トヨタの商用ライトバン「プロボックス」が発売から今年で20年。商用車のなかでも長寿モデルとなった理由を探っていくと、いかに“無敵”かがわかりました。

とにかく長寿! プロボックス

トヨタの商用バン「プロボックス」がデビューから20年目を迎えようとしています。同車は兄弟車「サクシード」と共に、2002(平成14)年7月に新型商用バンとして誕生しました。残念ながら「サクシード」は2020年度をもって生産終了となりましたが、「プロボックス」は、まだまだ現役。その長寿の理由を考えてみます。

まず、押さえておきたいのが、「プロボックス」の販売は、ものすごく堅調であるということです。

デビュー後からリーマンショックころまで、「プロボックス」と「サクシード」の兄弟車をあわせて毎年7~9万台を販売し、その後も年間5万台を堅持しています。「プロボックス」のみとなった2021年度でも、年間の販売は4万8000台。驚くばかりの成績です。

普通の乗用車であれば、古くは6年、最近はモデルライフが伸びていますが、それでも10年も経てば世代交代をするもの。しかし、「プロボックス」は、20年目となっても、いまだにモデルチェンジなしのままで販売が続いています。

もっとも、商用車のモデルライフは普通の乗用車より長いのが当たり前です。日産の商用バンである「AD」の現行モデルの登場は2006(平成18)年で、今年は16年目となります。トヨタの「ハイエース」も16年目ですし、タクシーに使われていたトヨタの「クラウンコンフォート」は22年のモデルライフを送りました。しかし、そんなご長寿さんばかりな商用モデルの中でも「プロボックス」の20年目はトップクラスになるでしょう。

では、なぜ「プロボックス」はフルモデルチェンジをしないのでしょうか?

一番の理由は、「売上が落ちていない」に違いありません。売れ続けているのですから、無駄にフルモデルチェンジをする必要なんてないわけです。そして、それだけ「プロボックス」が売れているのは、やはりニーズをしっかりと満たしているからではないでしょうか。

商用車に求められるのは、「コスパ」と「信頼・耐久性」、そして「実用性」に優れていることです。それぞれの要素で「プロボックス」の強味を探っていきましょう。

モデルチェンジは「必要ない」ワケ

プロボックス」の価格は、エンジン車で約150万円~、ハイブリッドでも約180万円~となっています。一方、トヨタで言えば「プリウス」や「アクア」にも商用ニーズがあり、それぞれの一番に安いグレードは法人向けがメインとなっています。「アクア」は先代にビジネスパッケージを用意していましたし、「プリウス」も先代モデルでは、旧型を法人向けに併売した歴史があります。

しかし、現在の「プリウス」のエントリーの価格は約260万円~ですし、「アクア」でも約200万円です。燃費の良いハイブリッドを「プロボックス」ならば約180万円から買えるのは、まさに破格。「コスパ」は最高です。

そして、「信頼・耐久性」という点では、トヨタに不安は一切ありません。「壊れない」ことにかけていえばトヨタは世界一と言っていいでしょう。

また、「プロボックス」はバンですから、荷室は当然のように広々としています。運転席まわりの装備と収納は、非常に凝ったもので、利便性は抜群。外身は変わらなくても中身は何度も改良が実施されていますから、今どきに必要な“自動ブレーキ”などの先進運転支援システムも完備。「実用性」も文句はありません。このように商用車に求められるニーズをしっかりと満たしているのです。

次に、売れ続ける理由はライバルの不在でしょう。商用バンは、社会の必需品として、トヨタや日産以外のメーカーも生産しましたが、ホンダ三菱自動車マツダは撤退。なかでもマツダは、「プロボックス」をOEM供給してもらって、「ファミリアバン」として販売しています。

つまるところ、現状で「プロボックス」のライバルなのは、日産の「AD」しかありません。また、日産「AD」もデビュー16年目ですから、フレッシュさという意味では「プロボックス」と変わりません。

プロボックス」は、商用車に求められるニーズを満たすうえ、しかもライバルがほとんどなし。だからこそ、売れ続けている。そして作り続けられているということでしょう。

プロボックス。外観は20年ほぼ変わっていない(画像:写真AC)。