ロシア軍ウクライナ侵攻当初は、ロシア空軍戦闘機等(戦闘機攻撃機)による爆撃や対地攻撃の映像がテレビに流れていた。

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 ウクライナ空軍戦闘機も応戦していた。ウォロディミル・ゼレンスキー大統領米国大統領戦闘機の供与を依頼していたが、現在までに戦闘機の供与はない。

 その代わり、米国は、スイッチブレードフェニックスゴーストなどの自爆型無人機を供与した。

 ゼレンスキー大統領は最近では、戦闘機を強く要求していないようだ。

 その理由は、ウクライナ軍が自爆型無人機や無人攻撃を多用し、ロシア軍機甲戦力を破壊できているからであろう。

 一方、ロシア軍戦闘機の活動も低調になり、無人機の活動が活発になっている兆候がある。

 戦史から見て、これまで戦闘機が航空優勢を確保してきた。航空優勢がなければ、地上軍も艦艇も、戦闘機による攻撃に撃破されてしまっていた。

 それが今、航空優勢を獲得していなくても、敵の機甲部隊や兵站部隊を狙って攻撃できているのだ。

 戦場の様相がこれまでと、大きく変化しているようだ。

 ロシア軍の防空システム戦闘機等、ヘリ、無人機および艦艇の損失の推移を分析し、ウクライナでの国土内および海上での航空戦闘の実態、そしてその実態から今後予想される航空作戦について考察する。

1.防空システムの損失

 まず初めに、防空システムの損失を最初に列挙したのには、理由がある。

 現代戦では、防空システムが存在するのかどうかで、戦闘機等やヘリの戦い方が全く異なる。

 端的に言えば、防空システム上空を飛行すれば、撃墜される可能性があり、多くの制約を受けるということだ。

 防空システムの損失は、地上軍の攻勢作戦に連動して活動するため、発見されて損失が増加する。

 ロシア軍の防空システムミサイルとその発射機、レーダー、指揮統制装置を含む)の損失は、侵攻開始から5月11日までの間に、87基であった。

 損失の推移を見ると、侵攻2週目が最も多く、全域で最大の攻勢をかけた週(3月17日の週)が2番目に多い。

 次に、東部・南部の攻勢、ロシア軍再編成後の攻勢以降の週に損失が多い。

 損耗は合計で約8%である。投入された第一線で戦闘する戦車・装甲車・火砲等の損耗17~38%に比べると、8%の損耗ははるかに少ないと言える。

 つまり、防空システムは敵に発見されずに残存している可能性が高いということだ。

 第一線から離隔していて発見されにくく、またウクライナ空軍の戦闘機数が少ないこともあり、残存しているようだ。

 防空システムが残存するということは、戦闘機等やヘリが飛行すれば、撃墜される可能性が高いということである。

防空システムの損失

 ウクライナ軍の防空ミサイルシステムも、ロシア軍防空システムと同様の理由により、残存しているだろう。

 つまり、両軍とも防空システムが残存していて、敵機が飛来すれば防空ミサイルを発射し撃墜することができる。

 そのことにより、両軍の戦闘機・ヘリの活動が、制限されたのだと考える。

2.ロシア軍戦闘機等の損失

 ロシア軍戦闘機等は、侵攻からの5週間には損失が多く、毎週約20~30機であった。

 映像などから判断すると、戦闘機等は作戦当初、防空兵器が残存していたにもかかわらず攻勢に出たために、損失も多かった。

 空軍機の活動は、本来は侵攻作戦を成功させるために、大々的に攻勢に出たときに、活動も活発化し、損失も当然増加するはずだ。

 だが、今回、空軍機の損失は攻勢に出る・出ないに関係してはいないようだ。

 4月以降の損失は、徐々に減少傾向にあり、特に4月21日の週以降は、再編成後に総攻撃を開始したにもかかわらず、損害が減少しているからだ。

 侵攻開始から5週目までは、ロシア軍戦闘機等の損失は多く、活動は活発であった。

 だが、その後損失が徐々に少なくなり、活動は低調になった。それはなぜか。

 侵攻当初には、航空攻撃を果敢に実施したことで、防空ミサイルから撃墜された戦闘機等が多かった。

 侵攻6週目からは、防空ミサイルの脅威を深刻に受け止めて、その被害を避け、活動を制限したため、損失が減少したのだと考える。

ロシア軍戦闘機等の損失

3.ロシア軍ヘリの損失

 ロシア軍ヘリは、侵攻の1~2週間に80機という最も多い損失を出した。

 ウクライナの首都キーウ北部の空港に対し、空挺兵が輸送機から落下傘で降下して攻撃する空挺作戦や特殊部隊がヘリで降着して攻撃するヘリボーン作戦で、多くのヘリが使用され、この時に多くの被害が出た。

