊細な引きが病みつきに、河口の手長エビ釣り(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/61369

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