「カメがカメの飛行機を止めた!」このようなニュースが流れた数か月後の2022年4月、成田空港が滑走路のカメ対策に乗り出しました。ここまで躍起になっているのは、「飛行機vs生物」の長い戦いの歴史があります。

障害物を発見したら発着ストップ

成田空港2022年4月より、滑走路そばの調整池に罠を設置する取り組みが始まりました。航空事故を防ぐため、池のカメを捕獲する作戦の一環です。

同空港では2021年9月に、滑走路を這っていたカメが、ANA全日空)の運航する“ウミガメデザイン”が特徴の超大型機、エアバスA380フライングホヌ」などを止め、「カメがカメを止めた」と話題になりました。このカメの“誤進入”は、実はかなり危険で、空港関係者にとってジレンマを抱えた話なのです。

一般的にどの空港も、滑走路はいつもキレイに“掃除”されています。石や航空機から落ちた部品などは、たとえ小さくても、タイヤパンクさせたり、エンジンに飛び込めばブレード(羽根)を傷つけて振動を引き起こしたりする可能性があり、事故につながりかねません。昨年カメが「フライングホヌ」などの出発機を遅らせた際には、発着機の安全を確保すべく、捕獲するために滑走を閉鎖し、5便に最大15分の影響が出たということです。

こういった「FOD(障害物による損傷、Foreign Object Damage)」と呼ばれる異常を防ぐため、パイロットは滑走路で異物を見つけると管制塔に連絡し、空港側はすぐに発着を止めて片付けます。「フライングホヌ」の事案でも、体長約30cmあったカメが轢かれ、砕けた硬い甲羅が滑走路に残ったままなら、そのあとに発着する飛行機が、タイヤパンクエンジン吸い込みといったトラブルを招きかねないところでした。

成田空港のカメは調整池から なぜなくせないの?

冒頭の「カメの飛行機とカメが出会うとは思わなかった」アクシデントは、ほのぼのした印象を与えたものでしたが、実はカメがやってきたと思われる成田空港A滑走路脇の池には、数百匹のカメが繁殖していたということです。

では、その原因たる池をなくせばいいのではと思いますが、きちんとした役割を持っているので、それもできそうにありません。

成田空港は、周辺の地形を見ても分かる通り、起伏のある土地に建設されました。多量の雨は排水させないと地盤を弱めてしまいます。そのため空港内から近隣の河川に流す水の量を調整するのが、滑走路脇の池です。その広さは約10ha(ヘクタール)、深さも3mあり、一般の人は近づくことができません。

「ホヌ」を止めたカメは、ペットなどで飼われるアカミミガメ、通称「ミドリガメ」だったといいます。池につながる放水用の川をさかのぼって、カメたちは空港の外からやってきて数を増やしたのかもしれません。

こういった空港の運用に影響を及ぼす動物は、カメだけではありません。カメはむしろ少数派です。

飛行機の運航に影響を及ぼしてきた動物たち

空港は、滑走路のまわりの草むらなどに鳥が餌を求めて集まってくることが、やっかいな問題として知られています。鳥と飛行機の衝突はいわゆる「バードストライク」として知られている現象で、とくに海上にある空港で多く発生するアクシデントです。

旅客機バードストライクに遭遇しても大丈夫なように設計されており、ほとんどは遭遇後も無事に着陸しているものの、結果的にフライトに致命的な影響を来してしまったケースもゼロではありません。

たとえば、2009年の「ハドソン川の奇跡」と称賛された、USエアウェイズ1549便の不時着水事故も、ロング・アイランド湾内にあるラガーディア空港を離陸した直後、鳥の群れに突っ込んでしまった結果、両エンジンが停止してしまったことが発端でした。

FODとして、飛行機にぶつかってしまう生き物のなかには、少しびっくりするようなものもあります。

関西空港1995年7月、着陸機がバードストライクにあったと認識し調査したところ、エンジンに吸い込まれたのは鳥ではなく「大量のバッタ」だったことがありました。このとき、滑走路周辺で推定100万匹が生息しているのが見つかったそうで、天敵のヘビなどが人工島にいなかったために繁殖したようです。

もしかすると、動物や虫にとって、空港は暮らしやすいのかもしれません。

カメに話を戻すと、成田空港を運営するNAA成田国際空港)は、滑走路周辺にU字溝を設けて侵入を防ぎ、前出の通り100個以上の罠も仕掛けるということです。ただ、カメの方も、決して飛行機を止めようと思って生活しているわけではないことを付け加えておきます。

※誤字を修正しました(5月17日17時25分)。

ANAのA380「フライングホヌ」。成田~ホノルル線の専用機で、2022年7月から同路線に再投入される方針だ(乗りものニュース編集部撮影)。