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参議院議員による“グリーン車タダ乗り詐欺”を発端に、国民の怒りが再燃している議員特権の問題。そこには以前と変わらず、数々の不正がはびこっているようだーー。

「公私の区別をしないで、JR無料パスを悪用している議員はいくらでもいると思いますよ。極端な話、愛人とお忍びで温泉旅行に行くときに使ったってわからない。もしバレても“視察で行った”と言い続ければ、うやむやになる。過去にも京都や熱海に遊びに行った議員が、そう言ってごまかしていましたね」

こう語るのは、現職のベテラン国会議員A氏だ。

5月8日、現職の国会議員に成りすまし、新幹線のグリーン券をだまし取ったなどとして、詐欺と有印私文書偽造・同行使の疑いで元参議院議員の山下八洲夫容疑者(79)が逮捕された。

事件発覚後、国会議員に支給される鉄道乗車証(通称・JR無料パス)が、再び国民の注目を集めることに。これは、新幹線グリーン車寝台特急の個室を含むJR全線がタダで乗り放題という夢のような“議員様パス”だ。

山下容疑者が悪用したJR無料パスは、落選した12年前にすでに失効しているが、落選後も継続して使っていたという。なぜ、これまで発覚しなかったのか。

「顔写真もなく、赤く“国会”と書かれたパスを有人改札でサッと見せればOKなんです。駅員さんも国会議員だと思うから、名前や有効期限をいちいち『確認させてください』とは言いにくい。だから10年以上もバレなかったのでしょう」(前出・A議員)

過去にも現職議員が公務外で使用した疑惑がたびたび問題視され“不正の温床”とも言われてきたJR無料パス。それでも廃止されることなく現在に至っている。

A議員によると、現職議員には1年に1回、パスが支給される。山下容疑者のように選挙で落選した元議員は国会からパスの返却を求められるそうだが、返却しなくても、特に罰則規定はないという。この管理のずさんさが、不正がはびこる原因にもなっている。

今回の事件をきっかけに、“議員特権”に対する国民の怒りが再燃している。その1つが、議員たちが暮らす“億ション”並みの豪華な議員宿舎だ。

東京・赤坂の一等地にある3LDKの衆議院議員宿舎(家賃約12万5,000円)と、紀尾井町にある参議院議員宿舎(家賃約15万8,000円)は、いずれも周辺相場の4分の1ほどと破格で住むことができる。

中堅の国会議員B氏が、宿舎で目撃したあきれた実態をこっそり明かしてくれた。

「入口には警察官が立ち、宿舎内には警備員が巡回、もちろん監視カメラもあります。そんな中でも、深夜にクラブの女性と一緒に帰ってくる議員もいるんです。名前は言えませんが(笑)。別の日の深夜には、正面玄関から顔を隠して出ていく怪しい女性も見かけました。顔やたたずまいを見るだけで、だいたい議員の家族か秘書かはわかります。きっとラブホ代わりに使っている議員もいるんでしょうね……」

部屋のカードキーさえあれば、誰でも家族のように簡単に宿舎に入れるのだ。セキュリティはかなり緩いと言えるだろう。

■文通費は6年間で7,200万円

そして議員特権と言えば、昨年から大きな問題となっている「文書通信交通滞在費」(通称・文通費)。“第二の給料”とも呼ばれる、月額100万円の活動費だ。別のベテラン国会議員C氏は次のように語る。

「実際のところ、文通費の月額100万円は“非課税の給料”です。参議院議員の場合は解散がないので歳費と手当とは別に6年間で7,200万円が確実にもらえることに。だから大した活動もしていない議員や、1期で辞めるつもりの議員にとっては、文通費はかなりうれしい特権のはず」

経費を削減し、文通費もできるだけ使わない。別口座に全額プールして貯金をしている議員がいてもけっして不思議ではないという。

「国民から“おいしすぎる特権だ”と言われても返す言葉もありません。都心でマンションが買えるようなお金をもらっているわけですからね」(C議員)

前出のB議員は、文通費に関して、公私の使い分けをしていないことを正直に白状する。

「毎月、同じ口座に歳費(給料・103万5,200円)と文通費が振り込まれます。合算された203万5,200円を収入として考えるので、文通費から何にいくら使ったかなど、いちいち把握はしていないのが実情です。基本的に同じ財布から出るお金なので、公私の使い分けをしている議員は少ないでしょう。領収書も必要ないですから」

10日、立法府をつかさどる三権の長・細田博之衆議院議長は、国会議員の歳費について「議長でも100万円しかもらっていない」「1人あたり月給で100万円未満であるような手取りの議員を多少増やしたって罰は当たらない」と発言し、猛批判を浴びている。

やはり、国会議員を長く務めていると、金銭感覚がマヒしてしまうと言わざるをえない。

国民を代表して、民意を行政や財政に反映させるーー。それが国会議員の本分であるからこそ、私たちの血税が数々の議員特権に投入されているはずだ。

【厚遇されすぎな「国会議員特権」一覧】

〈歳費・手当〉

歳費(給料):月額103万5,200円
手当(ボーナス):年額637万円(2回に分けて支給)

〈活動費〉

文書通信交通滞在費:月額100万円(領収書の添付不要、非公開、非課税)
立法事務費:月額65万円(所属会派に支給)
交通費:グリーン車含むJR全線無料 パス、往復航空券(月3回)など
議員会館:永田町の事務所(約100平方メートル)が無料
議員宿舎:港区赤坂の3LDKに約12万5,000円で入居可など

〈その他〉

公設秘書の給与:約2,500万円(3人まで雇うことができる)

議員の先生方に、職務を全うしているという自負があるのなら、それぞれの使い道を堂々と詳らかにできるのではないだろうか。