学校の教科書に書かれた内容が「いつの世でも常識」とは限らない。「鎌倉幕府の成立年」と聞くと条件反射で1192年が頭に浮かぶ人も多いと思うが、現代の歴史の教科書では「1185年」と記載されている。

以前ツイッター上では、子どもの学習教材に現れた「見慣れない聖徳太子」に驚きの声が寄せられていたのをご存知だろうか。

【話題のツイート】聖徳太子、こんな感じだったっけ…?


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■謎の「4文字」を発見してしまい…

注目を集めていたのは、ツイッターユーザー・戸似田さんのツイートに添えられていた写真。

投稿には「なんでなぞるの?」とだけつづられており、写真を見るとそこには、歴史の教科書でお馴染みの「聖徳太子」の肖像画を挿し絵化したイラストが確認できた。学習教材の一部分を撮影したものなのだろう。

歴史の完全学習1

しかしよくよく見ると、こちらは「挿し絵」ではなく、立派な「設問」であることが判明。聖徳太子の上部分には「なぞろう」という、見慣れぬフレーズが記されていたのだった…。


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■突然の「なぞろう」が大ヒット

令和4年を迎えた現代では大学入試センター試験でなく「大学入学共通テスト」が実施されているように、子どもたちに求められる知識や能力は時代と共に変化していき、それは当然「出題形式」にも反映されるもの。

とはいえ歴史の問題といえば、人物の名前や法令・施策の名称、年号などを答えさせる「一問一答」や、歴史的な事象を交えた複数の短文から正しいものを選択する「正誤問題」の形式を連想する人が多いのではないだろうか。

歴史の完全学習1

そんな中、歴史の教材に突如出現した「なぞろう」という予想外な指示は多くの人々に衝撃を与えたようで、件のツイートは2022年4月時点で1.5万件以上ものRTを記録する事態に。

また、ツイート本文につづられた「なんでなぞるの?」という疑問に呼応するが如く、多くのツイッターユーザーから「これ本当に謎でしょ」「ジワジワ来るものがある」「そのまま落書きしちゃいそう」「真面目な話、なんでなぞるの?」などなど、ツッコミの声が寄せられていたのだ。

しかし中には「やっぱり手を動かすことが大事なんだよ…」といった具合に、件の「なぞろう」の重要性について理解を示すユーザーからのコメントも散見されたのが興味深い。

歴史の完全学習1

ツイート投稿主・戸似田さんに詳しい話を聞いたところ、件の設問は中学生の娘が使用する教材『歴史の完全学習1』にて発見したものだそう。

そこで今回は、同教材を刊行する「正進社」に直撃取材を実施することに。その結果、「なぞろう」に込められた担当者たちの熱い思いが明らかになったのだ…。

■「なぞろう」には第一形態があった…?

学習教材の出版社「正進社」が教材内に話題の「なぞろう」を導入し始めたのは、2021年4月に行なわれた内容改訂のタイミングであったことが判明。

聖徳太子のほか、フランシスコ・ザビエル織田信長豊臣秀吉といった人物にも「なぞろう」の設問が用意されている。

歴史の完全学習1

単刀直入に、なぜこのような尖った設問を設けたのか尋ねたところ、同社の中学編集部(社会科)担当者からは「実際に手を動かして人物の姿を描いてもらうと、名前を書くだけのときより強く印象に残ります」「歴史上の人物の名前や漢字、行なった施策などももちろん大切なのですが、その人物をなぞることで『この人の服装にはどんな意味があるんだろう』など、さらに踏み込んだ問いや発見があるかと思います」という回答が得られたのだった。

完全学習シリーズ

他の社会科の分野である「地理」「公民」と異なり、人物の肖像画が登場するのは「歴史」だけという特徴に着目し、このポイントをどうにか活用できないものか…と考えたところ、件の「なぞろう」が誕生したという。

なお企画段階では「なぞろう」ではなく、教科書を見ながら空白部分に人物の顔を描く「描き写そう」を予定していたのだが、「さすがにレベルが高すぎる」という理由でボツになったというから微笑ましい。それはそれで見てみたかった気もするが…。


■「歴史」を学ぶ上で大切なこと

昨今では「学習指導要領」の改訂もあり、従来のような「人物名を書きなさい」「この人物の行なった政策を書きなさい」といった問題が減少しており、暗記する能力ではなく、さまざまな事象に関連付けて考える能力が求められていることも「なぞろう」を導入するきっかけとなったそうだ。

今回、ツイッターから大きな話題となった件について、担当者は「当社『歴史の完全学習』のなぞろうのコーナーに、こんなにもたくさんの方々が興味を抱いてくださったことに驚いています」「いち編集者としては、どのようなきっかけからでも構わないので、楽しく歴史や社会科、学校の勉強に取り組んでほしいという思いで企画いたしました。手を動かして作業をすると、記憶に残りやすいものです」と振り返っている。

歴史の完全学習1

また「大人になってから『聖徳太子、なぞったなー』と思い出してくれるだけでもうれしいです」「登場する人物をなぞるだけでなく色を塗ってみたりして、歴史の勉強に楽しく取り組んでいただければ幸いです」という笑顔のコメントも見られ、ただ「学ばせる」のでなく「興味を持ってもらう」点をなによりも大切にしていることが伺えたのだ。

革命的ともいえる件の「なぞろう」だが、ひょっとしたら今後の「歴史」教材のニュースタンダードとして定着していくかもしれない。

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(取材・文/Sirabee 編集部・秋山 はじめ

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