ネット上で売買される「使用済みマスク」問題

 コロナ禍で生活の必需品となったマスク。だが、SNSなどのインターネット上で「使用済みマスク」が売買されていることが、テレビや新聞などの大手メディアでも次々と問題視された。SNSで検索してみると、報道された後にもかかわらず、マスク1枚500円前後で購入者を募る投稿が見られる。

 今回は、「自分が着用していた」というマスクネットで販売していたことがある20代の女性に話を聞いてみたが……。今も売買されているのはなぜなのか。

◆あくまで“お手軽”感覚

  東京都の「東京都青少年の健全な育成に関する条例」によれば、青少年から着用済み下着等を買ったり、売却の依頼を受けたり、売買の仲介をしたり、上記の行為が行われることを知りながら、(当該行為のための)場所を提供することは禁止されており、罰金が科せられるという。

 一方、使用済みマスクについては、対策が追いついていない状況にあるようだ。だが、そもそも新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から見ても使用済みマスクには衛生上のリスクが伴う。それどころか、個人情報が相手に知られてしまい、トラブルに巻き込まれる可能性もあるだろう。

 しかし、ユリカさん(仮名・20代)は、使用済みマスクの「販売者」であるにもかかわらず、あっけらかんと言う。

「こちらの情報が相手に伝わることは、犯罪をしていない限りはあり得ないかなって。ネット上で匿名でやれるし、バレないと思って」(ユリカさん、以下同)

◆実際に着用しているわけではなかった

 ユリカさんの場合は1枚1000円程度で売り、「何枚もまとめ買いする人や、定期的に購入する人のおかげで月数万円を稼いだ」と明かす。だが、マスクを実際に着用しているかといえば、そうではないという。

「最初は1日着用したものを売ってましたが、リップとかグロスが少しついていて、いい匂いのする化粧水をシュッとすれば、はたから見れば全然わからない。別に、誰がいつどのくらい付けていたのかなんて証明できないですから」

 ユリカさんは、もちろん「若い女性が着用したマスク」というだけでは、実際に購入される機会は少なくなると話す。口紅やファンデーションの跡が残っており、いかにも「女性が使っていた」というふうな演出を加える。もしくは証明のために「自身の顔写真付き」にすれば、販売価格は数倍に跳ね上がるという……。

◆顔写真はアプリで加工したもの

 リスクを負えばそれだけ儲かる、という話にも思えるが、「そんな危険は橋は渡らない」とユリカさん。

「顔写真なんか送ったら、絶対に悪用されるに決まってる。相手は、ネットで使用済みマスクを買うような変態ですよ。だから、顔写真を送るときは、アプリで別人に加工した自分の写真を送ってます。つまり、実在しない女性の顔ですけど、元は自分の顔だから。定期的に買ってくれる人にはその都度、加工した写真を送ってリアル感を出していました」

◆「売られているものは偽物だらけでしょう」

 前述の通り「使用済みマスク」販売について、多くのマスコミが報じた。しかしその結果、「使用済みマスクが買えるのか」と、そうした趣味嗜好のある人に周知してしまい、「偽の使用済みマスク」販売者を後押ししてしまった側面もあると指摘するのは、成人向けグッズ販売店経営者のタカユキさん(仮名)だ。

 若い女性が下着や制服、衣服を販売するということは、いつの時代にもあった。とはいえ、実はどのタイミングにおいても市場は「偽物だらけ」だったという。

「いわゆる『ブルセラ全盛期には、女子高生が店にやってきて対面で下着を売っていくこともあり、その場で写真を撮られたり、女性のリスクそれなりにありました。

 一方、今の使用済みマスク販売は手軽で安心感があるのかもしれません。実際、売られているものは偽物だらけでしょうブルセラ全盛期でも、女の子たちが1枚500円程度の下着を彼氏にはかせて持ってくるようなケースもありましたから」(タカユキさん)

 今後、使用済みマスク販売がエスカレートすれば、危険な目に遭遇してしまう若い女性が出てこないとも言えず、しっかり議論されなければならない問題である。

<取材・文/山口準>

【山口準】
新聞週刊誌、実話誌、テレビなどで経験を積んだ記者。社会問題ニュースの裏側などをネットメディアに寄稿する。

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