 次には、ウクライナ全域で攻勢をかけた3月17日の週に40機という2番目に近い損害を出した。

 ヘリは攻勢作戦の支援に運用されたために、2番目に多い損失が出た。それ以降は、5から10機で、あるいは0機で、活動は低調であったようだ。

 特に、攻撃ヘリは、地上軍の作戦に連携して、またヘリボーン作戦に運用されているはずだ。

 侵攻開始の2週間と全域攻勢の1週間に運用され、多くの損失が出たことは、戦術的には当然のことである。

 ところが、これらの作戦において、ウクライナ軍の防空ミサイル、特に携帯対空ミサイルによる大きな損害を出してしまった。

 そして、4月21日からの再編成後の攻勢作戦では、運用される機会が少なくなり被害が少なくなった。

ロシア軍ヘリの損失

4.ロシア軍無人機の損失

 無人機の損失の推移は、戦闘機等やヘリのものと大きく異なっている。

 侵攻当初は被害が少なく、全面攻勢の時には2週間にわたり、それぞれ約35機の損失が出た。

 キーウ正面からの撤退もあり、活動は低調で、損失も少なかった。その後の再編成後の攻勢では、無人機の運用が多くなり、損害も増加した。

 無人機の損失は、戦闘機等やヘリの損失が多きときは少なく、戦闘機やヘリの損失が少なくなった時には増加している。

 無人機の損失の推移は、戦闘機等と真逆になっているのだ。

ロシア軍無人機の損失

5.ロシア軍艦艇の損失

 ウクライナ軍の反攻作戦で新たに注目されるのが、クリミア半島の奪回とアゾフ海と黒海の航行の自由を獲得することだ。

 そのためには、黒海艦隊の艦艇を撃破することが必要になる。

 特に、大型艦のフリゲート艦4隻、揚陸艦3~5隻および500トンクラスミサイル艇約20隻だ。

 ウクライナ軍は、陸上作戦を実施しつつ、海上の艦艇を撃破することも並行して実施している。

 これまで、ロシア黒海艦隊の12隻(旗艦モスクワ1隻、アリゲーター揚陸艦1隻を含む)が、ウクライナ軍の無人攻撃機対艦ミサイルによって、撃破されている。

 現在もロシア軍の艦艇が、1週間に1~2隻撃破されている。

 今後、黒海で活動する艦艇、あるいはセバストポリ港に停泊する艦艇を攻撃するには、ウクライナの基地から300~400キロの射程が必要になる。

 対艦ミサイルでは届かない距離だ。

 したがって、バイラクタル無人攻撃機フェニックスゴースト自爆型無人機が海上作戦の命運を分けることになるであろう。

 セバストポリ港も射程に入ることで、この港への攻撃の可能性も出てくる。

ロシア艦艇艇の損失

6.今後は無人機主体の航空作戦に

 今回のウクライナ上空での空中作戦では、戦闘機ステルス性能がない)が十分に能力を発揮ができなかった。

 性能が良い大型の地対空ミサイルや携帯対空ミサイルが戦場に残存していることで、戦闘機やヘリは自由に飛行することができなかったからだ。

 自由に飛行できる戦闘機は、ステルス性能を保有する戦闘機だけになった。

 なぜか不思議なのだが、ロシア空軍はステルス戦闘機を投入していない。

 ウクライナ軍も、ロシア軍は侵攻1か月後には防空ミサイルが存在する空域では、戦闘機が自由に活動できないことに気づいた。

 一方で、特にウクライナは、米国から供与された自爆型無人機戦闘機と同じ、いやそれ以上に能力を発揮することに気づいた。

 さらに、戦闘機が撃墜されてパイロットが戦死することもない。価格も大幅に安価である。

 これからの航空作戦は、戦闘機等への期待は少なくなり、逆に小型から大型の各種能力を持った攻撃型無人機、自爆型無人機に大きな期待が寄せられ、主役の座を占めることになろう。

 海上を移動する艦艇への攻撃、敵基地攻撃にも最適の兵器になるだろう。

 特に、敵基地を攻撃する場合、無人機が敵基地に接近して重要目標を捜索し、その後ミサイルを発見して、直ちに攻撃することができる。

 日本には、今後、最も必要となる兵器だ。

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