フランスを代表する映画監督フランソワトリュフォー。今年迎えた彼の生誕90周年を記念して、6月24日(金)より3週間限定で角川シネマ有楽町にて「生誕90周年上映 フランソワトリュフォーの冒険」が開催される。このたび特集上映の予告編が解禁された。

【写真を見る】今年、生誕90周年を迎えた映画監督フランソワ・トリュフォー

予告編は、初長編の『大人は判ってくれない』以降、俳優ジャンピエール・レオーが同じ主人公アントワーヌ・ドワネルを演じ続けた、全5作の“アントワーヌ・ドワネル”もの(アントワーヌ・ドワネルの冒険シリーズ)を中心とした構成となっている。

1959年から1979年までの20年という長期間にわたり、断続的に描かれ続けたドワネルはまさにトリュフォーの分身。すなわちこのシリーズはトリュフォー自身の物語とも言える。予告編でも、少年が青年へ、そして大人になって家庭を持ち…というドワネルの成長が映し出されており、人生の哀歓を感じさせる内容となっている。

また、特集上映の初日となる6月24日には、角川シネマ有楽町にて「オリジナルマッチ」を先着300名にプレゼントすることも決定(無くなり次第終了)。愛煙家でもあったトリュフォーへの敬意が込められたレトロなデザインのマッチは、コアなファンならずとも欲しくなってしまうはずだ。

今回の特集で上映されるのは、次の12本。いずれも映画史に燦然と輝く名作ばかり。4Kデジタルリマスター版になって甦る“アントワーヌ・ドワネル”ものをはじめ、初めてデジタルリマスター版の上映される作品も含んでおり、ぜひこの機会にスクリーンで堪能してほしい。

『大人は判ってくれない』(59)/4Kデジタルリマスター版

家庭にも学校にも居場所がなく、非行に走って感化院送りになる14歳の少年アントワーヌ・ドワネルを主人公としたトリュフォーの半自伝的作品。カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞し、本作によりトリュフォーは「ヌーヴェルヴァーグ」の旗手としてその名を知られることになる。

アントワーヌコレット〈二十歳の恋〉より(短編)』(62)/4Kデジタルリマスター版

全五話からなるオムニバス『二十歳の恋』(62)の一挿話として製作された短編で、「アントワーヌ・ドワネルもの」の二作目。レコード会社で働く17歳のドワネルが女子学生コレットに一目ぼれをする、不器用な恋物語が綴られる。

『夜霧の恋人たち』(68)/4Kデジタルリマスター版

「ドワネルもの」第三弾で、同連作初となるカラー映画。かつて少年だったドワネルも20代前半に。軍を除隊となった彼はさまざまな職に就くが、次々にクビになり、危険な恋にも手を出して…。前二作と比較して笑いの要素も強まり、映画作家トリュフォーの余裕と円熟味が感じられる一篇。

『家庭』(70)/4Kデジタルリマスター版

「ドワネルもの」第四弾。ドワネルは前作で婚約したクリスチーヌとついに結婚。子どもにも恵まれるが、仕事先で知り合った日本人女性に惹かれ、夫婦生活に危機が訪れてしまう。家庭を持っても青臭く失敗を繰り返すドワネルが、どこか憎めない魅力を放っている。

『逃げ去る恋』(79)/4Kデジタルリマスター版

「ドワネルもの」五作目にしてシリーズ完結編では、いよいよ中年にさしかかったアントワーヌ・ドワネルが描かれる。30代半ばとなり、印刷所に勤めるドワネルは自伝的な恋愛小説を出版。妻クリスチーヌと離婚する一方で、初恋のコレットと再会する。過去四作からの抜粋を回想場面として再利用するなど最終作にふさわしい一作。

『私のように美しい娘』(72)

アメリカ人作家ヘンリー・ファレルの同名小説を翻案した犯罪喜劇。若手の社会学者は、女性犯罪者の心理についての論文を執筆するため、殺人罪で服役中の女を取材するが、次第に彼女に惹かれてしまい…。男性社会に対する風刺的な視線が込められているコミカルな一作。

『恋のエチュード』(71)

『突然炎のごとく』と同じく、アンリピエール・ロシェの小説を原作に描いた三角関係の物語。イギリス人姉妹とフランス人青年による、ウェールズでのひと夏の恋物語が映し出される。トリュフォー自身、本作を「傑作」と考えていたといわれる。

『突然炎のごとく』(62)

アンリピエール・ロシェの小説を原案に映画化。出会ってすぐに意気投合し親友となったジュールとジムが、気まぐれで奔放な女カトリーヌと出会い、彼女に惹かれ、翻弄されていく。原題は「ジュールとジム」。

『あこがれ(短編)』(57)

批評家だった頃の短編習作『ある訪問』(54)に続いて制作した、トリュフォーの実質的な初監督作となる短編。南仏の田舎町を舞台に、美しい娘に夢中になった少年たちが、彼女の気を引くためあれこれいたずらを仕掛ける姿を描く。

『終電車』(80)

世界的にヒットを記録し、トリュフォーのフィルモグラフィーの中で最も成功を収めた一本。ナチス占領下のパリを舞台に、苦難にも負けずに奮闘する小劇団の女優を描く。セザール賞主要10部門で受賞、アカデミー外国語映画賞にもノミネートされた。

『野性の少年』(69)

フランス人医師ジャン・イタールが、19世紀初頭に発表した「アヴェロンの野生児」の記録をモノクロで描いたドラマ。フランス中部の森で獣のような生活をしていたところを発見された人間の少年が、イタール博士により愛情を注がれ教育されていく。トリュフォー自身がイタール博士役を演じている。

アデルの恋の物語』(75)

文豪ヴィクトル・ユゴーの次女アデルの狂気的な恋を描いた一作。新進女優だった当時20歳のイザベル・アジャーニは鬼気迫る演技を見せ、史上最年少でオスカー主演女優賞候補となるなど高く評価された。作品自体も批評家たちから絶賛され、国内外の映画賞を多数受賞している。

ちなみにApple TV「MOVIE WALKER FAVORITE」チャンネルでは、現在トリュフォー作品の一部が見放題で楽しめるだけでなく、本特集で上映される4Kタイトルも今後、随時追加される予定となっている。特集上映とあわせてこちらもぜひチェックしてみてほしい。

文/編集部

特集「生誕90周年上映 フランソワ・トリュフォーの冒険」で、“アントワーヌ・ドワネル”もの4Kデジタルリマスター版を上映!/[c] MK2