(羽田 真代:在韓ビジネスライター)

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 韓国人の多くが利用するネイバーブログを見ると、「日本旅行、日本観光ビザ、早ければ6月にオープン 朝日新聞」「6月から行ける日本旅行」「6月以降、日本旅行可能、入国コロナ検査簡素化!!」など、日本に旅行できることを喜ぶ投稿が増えている。

 岸田政権が、早ければ6月1日から入国・帰国者数の上限を1万人程度から2万人程度に引き上げることを明らかにしたからだ。入国者の増加に伴い、到着時の新型コロナウイルス検査も、全員検査から陰性証明やワクチン接種証明を提示すれば免除する方向で調整が進められている。

 もっとも、入国者数を引き上げたところで、韓国人が自由に日本を旅行できるわけではない。

 これまで通り、当面は商用・就労等の目的がある者や、日本国内に受け入れ責任者がいることが入国対象の条件だ。日本政府は団体ツアーの実証実験を経て徐々に枠を広げていく方針を示しているが、6月中に日韓間を自由に行き来できることはないだろう。

 日本行きを喜び、ブログを掲載した韓国人たちは早とちりしている。

 彼らの誤解を招いたのは、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が日本側に羽田・金浦間の航空路線を再開させるよう要請したり、観光ビザ免除措置の再開を求めたりしていることも影響している。

 加えて、エアプサンでは5月10日から13日まで、日本行きの航空券を片道100ウォン(約10円)で販売するというイベントを実施した。旅行会社がこのような取り組みを行えば、日本に行きたい韓国人が期待に胸を膨らませて、日本旅行を喜ぶブログを書くのも無理はないだろう。

 エアプサンのホームページにアクセスしてみたところ、12日現在で仁川・成田間が8万6600ウォン(約8750円/搭乗代100ウォン、空港利用料2万8000ウォン、燃油サーチャージ代5万8500ウォン)で販売されていた。

 片道9000円弱で日本に行けるのだから、2年もの間、日本行きを我慢していた韓国人にとってはお値打ち価格だ。と言っても、この価格は日本製品不買運動時に韓国の航空会社が安売りしていた時と大差がない。そのため、新型コロナウイルスが流行する前に戻ったようなものだ。

テレビを中心に韓国ネタが増える既視感

 一方、日本では東京・新大久保や、大阪・鶴橋で若者が賑わっている。少し前に、筆者の知人が鶴橋を訪問したので様子を聞いたが、人気店の周辺には人が密集していたという。行列ができている店舗もあったそうだ。

 大阪市生野区にある「大阪生野コリアンタウン」では、「JEJUマルシェ2022 in 大阪コリアタウン」という、済州島の名物メニューや特産品のワークショップが楽しめるイベントが開催されている。

 済州島については後述するが、同島は日本人観光客を呼び戻そうと動き始めている。大阪生野コリアンタウンでのこのイベント開催も、将来の観光客獲得を狙った取り組みだろう。

 日本のメディア、とりわけテレビ局を中心に、ほぼ毎日と言っていいほど韓国グルメやコスメを特集する番組が放送されている。グルメだけでなく、BTS(防弾少年団)やTWICEといった人気アイドルグループの動向を取り上げるテレビ局も多い。

 このようなメディアに触発されてか、日本の若者の間では韓国グルメを好んで食べたり、コスメを使用したりする若者も少なくない。

 筆者の母親から聞いた話によると、近所に住んでいる小学生がBTSの曲でダンスを踊ったり、「イカゲームネットフリックスドラマ)」で話題になった「ムグンファコッチ ピオッスムニダ(だるまさんがころんだの意)」をしたりして時々遊んでいるそうだ。

 筆者の知人の中には、「自由に海外に行き来できるようになったら、韓国に行くから案内して」と連絡してくる者も多い。

 韓国政府は6月1日から、海外からの観光ビザ無し入国を済州島限定で再開すると発表した。「日本は韓国に対するビザ免除を再開していない」という理由から対象国に含まれていない。しかし、岸田政権が韓国人に対する観光ビザ無しの日本入国を許可すれば、日本も対象国家に含まれることになるだろう。

 日本を好きな韓国人、韓国を好きな日本人は、近いうちに互いの国に旅行できることを信じて心を躍らせている。

韓国のテレビ番組が報じた富士山大噴火の中身

 日本の識者の中には、「韓国人に対するビザをこのまま制限しておいた方がいい」と主張する人がいる。

 慰安婦問題、徴用工問題、竹島問題、レーダー照射問題、文喜相(ムン・ヒサン)元韓国国会議長の天皇謝罪発言など、挙げればきりがないほどに日韓間で解決していない問題がたくさんあるからだ。

 加えて、尹政権からは輸出管理の撤廃や、スワップ協定の再開を求める声が出ていることもあり、韓国と今以上に関わることを危惧する日本人もいる。

 スワップに至っては、韓国の専門家から「米国と日本を合わせて1000億ドル(約13兆円)程度を確保しなければならない」という指摘が出ている。日韓間のスワップ協定は日本にとってメリットがない。そのため、現状維持が得策だと考えるのも当然だろう。

 一方、韓国は日本と少し事情が異なり、メディアに踊らされて日本との関わりを避けようとする人がいる。

 冒頭に述べたブログに、「日本旅行は大好きだけど、先週『それが知りたい』を見て怖くなった」とコメントする者がいた。『それが知りたい』は、韓国のテレビ局SBSが放送しているテレビ番組だ。

 調べたところ、5月7日に「予告された災い 富士山は噴火するのか」が放送されていた。

「今年中に富士山が噴火しても全くおかしくない」「噴火すれば首都・東京が影響を受けるだけでなく、日本国内にある108の活火山すべてが影響を受ける可能性がある」「福井県小浜市で普段見ないダイオウイカが水揚げされた。富士山内の洞窟の氷が例年以上に溶けている」など、いくつか例を挙げて、これらは不吉な前兆だと視聴者の不安を煽っていた。

 この放送を見て「日本は怖い」と考え、切望していた日本行きを躊躇する韓国人がいたということだ。

 そもそも、近年発生した韓国人の日本憎悪は、韓国政府やメディアが「日本の輸出“規制”は徴用工判決に対する報復だ」「日本が歪曲・捏造した歴史教科書を作った」など、事実を歪曲して宣伝したことが要因の一つだ。日本のメディアが毎日、韓国のグルメやコスメを特集するのと全く逆だ。

 日本政府が入国規制を緩和すれば、両国の親韓・親日派と、嫌韓・嫌日派の葛藤が激化することは間違いない。その時に、両国の首脳は、どのような打開策を講じるだろうか。

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