詳細画像はこちら

暴力的な動力性能を当然のように処理

アストン マーティンDBX707の真骨頂といえるのが、右足へ力を込めた時。大げさなことを抜きにして、とんでもなく速い。爆発的でもあり、中毒性もある。

【画像】圧倒的な動的能力 アストン マーティンDBX707 競合する高性能SUVと写真で比較 全154枚

近年は、純EVが叶えた0-100km/h加速の鋭さに、若干感覚が麻痺しているところがある。それでも、車重が2245kgもあるDBX707は、それを3.1秒でこなす。この大きさのSUVであることを考えれば、驚異的に速い。

詳細画像はこちら
アストン マーティンDBX707(欧州仕様)

更に、100km/hを超えても加速力はまったく衰えない。160km/hを超えても、同様に速度が増していく。どこまでこの勢いが保たれるのか、途中で恐ろしくなるほど。

センターコンソールのドライブモード・コントローラーでスポーツ+を選択すると、最もDBX707は鋭くなる。ウェットクラッチを採用した9速ATも、意欲的にエンジンのパワーを速度へ変換していく。

チューニングを受けたシャシーは、暴力的な動力性能を、すべて当然のように処理してしまう。トラクションも、無限と思えるほどに高い。

今回試乗した場所は、地中海に浮かぶスペインのサルデーニャ島だった。ここには、幅が広く舗装された、チャレンジングなルートが長く続いている。走る面白さでは、欧州屈指の道といっていい。

加えて路面状態が一定ではなく、隆起部分や深いワダチなど傷んだ場所も少なくない。シャシーの能力が、つぶさに試される環境でもある。

こんなサルデーニャ島を、DBX707は思う存分楽しませてくれる。改良を受けたステアリングは、手のひらへ正確で豊かなフィードバックを届ける。連続コーナーを高速で駆け抜けることが、本当に気持ちいい

不自然に感じるほどのコーナリング性能

最新技術を持ってしても物理学には打ち勝てず、タイトコーナーでは最終的にアンダーステアへ転じる。それでも、その手前までならアクセルペダルの踏み加減でテールスライドも自在。DBX707が、喜んでテールを降り出すようにすら思える。

勇敢な気持ちを持っていれば、トラクション・コントロールをオフにもできる。オススメはしないが。

詳細画像はこちら
アストン マーティンDBX707(欧州仕様)

ただし、基本的には車高が高く、車重のかさむSUVだ。不自然に感じるほど秀でたコーナリング性能を獲得しているが、ある種の不安感もある。それがなければ、アウト側のタイヤへ過度の負荷が掛かることになるだろう。

アンチロールシステムがボディを水平に保ち、遠心力を克服するように務めてくれる。とはいえ、スーパーカーと同等の身のこなしは難しい。

正直、大きなSUVでこれほど激しく運転する必要性に対しては、疑問も持たなくはない。それでも、DBX707のようなクルマへの需要は少なくないのが実際だ。

同時に、環境負荷への意識が高まる近年にあって、燃費は自慢できるものではない。アストン マーティンの主張では7.0km/Lとのことだが、積極的に運転すれば、その半分にも届かない。DBX707の購買層は、気にしないのだと思うけれど。

ちなみに、DBXのプラグインハイブリッド版も2023年半ばには登場予定。モデル平均でのCO2排出量は多少減るだろう。

GTの快適性を維持しつつ圧倒的な動的能力

さて、筆者がDBX707で感じた不満の1つが、インフォテインメント・システムが従来のままだったこと。ソフトウエアもハードウエアも、アップデートが必要だと感じさせる内容だった。

オプションレスの英国価格が19万ポンド(約3040万円)もするクルマとしては、少々残念といわざるを得ない。新システムの開発は鋭意進行中ということだが、DB11がフェイスリフトを受ける数か月後まで待つ必要があるという。

詳細画像はこちら
アストン マーティンDBX707(欧州仕様)

それ以外、インテリアの質感は素晴らしい。見た目も触感もゴージャスだし、シートは彫りがが深く、サポート性にも優れている。

乗り心地は、バネ下重量が軽くなったとはいえ、基本的には硬い。ひどく傷んだ路面を通過すると、落ち着きが失われてしまうようだった。

スーパーSUVと呼べる能力を獲得した、アストン マーティンDBX707。この手のクルマへ興味がなかったドライバーに対しても、充分な訴求力を備えていると思う。

オリジナルのDBXが持つ快適性やグランドツアラーとしての能力をほぼ維持しつつ、圧倒的な動的能力がプラスされている。現在のところ、備える能力の幅で、DBX707へ並ぶライバルSUVは存在しない。ゲイドンの偉業といってもいいだろう。

アストン マーティンDBX707(欧州仕様)のスペック

英国価格:19万ポンド(約3040万円)
全長:5039mm(標準DBX)
全幅:1998mm(標準DBX)
全高:1680mm(標準DBX)
最高速度:310km/h
0-100km/h加速:3.1秒
燃費:7.0km/L
CO2排出量:−
車両重量:2245kg
パワートレインV型8気筒3982ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:707ps/6000rpm
最大トルク:91.6kg-m/4500rpm
ギアボックス:9速デュアルクラッチ・オートマティック


GTの快適性+圧倒的な動力性能 アストン マーティンDBX707へ試乗 707psのSUV 後編