チェルシーの買収に、ニース(フランス1部)のオーナーを務めるジム・ラトクリフ氏が関心を示してるようだ。29日、イギリス紙『タイムズ』が報じた。

 チェルシーは2003年からロシアオーナーのロマン・アブラモヴィッチ氏によって所有されている。しかし、ロシアウクライナ情勢の影響に鑑み、同氏は今年3月2日にクラブ売却の意思を表明。以降、多数の投資家が同クラブの買収に関心を示してきた。

 すでに新規入札の期限は過ぎており、候補は3つのコンソーシアムに絞られていたが、ここにきて英国一の富豪とされるラトクリフ氏が参戦した模様。以前にも何度かチェルシーの買収が噂されてきたラトクリフ氏は、40億ポンド(約6540億円)相当のオファーを提示しているようだ。

 ラトクリフ氏は買収のため約25億ポンド(約4088億円)の評価額を満たした上で、スタジアムやチーム、インフラの整備など、10年間で17億5000万ポンド(約2861億円)をチェルシーに投資することを公約に掲げている。また、同氏がオーナーを務める多国籍化学企業『Ineos』は今週末にも資金を送り、取引を成立させることができる状態だという。

 現在69歳のラトクリフ氏は、1998年に『Ineos』を創業。同社は2017年11月にスイスローザンヌ・スポルト、2019年夏にニースのオーナーとなった。また、『Ineos』はロードレースの『イネオス・グレナディアス』に出資しているほか、F1ではメルセデスとプリンシパル・パートナーシップを結んでいる。

 ラトクリフ氏は『タイムズ』紙に対し、「我々は今朝、オファーを提出した。我々は唯一のイギリス人入札者だ。我々の動機は単に、ロンドンに非常に素晴らしいクラブを作ろうとするものである。我々は他の方法でお金を稼ぐため、利益追求の動機はない」とコメント。さらに、「欧州のサッカー界におけるロンドンの地位を考えると、バイエルンレアル・マドリードバルセロナのような、チャンピオンズリーグを一定期間支配するチームは存在しないし、存在したこともない。それが我々の野望であり、ロンドンにそのようなクラブを作ることだ」と野望を語っている。

 チェルシーの入札が成功した場合、ラトクリフ氏はニースやローザンヌを手放す必要に迫られるかもしれない。欧州サッカー連盟UEFA)は、同一人物をオーナーに持つ2クラブが同じ欧州大会に出場することを禁じているためだ。ただ、同氏は「その話をするのは時期尚早だ」としている。

 入札への参加は遅かったが、ラトクリフ氏はオファーが「無視される理由はない」とし、「もし我々が絶対的に優位に立たなければ、非常に驚くことになるだろう」と買収に自信をのぞかせる。また、同氏はチェルシーの売却プロセスに関わる政府関係者とも話をしたことを明かした。

 一方、ラトクリフ氏参戦の裏で、最終候補だった3つのコンソーシアムにも動きが見られている。『ウォール・ストリート・ジャーナル』は29日、ロサンゼルス・ドジャースの共同経営者であるトッド・ベーリー氏が、チェルシー買収の独占交渉に入ることを報道。また、イギリス紙『テレグラフ』のマット・ロウ記者は、スティーヴン・パリュウカ氏に優先交渉権が与えられず、マーティン・ブロートン氏も候補から外れた可能性を伝えている。

ニースを所有するラトクリフ氏 [写真]=Getty Images