新型コロナウイルスへの規制緩和が世界各地で進むなか、中国政府は感染を最小限に抑え込む「ゼロコロナ政策」を堅持。上海市のロックダウン(都市閉鎖)といった厳格な感染対策が、サプライチェーン(物流網)や生産活動の一部に混乱を招いている。日本の大手自動車メーカーも部品調達難から国内工場を停止するなど、国内企業の活動に影響が出ている。
そこで、帝国データバンクは、中国ロックダウンの影響に関するアンケートを行った。
<アンケート結果(要旨)>

  1. 中国ロックダウンによって、企業活動に『マイナスの影響がある』(「既にマイナスの影響がある」35.5%と「今後マイナスの影響が出る見込み」12.9%の合計)企業は48.4%となった。
  2. 業界別でみると、『卸売』(60.2%)や『製造』(57.7%)を中心に、幅広い業界へ中国ロックダウンの悪影響が広がっている。

『マイナスの影響がある』企業は48.4%
中国ロックダウン の影響
中国が行うロックダウンなどの行動制限によって、企業活動にどのような影響があるかを尋ねたところ、『マイナスの影響がある』(「既にマイナスの影響がある」と「今後マイナスの影響が出る見込み」の合計)企業は48.4%となった。内訳をみると、「既にマイナスの影響がある」が35.5%、「今後マイナスの影響が出る見込み」が12.9%となった。他方、33.8%の企業が「影響はない」と回答した。


部品や原材料の入荷遅れなどにより、直接・間接的な悪影響が幅広い業界へ広がる
マイナスの影響がある(主な業界)
『マイナスの影響がある』企業を業界別でみると、『卸売』(60.2%)や『製造』(57.7%)を中心に、幅広い業界へ中国ロックダウンの悪影響が広がっていることが分かった。企業からは「上海港が使えないため、原料が中国から届かない。他の港も対応が難しくなっており、調整を続けている」(界面活性剤製造、大阪)といった、上海市のロックダウンによるサプライチェーン(物流網)の混乱が、企業活動へ響いているとの声が多くあがった。

さらに、影響の大きい『卸売』と『製造』を詳しくみると、「化学品製造」(73.8%)、「機械・器具卸売」(66.4%)、「鉄鋼・非鉄・鉱業」(62.6%)、「機械製造」(56.6%)での悪影響が、とりわけ大きくなっている。企業からは「客先で使用する部品が入ってこないため、当社への注文品も5月分全てキャンセルされた」(ガス・石油機器製造、群馬)と、中国からの機械関連などの部品や原材料の入荷の遅れが企業活動に直接的のみならず、間接的にもマイナスの影響を与えているとの声が多く聞かれた。

また、今後、中国ロックダウンの悪影響が及ぶことを不安視する声は、『建設』で17.3%、『卸売』で15.4%の企業で聞かれた。
マイナスの影響がある(主な業種)
「既にマイナスの影響がある」と回答した企業の声
  • 中国から冷凍野菜を輸入しているが、ロックダウンで上海からの船便が出港できていない。輸入品が予定日に届かず販売ロスに繋がり業績に影響が出ている(冷凍食品卸売、広島)
  • 国際物流を生業としているが、特に上海は輸出・輸入ともに重要な港であるため、影響は避けられない。貨物の滞留がここまで長引くとは想像しておらず、上海港より南通市へのシフトも考えているほど影響が大きい(港湾運送、大阪)
  • 中国から部品が入らなくなったことで、国内メーカーが製品を完成できなくなっており、他の部品もキャンセルしている(金属プレス製品製造、兵庫)
  • 1つの部品が足りないだけですべての生産が止まってしまう企業が多く、直接関係のない我々もそれに巻き込まれている(金型・同部品等製造、和歌山
  • 資材の仕入れはもとより、車両の買い替え時期も大幅に遅れている(一般管工事、東京)

「今後マイナスの影響が出る見込み」と回答した企業の声
  • 半導体や部品などの輸入が滞ると、メーカーの売り上げ減少がおき、設備投資意欲が減退する(熱絶縁工事、大阪)
  • 中国から輸入する資機材などが品薄状態になることで物品価格の高騰を招き、購入意欲が弱まりそう(不動産代理・仲介、埼玉)
  • 直接の影響はないが、工事に必要な部品などが中国から入荷せず、工事の進行が遅れることで、当社の販売も遅れるという影響は出つつある(発泡軟質樹脂品製造、栃木)

「既にプラスの影響がある」と回答した企業の声
  • ロックダウンによって既存取引先で納期遅延が発生したとのことで、自社へ金型および製品の発注依頼があった(工業用樹脂製品製造、大阪)

本アンケートの結果、ロックダウンなどの中国が行う行動制限によって、4割弱の企業で既にマイナスの影響を受けていることが判明した。さらに今後マイナスの影響が出ると見込んでいる企業を合わせると、約半数の企業で企業活動にマイナスの影響が及ぶことが分かった。

中国・上海市は6月にロックダウンが解除される見込みだが、中国政府が引き続きゼロコロナを続ける事態となれば、生産活動やサプライチェーン(物流網)の停滞、混乱が拡大することが予想される。さらに厳格な外出制限措置などによって、中国経済自体が冷え込む事になれば、今の時点では影響を受けていない日本国内の企業にも、悪影響が広がっていく可能性が懸念される。

配信元企業:株式会社帝国データバンク

企業プレスリリース詳細へ

PR TIMESトップへ