作家、井上荒野による傑作小説「あちらにいる鬼」を寺島しのぶと豊川悦司のW主演、共演に広末涼子を迎え映画化。『ヴァイブレータ』(03)、『さよなら歌舞伎町』(15)などの廣木隆一監督がメガホンを取り、同作でタッグを組んだ荒木晴彦が脚本を手掛けた本作が、2022年11月に全国公開されることが分かった。

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原作は、井上が父である作家、井上光晴と母、父と瀬戸内寂聴をモデルに創作した「あちらにいる鬼」。「切羽へ」で直木賞、「赤へ」で柴田錬三郎賞、「その話は今日はやめておきましょう」で織田作之助賞など様々な文学賞を受賞してきた井上が、彼女にとってもっとも身近な人々である父、母と、瀬戸内寂聴をモデルに男女3人の“特別な関係”を描いた物語。寺島が、瀬戸内寂聴をモデルにした人気作家、長内みはるを、豊川が井上光晴をモデルとした作家、白木篤郎をそれぞれ演じ、広末が篤郎の妻、笙子に扮する。

人気作家のみはるは、講演旅行をきっかけに戦後派を代表する作家、白木と男女の関係になる。一方、白木の妻である笙子は、夫の手あたり次第とも言える女性との関係を黙認することで、夫婦として平穏な生活を保っていた。だが、みはるにとって白木は肉体の関係だけに終わらず、“書くこと”によるつながりを深めることで、かけがえのない存在となっていく。二人のあいだを行き来する白木だが、度を越した女性との交わりは止まることはなかった。白木を通じて響き合う二人は、どこにたどりつくのか?

廣木監督、荒井とは二度目のタッグ、また豊川の共演作も多い寺島は「最も信頼している荒井晴彦さんや廣木監督とまた作品作りができること、豊川さんとまたお芝居できることに胸が弾んでいます」とコメントし、豊川も「寺島しのぶと、男と女、それだけを演じてみたい」と語った。

そして本作でメガホンを取る廣木監督、W主演の寺島、豊川、ともに初タッグとなる広末は「とても大人な台本に、はたして私がついて行けるか?いまだ不安なまま撮影開始となりそうですが、間違いなく魅力的な寺島さんと豊川さんの御姿がおのずと私をも導いてくださる予感がしております」とメッセージを寄せている。

一人の男を通して繋がり合う二人の女性の視点から描かれる、彼女たちの長きにわたる関係と心模様の変化と、その先に待つものとは?本作のさらなる続報を待ちたい。

<キャスト・スタッフコメント>

●寺島しのぶ(長内みはる役)

「何度も撮影が延長され半ば諦めかけていたのですがやっとインできそうです。そうこうしているうちに私の歳も寂聴さんが得度式をされた歳と同じになりました。井上荒野様からも心強いお手紙をいただきました。これを宝物に最も信頼している荒井晴彦さんや廣木監督とまた作品作りができること、豊川さんとまたお芝居できることに胸が弾み広末さんとも不思議な関係性が築けそうです。いまから崖の下をチラチラ見ては躊躇して、いずれ捨て身で飛び込もうとしている自分を鼓舞している毎日です」

●豊川悦司(白木篤郎役)

「男にも女にも家庭があって、それでも磁石のように惹きつけあって、どうしようもなく、あがくすべもなく、ただ相手を見据えて、しがみついていく二人。しがみつく二人にしがみつく家族。スキャンダルという理由は、彼らが文化人であったというだけのこと。寺島しのぶと、男と女、それだけを演じてみたい」

●広末涼子(白木笙子役)

「とても大人な台本に、はたして私がついて行けるか?いまだ不安なまま撮影開始となりそうですが、間違いなく魅力的な寺島さんと豊川さんの御姿がおのずと私をも導いてくださる予感がしております。撮影の日を楽しみに精一杯頑張ります。よろしくお願いいたします」

●廣木隆一(監督)

「物語を語ることでしか存在できない男を巡って女は現実を生きる。いや男と女と言うよりも同じ時間を過ごした大人たちのラブストーリーを、このキャストで演出することに何か不思議な感じがしてワクワクします。どこまでが虚でどこまでが創作なのか。原作者の目を通して描いた彼らの関係を映画化できることに感謝します。ぜひ鬼の正体を劇場で確認して下さい」

文/川崎このみ

寺島しのぶ&豊川悦司W主演、広末涼子共演で井上荒野の傑作小説『あちらにいる鬼』映画化決定/[c]2022「あちらにいる鬼」製作委員会