フランスの港湾都市ル・アーブルの街角で、路肩に駐車していた自動車がミツバチの大群に占拠されるというハプニングが起こった。ミツバチを追い払うために地元の消防士と養蜂家が出動し、現場には規制線が張られるなど物々しい雰囲気となった。しかし専門家によると、このようなハプニングはある時期において「まったく普通のこと」であり、さらには「慌てる必要は一切ない」というのだ。

今回の騒ぎが起きたのは、フランス北西部の港湾都市ル・アーブルであった。この港町の中心部は第二次世界大戦後に行われた都市再建が評価され、ユネスコ世界遺産(文化遺産)に登録されている。またル・アーブルは印象派絵画の発祥地としても有名であり、ノルマンディー地方の中心に位置する立地条件から新たな観光地として人気を集めている。

4月29日金曜日、そんな幻想的な風景の広がるル・アーブルにて数千匹のミツバチが路上の車に群がり、ひと騒ぎを起こした。『Actu.fr』の報道によると、車に群がったミツバチを追い払うために地元の消防士と養蜂家が出動したという。ミツバチに占拠された自動車の救助にあたったのは、ノルマンディーの消防士でブリブ養蜂場(Bribees Apiculture)の代表も務めるブリス・キャロン氏である。同氏が撮影した写真には、プジョー2008の自動車を覆うミツバチの軍団が写っている。一見すると車の後部に大量の泥が付着しているように見えるが、これは紛れもなくハチの大群なのだ。また写真には消防車も写っており、近隣住民や歩行者の安全を危惧したためか立ち入り規制のテープが張られている。

なぜ大量のハチが自動車を棲みかとして選んだのかは分かっていないが、おそらく「車の板金の温かさ」が原因であると言われている。ブリス氏は「女王バチは働きバチを伴って巣箱を出て、別の場所に新しい生息地を作り、卵を産むのです。“再生”と“増殖”を可能にするプロセスです。最適な生息地を見つけるまで、点から点へと移動するのです。4月29日の金曜日はプジョーでした」と説明した。

ある日突然、ハチの大群が自分の車を占拠していたら驚いてしまうが、ブリス氏は「慌てなくていい」と主張する。このような事態に遭遇した場合は、養蜂家を呼ぶだけでいいそうだ。養蜂家はこのようなケースの依頼を受けると巣箱を持ってやってきて、ハチの巣の近くに配置する。その中にできるだけ多くのハチを落とし、巣箱を閉じていく。この作業の目的は女王バチを捕獲するためである。女王バチを探し出した後は、腹部を空中に向けて羽ばたかせ、女王のフェロモンを放出させる。働きバチはこのフェロモンに反応して巣箱に戻ってくるというわけだ。働きバチの回収はこれで終わりではない。ブリス氏によると「ハチはニワトリと同じで、昼になると出て行き、夜になると入ってくる」ので、全てのハチが戻ってくるためには日没を待たなければならない。

今回のハプニングが起こった自動車でも女王バチを見つけることに成功し、ハチの大群は無事に別の棲みかに移動した。この自動車の持ち主の詳細については明かされていないが、運転手はハチの大群が去って安堵していたそうだ。

このようなハプニングは滅多にないと思われがちだが、ブリス氏によれば5月から6月末まではミツバチの繁殖期のため「まったく普通のこと」という。ハチは巣箱の中で別の女王を繁殖させ、新しい女王が生まれると、古い女王は働きバチの半分を連れて出て行ってしまう。ミツバチの大群は新しい生息地を求めて去っていき、木や茂み、柱、家、車など、どこにでも棲み着く可能性がある。またハチは巣を離れる前に、新しい棲みかを見つけるまで生き延びるため、たくさんのハチミツを食べる。人間が危害を加えなければハチは襲ってくることはないため、むやみにハチの大群を追い払わないほうが良いそうだ。

救助にあたったブリブ養蜂場が今回のハプニングについてFacebookに投稿すると、多くの「いいね!」やコメントが寄せられた。中には同様にミツバチによって自動車を占拠されたことを報告するコメントがあり、誰の身にも起こり得るハプニングだということが分かる。

画像は『Bribees Apiculture 2022年4月30日付Facebook「Un peu d’originalité」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 H.R.)

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