「まるで話題を提供しに来たみたい」そんな風に私が呆れていたのは火曜日、前日の午後、マドリッド市内のステーキレストラン、Leña(レニャ)でPSGの同僚、レアル・マドリー出身のアクラフと一緒にランチに来たエムバペが目撃され、スペインマスコミが1日中、パパラッチのように張り付いていたのを知った時のことでした。いやあ、確かに彼のチームはしばらく前にリーグ1優勝を決定。今週末と来週末にあと2つ試合あるとはいえ、すでにバケーション気分なのか、ポチェッティーノ監督が3日間、練習休みを与えたというのもわかるんですけどね。

昼食後はポスエロ・デ・アラルコン(マドリッド近郊)にあるアクラフの自宅を訪ね、夜は再び、マドリッドのセントロ(中心地区)にあるRestaurante Amazonico(レスタウランテ・アマソニコ/エスニック料理店)でやはり、元マドリーセルヒオ・ラモスやケイロル・ナバスらもご一緒して、ディナーをする予定だったものの、偶然にも同日、ワンダメトロポリターノで開かれたECA(欧州クラブ協会)の会合に合わせてセッティングされた夕食会とかぶることが発覚。結局、エムバペのグループは場所を変え、プエルタ・デ・アルカラ(アルカラ門)近くのレストランに来たPSGのアル・ヘライフィ会長が待ち構えていた記者たちに取り囲まれるというオチになっていましたが、まったく。

ええ、マドリー移籍があるにしろないにしろ、現在の契約が満了する6月末までは、クラブからも当人からも何の声明もないと言われていますからね。リーガも優勝チームが決まって早や1週間、待望のCL決勝は28日とまだ日にちがあるため、マスコミもネタに困っているんだと思いますが、実際、先週後半など、セバージョス、ビニシウス、クルトワら、マドリーの選手たちも何人か、カハ・マヒカのパルコ(ボックス席)でテニスのマドリッド・オープンを優雅に観戦していたぐらい。そんな光景を見ると、いよいよシーズンも終わりに近づいているのが感じられるんですが、とりあえず、今は先週末のリーガで他のマドリッド勢たちが目標を達成できたのか、お伝えしていくことにすると。

丁度、この35節はマドリーダービー2連発だったんですが、まず午後2時という早い時間に前座を務めたのは弟分たち。コリセウム・アルフォンソ・ペレスにヘタフェがラージョを迎えた一戦ではどちらもシュートを撃っていったものの、なかなか決まらず、いやあ、この日はイラオラ監督がセルジ・グアルディオラファルカオをベンチに置いて、エヌテカのfalso nueve(ファルソ・ヌエベ/シャドーCF)でスタートしたせいかもしれないんですけどね。前半にはイシがGKダビド・ソリアとぶつかり、肩を痛めてベベと交代するというアクシデントもあったんですが、0-0のまま、ハーフタイムを迎えます。

後半もベベのFKがバーを叩いたりしたものの、27分に入ったファルカオもこの日はゴールを挙げることはできず。ホームチームの方もアレニャのゴールがハンドで認められずと、そのまま試合はスコアレスドローで痛み分けに。まあ、これで2試合連続0-0となってしまったヘタフェですが、降格圏18位のマジョルカとの差は勝ち点5ありますからね。キケ・サンチェス・フローレス監督も「No nos vamos contentos pero sumamos un punto más y queda una jornada menos/ノー・ノス・バモス・コンテントス・ペロ・スマモス・ウン・プント・マス・イ・ケダ・ウナ・ホルナーダ・メノス(満足ではないが、勝ち点1を積み増したし、残りが1節減った)」と言っていたように、このまま差をキープしていれば、遅くとも週末のバルサ戦で、早ければ水曜のオサスナ戦でもう1つの弟分と肩を並べることができるかと。

