
職場恋愛やイケナイ関係など、会社ではさまざまな恋愛模様が日々繰り広げられていますが、時には思わぬ人から恐ろしい好意を寄せられ、背筋が寒くなってしまうこともあります。
※イメージです(以下、同じ)
今回、取材に協力してくれた石田ちほさん(仮名・33)は社交的で明るい性格ゆえ、常連客のおじいさんと距離が縮まりすぎて怖い体験をしてしまいました。
◆勤務先のゲーセンで、高齢者の常連客たちの人気者に
シングルマザーのちほさんは数年前、ショッピングモール内にできるゲームセンターのオープニングスタッフに応募しました。人と話すことが好きなちほさんは面接で持ち前の明るさを発揮し、見事、採用。UFOキャッチャーの設定を行うプライズスタッフとして働くようになりました。
「私が働いていたお店は積極的にお客さんに絡みにいけというスタイルだったので、いろいろな人に話しかけていたら、いつの間にか顔見知りが増えて向こうから話しかけてもらえるようになりました」
そのゲーセンは高齢者のお客さんが多く、童顔のちほさんは常連客から孫のようにかわいがられるように。仲良くなったお客さんにシングルマザーだということを打ち明けると、休憩時間にご飯をごちそうしてもらったり、子どもへのお菓子をもらったりするようになりました。
「本当にありがたかったです。私はもともとお年寄りと話すことが好きで、オン・オフきっちり分けたいタイプでもないので、仲良くなったおばあちゃんと喫茶店や焼き肉に行ったりもしていましたね」
◆80歳くらいのおじいさんに気に入られる

これまで関わりがなかった人と話せ、給料ももらえる楽しい場所。ちほさんの中で勤務先のゲーセンはそんな場所になり、お客さんに楽しい時間を過ごしてもらいたいとの思いから、より一層、接客に打ち込むようになりました。
そんなある日、ちほさんは80歳くらいのおじいさんを接客しました。孫のためにぬいぐるみを必死に取っている姿が健気で、取りやすいよう、少しサービスしてあげました。
すると、おじいさんは喜び、ちほさんを「かわいくて優しい子だね」と絶賛。それを機に、毎日、店に訪れ、ちほさんに話しかけるようになりました。
◆UFOキャッチャーでゲットした景品をプレゼントされるように
やがて、おじいさんは店でゲットした景品をちほさんにくれるようになります。他の常連客から聞いたのか、ちほさんがシングルマザーであることを知り、子ども用のお菓子やぬいぐるみを取って渡してきたり、ちほさんが好きなディズニーキャラクターのぬいぐるみをゲットしてはプレゼントしてきたりするようになりました。
「もちろん断りましたが、頑なに景品を押しつけてくるので、受け取らざるを得なくて。あまりにも毎日プレゼント攻撃をされるので、少し怖くなり、店長に相談しました」
しかし、おじいさんのおかげで店の売り上げが上がっていたため、店長はあまり親身になってくれません。
「貰ったプレゼントは筐体の中に戻すなり貰うなり好きにして、適当にあしらえばいいと言われました」
そこで、ちほさんはパート仲間に頼み、おじいさんが現れた時にはインカムで情報を共有してもらい、なるべく会わないように工夫。ばったり遭遇してしまっても「仕事があるので……」と言い、長く話さないように意識しました。
「そしたら、ある日、パタっと店に来なくなったんです。ご高齢だったので、ひょっとしたら命に関わることがあったのでは……とは思いましたが、どこかでホっとしている自分がいました」
◆ケーキを片手に「付き合おう」と愛の告白。断ったら激怒
おじいさんが来なくなったことで、ちほさんは恐怖を感じることがなくなり、これまで通り平穏な生活を送れるようになりました。
しかし、2ヶ月ほどしたある日。UFOキャッチャーの筐体内で設定をしていたちほさんは後ろから誰かに肩を叩かれました。振り返ると、そこにいたのは例のおじいさん。いつもはよれよれの服を着ていたのに、その日はなぜかアイロンかけされたシャツを着ており、手にはケーキの箱が。

なんだか不気味と思いながらも、ちほさんはとりあえず「こんにちは」と挨拶。すると、おじいさんはケーキの箱と共に自分の電話番号を記した紙をちほさんに渡し、「大好き。付き合おう」と愛の告白。
驚いたちほさんが「彼氏いるんで」と咄嗟に拒絶すると、おじいさんはいきなり怒り始め「この前、店内で話してた男か!?」と問いただしてきました。
「おじいさんが言っていた男の人は、数週間前に話していたお客さんでした。お店の中に入らず、おじいさんは私が誰かと話しているところをずっと店外から監視していたんだなと知り、ゾっとしました」
◆ラブコールは止まらず、やむを得ず退職
その後もおじいさんから「結婚しよう」「食事にいこう」とラブコールが続いたため、ちほさんはお店を辞めることに。現在は、在宅ワークをしながら飲食店で働いていますが、人と関わることが少し怖くなってしまったといいます。
「人と話すことが好きだったので接客業は天職だと思っていましたが、自分の距離のつめ方は誤解を生むと分かったので、人とどう関わればいいのか悩むようになりました」
もしかしたら、大事になっていたかもしれない恐怖体験をしたちほさん。彼女の心の傷は消えることはありませんが、「社交的」という自分の強みを再び誇れる日が来るといいですね。
<取材・文/古川諭香>
【古川諭香】愛玩動物飼養管理士・キャットケアスペシャリスト。3匹の愛猫と生活中の猫バカライター。共著『バズにゃん』、Twitter:@yunc24291

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