踏切の遮断桿の長さは現地条件により様々ですが、中には異様に長いものもあります。東京・東村山駅付近のそれは屈折式ではない1本棒で、長すぎて遮断時は地面にペチッとついてしまうほどです。

五差路を貫く踏切

踏切といえばたいてい、鉄道が1本の道路を横切っている様子を想像することでしょう。しかし、中には交差点内を貫通しているケースもあります。東村山駅東京都東村山市)の北側にある踏切です。

同踏切は、駅の東西を行き来できる道路と、西武鉄道新宿線国分寺線西武園線が交差しています。3路線が横切っていることもあり、踏切は頻繁に閉まります。加えて交差点は五差路であり、交通量はさほど多くないとはいえ、踏切が開いている時でも、四方八方からクルマや歩行者などが行き交います。

特に、しばらく足止めされた後に踏切が開くと、滞留していたクルマ・自転車歩行者が一斉に踏切へ進入します。入り乱れるような状態になるため、事故発生リスクが高いのです。こうした状況を解決すべく、東村山駅の高架化工事と同時に付近の線路も立体交差化されることになりました。計画は2012(平成24)年10月に始まり、工事は2024年度まで行われる予定です。

この踏切はまもなく姿を消すわけですが、同時にもうひとつ見納めになるものがあります。現在では数少なくなった、長い遮断桿(踏切のさお)です。同踏切には、西側2か所に設置されています。

長さはマンションの5階に相当!?

通常、幅が広い道路を遮る踏切では、中間を折り畳む「屈折式」と呼ばれる遮断桿が用いられます。遮断桿を長くすると遮断時、そのしなりによって路面を叩いてしまい、それは遮断桿を痛めるだけでなく、路面を痛めることにもなるからです。

また、地面を叩いた際に遮断桿が破損することも考えられます。周囲の歩行者などに危険が及ぶかもしれません。そうしたリスクを回避すべく、長い遮断桿は屈折式に順次、取り替えられていきました。2基の長い遮断桿は旧来型の生き残りなのです。

ではどのぐらい長いのかといえば、それは目測ながら踏切が開いている時に判断できます。この時、遮断桿は空に向かって伸びますが、それは目の前のマンションの5階にまで達するほど。マンションの階高をワンフロア3mと仮定し、遠近法などを考慮しながら類推すると、約10mあることになります。

これほど長いと、やはり遮断桿が下りてくる時には路面を叩きつけます。傍で耳をすませて観察すると、「ペチッ」という音が聞こえてきます。2022年3月下旬、付近では建設中の高架橋脚が、どっしりと路面を踏みしめていました。

高架化工事が進む東村山駅。話題にする踏切は、同駅の北側に位置する(2021年10月、乗りものニュース編集部撮影)。