そう、ヘタフェ戦で最後に必要だった勝ち点1を稼いだラージョはこれで1部残留が確定したんです!いやあ、来季はヨーロッパの大会を闊歩するかと思われたシーズン前半の快進撃の後、今年になって、リーガで13試合白星なしが続いていた時は私も心配していたんですけどね。「前半戦の貯金があったおかげで、nunca hemos estado cerca del descenso/ヌンカ・エモス・エスタードー・セルカ・デル・デセンソ(ウチは1度も降格圏に近づいたことはなかった)」というイラオラ監督の言葉通り、3試合を残して、目標を達成したとなれば、立派なもんじゃないですか。

ダービーだったおかげで、コリセウムに駆けつけることができたラージョファンたちと一緒にお祝いもできましたしね。今のところ、彼らは12位なんですが、この木曜のビジャレアル戦、週末のマジョルカ戦、最後のレバンテ戦で頑張れば、一桁順位の9位に上がることも可能かと。ええ、7位のコンフェレンスリーグ(UEFA第3の大会)出場権を争っているビジャレアルはともかく、残り2チームは対戦までに降格が決定しているかもしれませんしね。1つだけ、気になるのはイラオラ監督の契約延長交渉がまだ始まっていないことですが、昨季の1部昇格からの功績を考えると、きっとファンも彼が残ってくれることを強く願っているはずです。

そして夜はワンダへ兄貴分ダービーを見に行った私だったんですが、予定通り、前節で優勝を果たしたマドリーを入場時にアトレティコがPasillo de campeones/パシージョ・デ・カンペオネス(チャンピオンの花道)を作ってのお出迎えはなし。代わりにディズニーチャンネルスター・ウォーズ最新作プロモなのか、いきなりダース・ベイダーストームトルーパーピッチに出て来たのにはビックリしましたけどね。ビジターファン席でこれ見よがしに「Campeones, campepnes(カンペオネス/チャンピオンズ)」と歌うマドリーサポーターにpito(ピト/ブーング)を飛ばすだけでなく、つられて「Que la Fuerza te acompane/ケ・ラ・フエルサ・テ・アコンパーニェ(フォースが共にあらんことを)」と祈ってしまったアトレティコファンはかなりいたのでは?

だってえ、相手はすでに消化試合状態に入り、大規模ローテーションを実施。更にアップ中に先発予定だったマリアーノが痛みを訴え、急遽、CFがヨビッチに代わるというアクシデントに見舞われたとはいえ、シメオネ監督のチームはここ6試合、2点しか取っていないんですよ。5位のベティスに勝ち点3差と迫られ、CL出場権絶対維持に後がなくなったこの日の彼らは序盤から、高いプレスをかけて、敵を押し込んでいたんですが、お約束通り、前半8分のコレアのシュートは枠を外れてしまうことに。

ようやく滅多にない積極攻勢の成果があったのは36分になってからで、いえ、最初にクーニャがバジェホにエリア内で足を踏まれて倒れた時は審判が無慈悲にもスルー。プレー続行でボールが反対サイドに渡り、ロドリゴのシュートがGKオブラクにセーブされた後、選手たちが主審を取り囲んで猛抗議したところ…VAR(ビデオ審判)から、天の声が届いたんです!そこで主審がモニターを確認して、遅まきながら、PKを宣告。これをアトレティコ直近最後の2ゴールを決めているカラスコが沈め、ようやく先制点をゲットしたんですが、え?そんなの、人知を超えるremontada(レモンターダ/逆転劇)体質の相手を前にしたら、あってなきがごときだろうって?

