小学生の娘が作った戦車のプラモデルが、大人顔負けのクオリティー! しかし、雑誌の賞を取るほどの腕前がありながら、学校では評価されず不遇に扱われている――。作品のすばらしさと、やるせなさの入り交じるツイートが話題を呼んでいます。編集部は投稿主を取材し、親としての思いを聞きました。

【画像】作品を別の角度から見る

 やるせないほうの話は後に譲るとして、まず見てほしいのが娘さんの作品「終戦と新たな命」。古びた戦車の荷台にハトが巣作りする光景は、タイトル通り戦争から平和への移ろいを感じさせます。このテーマ性や汚し塗装等の表現力がすばらしく、模型専門誌『月刊アーマーモリング』ではU-18賞に輝いています。

 女の子の母親は、三重県で喫茶とカレープラモデル工房のお店「ホビーカフェガイア」を営む「店長」さんです。自身もプラモデル工房担当の夫も、息子も娘も全員模型が趣味だそうです。

 そんな模型一家として、店長さんは模型が子どもにとっての一般的な趣味として理解されづらいことに悩んでいる様子。息子さんが小学生のとき、作文に「プロモデラーになりたい」と書いたときは、教師から「そんな職業は知らない、書き直せ」とぞんざいな扱いを受けたといいます。

 現在小学4年生の娘さんも、幾度の受賞歴がありながら学級のお便りにも触れてもらえず、全校集会では「珍しい趣味の子」として独り起立させられたのだそうです。

 店長さんは「模型はそもそも、子どもにとって奇特な趣味ではない」「なんとか不遇を改善したい」と嘆きつつも、「模型に親しむ人、模型が好きな子どもたちを増やしていくことが、結果的に我が子の幸せにつながる」と、今後の尽力を決意。ツイートは娘さんの作品のクオリティーもあいまって広く拡散され、多くの人の心を打ちました。

 リプライでは「教師の視野が狭い」「その子らしさを受け止めて伸ばせる人であってほしい」など、学校への苦言を呈する人が多数。また、「自分もガンプラ好きが高じて自動車メーカーのモデラーになった」「教師に恵まれないのは残念だが、それ以上に親が親身になり支えてくれるのがとても幸せ」と、娘さんを励ます声もみられます。

 編集部は店長さんに、娘さんの作品や、模型を通じた親子の交流など、詳しい話を聞きました。

―― お子さんはいつごろから、何がきっかけで模型好きになったのでしょうか?

店長さん:息子は幼少期から、玩具などの分解が好きな子でした。「組み立てる」とは真逆ですが、「モノは部品で構成されている」と認識する点では同じ行為だったのかもしれません。

 プラモデルそのものの初体験は小学3年生当時、700分の1スケールの艦船模型を組み立てたときですね。それはかつて船舶運行教育に携わっていた父方の祖父への「敬老の日」にプレゼントし、たいそう喜ばれました。翌年にも「しんかい6500」を作り、部分塗装にも挑戦してプレゼントしたところまた喜ばれて、そこから本格的に模型を始めました。

 8つ下の娘は、そんな彼(と、彼に模型を手ほどきした現在の主人)を見て育ったため、3歳の頃には模型用ニッパーを握り、ガンプラを組み立てて遊んでいました。

―― 娘さんは「終戦と新たな命」のアイデアを、どのように思い付いたのでしょうか?

店長さん:もともとは模型店の店頭でキットの箱絵を見て「面白い形のがある!」と飛びついて作り始めたもので、最初からあのテーマだったわけでないのです。娘は車体の組み立てが進むにつれて、何かしらの物足りなさを感じたようで、まず荷台部分に落ち葉を散らしていました。

 そんな折、ウクライナの模型メーカー「ミニアート」から同スケールの「ハト」がリリースされまして。それを知った本人が「ハトかわいい!」と飛びつき、組み合わせてみたら全てがしっくり来て、ついに作品イメージが固まった――というところですね。

―― 娘さんは作品にどのような工夫を施していましたか

店長さん:『月刊アーマーモリング』に応募した際、本人が添えた説明文をもって回答とさせてください。

今回のせん車で工夫したのは木の板です。よごしで、スモークでカビ、暗い青でよごれ、その上に茶色で木の色を出して、さい後に白で古びた感じを出します。スモークはタミヤのアクリル、暗い青はクレオスのフィルタリキッド・シェーブルー、茶色はクレオスのウェザリングカラーステイブラウン、白はクレオスのウェザリングカラーマルチホワイトです。スモークとマルチホワイトは、ぼかしはけという筆でたたきぼかしでよごしました。しあげにスミ入れをしました。スミ入れは、タミヤエナメルのダークブラウンです、あと、工夫したのはリタイの土汚れです。タミヤテクスチャペイントブラウンを使ってよごしました。(原文ママ

―― 模型好きの子どもや、その親に伝えたいことはありますか?

店長さん:お子さんたちには、年齢や経験に関係なく、作りたいと思ったものをとにかく作ってほしいです。もちろん難易度はいろいろありますが、適切な方法と道具、モチベーションさえあればどうにでもなりますので、保護者のかたも「それはやめてこっちを作れば?」といったサジェストは控えて、お子さんの「作りたい」「作ってみたい」を尊重していただきたいです。

 もし道具や方法に自信がないようであれば、現在は全国各地に、私が営んでいるような模型作業のための席と道具、そしてノウハウを持ったかたがいる模型製作スペース店が増えておりますので、そういったサービスを活用される策があることも、お子さまの「楽しく作る」を実現するために知っておいていただきたいです。

―― 店長さん自身がお子さまに対して行った取り組みについて教えてください

店長さん:振り返ってみると、子どもには展示会などの模型作品はもちろん、映画やアニメなどの映像作品、絵画、山や海などの自然風景、街なかの建物や車両など、とにかくいろいろなものを見せ、自然と湧いてきた質問にも可能な限り真摯(しんし)に答えてきました。おかげで世界と認識が広がって、現在の作品はもちろん、普段の勉学の成績にもつながっていると思っています。

 ですので、1つ前の質問へのお答えにもなりますが、ぜひ保護者のかたはお子さんの世界をどんどん広げてあげていただきたいです。特に低年齢の時は、保護者が連れて行って見せる世界が子どものすべてですので、要不要のふるいにかけず幅広く見せてあげれば、ぐんぐんと伸びるのではないでしょうか。

画像提供・協力:店長さん

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