世界に誇る日本のカルチャー、アニメ。しかし、その制作の裏側にはひと癖もふた癖もある人間たちの、それぞれの思いが交錯し......。
５月２０日（金）に公開される実写映画『ハケンアニメ！』は、そんな戦場のようなアニメ制作現場にスポットを当て、そのクールでの"覇権"を目指す熱血エンタテインメント。主演の吉岡里帆が演じるのは、現場の指揮官でありながらさまざまな事情に翻弄されつつ、最高の作品を生み出すために奮闘する新進気鋭の女性アニメーション監督、斎藤瞳。「瞳は等身大の私に近いと思います」。そう語る吉岡里帆に、本作に込めた思いを聞いた。
■「瞳のメガネ姿は家の中の私という感じ......（笑）」
――本作の舞台はアニメ制作現場ですが、オファーがきたときの心境は？
吉岡 やっぱり原作が非常に面白い作品なので、「怖い、できるかな」という心配はありました。『ハケンアニメ！』は、たくさんの言葉と長い時間が積み重なって最後にカタルシスがくる作品。これを２時間という映画サイズで伝えるのは、役者が説得力を相当持たせないと難しいと感じました。面白い作品に出演できることは、もちろんすごくうれしくて楽しみなのですが、どんな準備をして撮影を迎えればいいのか、心配がまず先に来てしまうタイプなんです。
――アニメーターという役柄は、準備もたくさん必要そうですね。
吉岡 はい。専門用語、専門知識が必要な作品なので、アニメーターの仕事とはどんなものなのか、どういう部署があって、部署同士ではどのような会話があるのか、そういうものから勉強しました。監督の仕事については鎌谷悠監督からいろいろとお話を聞いたりもしました。それと、私はあんまり絵が上手くないので、ペンタブでイラストを書く練習も。本編でフィーチャーされることはほとんどありませんでしたが（笑）。
――そのなかで演じた斎藤瞳監督の作品づくりに強いこだわりのある姿は、吉岡さんとリンクする部分が多い印象でした。
吉岡 映画、ドラマ、舞台など作品に携わるときに、沸々と根っこで燃えていて、「どうしたら面白くなるだろう」と常日頃から探求心を持っているところは共通していると思います。瞳みたいな性格の役柄をこれまで演じた経験はなかったのですが、私が世間に出してなかった元来の自分というか、本来の自分を投入できるキャラクターでもあるので、共感する部分は多かったです。
――久しぶりの"メガネ女子"役でもありました。すごく似合っていましたよ。
吉岡 確かに役では久しぶりでしたね。でもメガネは大好きで、普段からよくかけます。そこも普段どおり、家の中の私って感じです（笑）。
■「茅野愛衣さんの声を聞いて、これが"萌え"なのかと衝撃を受けた」
――吉岡さんはもともといろいろなアニメを見ているそうですが、アニメの原体験は？
吉岡 アニメは小さい頃から弟と一緒に観てきましたが、原体験でいうと『未来少年コナン』（１９７８年）でしょうか。父が好きだったのもあってＷＯＷＯＷで観ていました。それと『はいからさんが通る』（７８～７９年）や『セーラームーン』（９２～９７年）、『パワーパフ ガールズ』（２００１～０５年）も好きでした。あとは『おジャ魔女どれみ』（９９～０３年）も。すみません、たくさん挙げちゃって......（苦笑）。
――いえ、ありがとうございます！ 今もアニメは観ますか？
吉岡 最近だと『劇場版 呪術廻戦０』（２１年）は本当に面白かったですし、コロナでの療養中は『約束のネバーランド』（１９、２１年）を一気見しました。『ＮＡＲＵＴＯ －ナルト－』（０２～１７年）も大好きです。なんだか『少年ジャンプ』の作品ばかり挙げてしまって、集英社に合わせているみたいですが（笑）、面白いものは面白いからしかたないですよね。王道で面白いって最強ですもん。
――好きな声優さんはいますか？
吉岡 茅野愛衣さんです！ 大学生のときに深夜にテレビをつけていたらたまたま『さくら荘のペットな彼女』（１２～１３年）が流れていて、そこで聞いた茅野さん演じる（椎名）ましろちゃんの声が本当にかわいくて。こんな声の人がこの世にいるんだ、これが俗にいう〝萌え〟なのか、と衝撃を受けました。
――声優の演技と実写の役者の演技はやはり違う？
吉岡 全然違うものだと思います。声優さんの演技は専門技術という感じがします。そこにアニメーターさんの作画の技術が乗る。おととし、『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』を観に行ったのですが、その表情の作り方と声に涙が止まらなくなり、人間がもし実写でこの芝居をしたら、これだけの感動を生み出せたのかというと、ちょっと無理なんじゃないかな、なんて思ったりもして。そういう、実写では不可能なことをも可能にする力が、アニメにはあるんじゃないかと思います。
――実際にアニメを制作する作品に出演してみて、アニメ制作の大変さはどのあたりにあると思いましたか？
吉岡 以前、『空の青さを知る人よ』（１９年）という長井龍雪監督のアニメーション映画の声優をさせていただいたことがあって、完成後に大きな会場でアニメーターの方々と打ち上げというか、乾杯をする機会があったんです。そこで、それぞれの部署にご挨拶にいくたび、「私、このシーンの担当なんです」といった言葉をかけてくださるんです。あれだけの人がコツコツ書いたものが、あの一瞬のきらめきを作っている尊さを感じ、それが集まってひとつの大きな作品になると思うと、すごく感極まるものがありました。それを支えるアニメーターって本当にカッコイイなと思っていたので、あのときの思いをそのままぶつけられる作品に今回出会えて、本当にうれしかったです。
■吉岡里帆 Ｒｉｈｏ ＹＯＳＨＩＯＫＡ
１９９３年１月１５日生まれ、京都府出身。放送中のＮＨＫプレミアムドラマ『しずかちゃんとパパ』（ＢＳＰ・ＢＳ４Ｋ、毎週日曜２２：００～）、公開中の映画『ホリック ｘｘｘＨＯＬｉＣ』（松竹、アスミック・エース）、５月２０日（金）より公開の『ハケンアニメ！』（東映）に出演。『ハケンアニメ！』では主演の斎藤瞳役を務めている。そのほか、ＭＣを務めるラジオ『ＵＲ ＬＩＦＥＳＴＹＬＥ ＣＯＬＬＥＧＥ』（Ｊ－ＷＡＶＥ、毎週日曜１８：００～）、『奈良ふしぎ旅図鑑』（ＢＳ－ＴＢＳ、毎週水曜２０：５５～）が放送中。
公式Ｉｎｓｔａｇｒａｍ【@riho_yoshioka】
取材・文／武松佑季 撮影／矢西誠二
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