いやあ、まだ先週水曜のCLマンチェスター・シティ戦2ndレグのインパクトが克明に残っていたのは誰もが同じだったか、後半もスタンドの熱心な応援は続き、アトレティコも珍しく、お馴染みの「リードしたら、un paso atras/ウン・パソ・アトラス(一歩後退)」態勢には入らなかったんですけどね。もう、ああまでシュートが入らないとこっちだって、泣きたくなりますよ。ええ、カラスコはポストに当ててしまうし、コレアと交代で入ったグリーズマンの2発は枠外へ、クーニャなんて、クルトワに代わって初先発したGKルニンとの1対1を止められているとなれば、もうどうしていいやら。

そうこうするうちにマドリーもビニシウス、バルベルデ、モドリッチ、メンディと主力を投入してくるし、オブラクがベルベルデの2発やアセンシオのFKをparadon(パラドン/スーパーセーブ)で防いでくれなければ、それこそどうなっていたか、わかりませんが、大丈夫。どうやら、奇跡のレモンターダには発動条件があるようで、うーん、多分、2点差にならないといけないとか、サンティアゴ・ベルナベウに限るとか、CL決勝トーナメント敗退寸前まで追い詰められないとダメとかだと思うんですけどね。

今季のリーガピチチ(得点王)、ほぼ間違いなしのベンゼマが、「シティ戦の疲れから回復していなかったから、出すつもりはなかった」(アンチェロッティ監督)という理由でベンチに座ったままだったおかげもあって、恐怖のロスタイム5分も「aguantamos con la portería a cero por suerte/アグアンタモス・コン・ラ・ポルテリア・ア・セロ・ポル・スエルテ(ラッキーにも無失点で耐えきった)」(オブラク)アトレティコが1-0で逃げ切れたから、助かったの何のって。

いやまあ、昨季優勝した彼らが、「El objetivo es claro, estos partidos nos sirven para tener ritmo/エル・オブヘティーボ・エス・クラーロ、エストス・パルティードス・ノス・シルベン・パラ・テネール・リトモ(目的ははっきりしている。これらの試合はリズムを保つ役に立つ)」(アンチェロッティ監督)という、CL決勝に備えた足慣らしをしているチーム相手に全精力を尽くして、ようやく勝てるというのもちょっと、悔しくはあるんですけどね。とはいえ、ホームでダービーに勝利するのはアンチェロッティ監督第1期だった2015年のビセンテ・カルデロン以来、オープンしてから3分1敗だったワンダでは初勝利、そしてマドリーに勝つこと自体、2018年のUEFAスーパーカップ以来となれば、ここは素直に喜んでおくべきかと。

おかげで5位ベティスとの差も勝ち点6に広がったんですが、これはミッドウィーク開催リーガ、火曜のバレンシア戦でペレグリーニ監督のチームが0-3と勝利。再び、3差に戻してきたため、水曜午後9時30分(日本時間翌午前4時30分)からのアウェイ、エルチェ戦でも「CL出場が確定するまで、no quitamos peso de encima/ノー・キタモス・ペソ・デ・エンシーマ(重荷は取り除けない)」(オブラク)のは変わらないんですけどね。相手はほぼ残留が確定しているとはいえ、何せ、今季は下位チームとの対戦でダ゛メダメだったアトレティコダービー後半にケガで交代したレイニウドは肉離れこそ免れたものの、出られませんし、マルコス・ジョレンテも累積警告で出場停止となるのはともかく、ゴール力を回復してくれないことには、エルチェに勝って、4位以上を確定するのは難しいかもしれません。

一方、「木曜は今日、あまりプレーしなかった選手が出て、日曜もそんな感じだ。Contra el Betis más o menos el equipo que va a jugar la final/コントラ・エル・ベティス・マス・オ・メノス・エル・エキポ・ケ・バ・ア・フガール・ラ・フィナル(ベティス戦ではほぼ決勝でプレーするチーム)」とアンチェロッティ監督が言っていたマドリーは木曜午後9時30分から、ホームでレバンテ戦。こちらの相手は19位で、ほんの少しでも残留の可能性がある限り、死に物狂いで立ち向かってくるでしょうからね。4年ぶりのCL決勝が控えているだけに、誰かがケガして、アラバ、セバージョス、マリアーノ、ベイルらのリハビリグループに加わらないことが、一番の課題になるんじゃないでしょうか。


【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
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