アメリカのフロリダ州にある片側5車線の大通りで今月5日、車を運転していた女性が突然意識を失ってしまった。列の先頭にいたこの車は意識を失った女性を乗せたままゆっくりと動き出してしまいあわや衝突事故となるところだったが、事態に気がついた周囲の人々が協力して車を止めたおかげで大惨事を免れたという。当時の緊迫した様子を『NBC2 News』などが伝えている。

今回の騒ぎは今月5日午後4時40分、米フロリダ州ボイントンビーチにある大通りの交差点で起こった。当時の様子を捉えた映像から、現場は片側5車線の大きな道路であることが確認できる。縦方向の信号が青になり次々と車が走り出していくが、画面上部の中央付近に停まっていた黒いセダンが他のレーンの車を遮るように斜めの方向にゆっくりと進み始めた。しかしこの車を運転していたローリー・ラビヤーさん(Laurie Rabyor)は何らかの発作を起こし、意識を失ってしまっていたのだ。

この事態にいち早く気付いたのは、別の車に乗っていた同僚の女性だった。彼女は2車線向こうで運転していたローリーさんがハンドルに倒れ込んでいる姿を目撃し、すぐに自分の車を停車させて外に出ると他の車に止まるように大きく腕を振り、合図を出しながらゆっくりと動く車を追いかけた。すぐに追いつき窓ガラスを叩いてローリーさんを起こそうと試みたが、意識を取り戻す気配はなかった。ドアも鍵がかかって開かなかったため、女性は再び大きく腕を振り周囲にいたドライバーたちに助けを求めた。

この時点で車は交差点を横断し、対向車線の方まで移動していた。周囲の人々は緊急事態であることを察し、車を飛び降りて駆け寄り、6人がかりで体重をかけて車を止めることができた。それからさらに人が集まり、ある男性が腕で車の窓ガラスを割ろうとしたが、簡単には割れなかった。別の人がダンベルを持ってきて他の男性に渡し、それを使って窓ガラスを割るとようやくブレーキをかけることに成功した。その後、数名がドアを開けてローリーさんの安否を確認し、車を手押しで近くにあったセブン-イレブンまで移動させる様子も映っていた。

現場には偶然にも看護師が居合わせており、緊急通報番号911に連絡して救急車が到着するまで手当を行った。救急隊が現場に到着した頃にローリーさんは意識を取り戻していたという。のちに娘のアラーナ・フレイさん(Alana Frey)は、救助の様子を撮影した動画を見て「『嘘でしょ?』といった感じで唖然としましたよ」と驚いたそうだ。アラーナさんはローリーさんが意識を失ってしまったのは、食事を摂らずに薬を飲んだことが原因ではないかと推測している。また「母を助けてくれた皆さん一人一人にとても感謝しています」と述べた。

また当時、ローリーさんの救助に加わった米陸軍二等軍曹フアン・チャベスさん(Juan Chavez)は「最初は誰かが変な運転をしているなと思っていました」と振り返っている。しかし最初にローリーさんの車に駆けつけた女性が「意識がないの!」と叫んでいるのを聞き、すぐに緊急事態であることに気付いたそうだ。「私の両親は『困っている人がいれば手を差し伸べ、誰にでも優しくしなさい』と教えてくれました」と話すフアンさんは「何かしなければ」と思い、すぐに行動に移したという。

この動画を見た人からは、「助けに入った人々には頭が上がらないよ」「見ず知らずの人々が助け合う姿は本当に素晴らしい」「人の心の温かさを感じるね」など絶賛の声が届いた。なおフアンさんをはじめ、助けに入った人々はその場に留まることなく去ったそうだが、のちに警察がそれぞれの人を特定し感謝状や記念品を贈呈した。

画像は『Boynton Beach Police Department 2022年5月11日付Facebook「Good Samaritans help driver suffering medical episode」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 iruy)

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