コロナ禍を機に、オンラインカジノへのアクセス数が急増。24時365プレイできる点、射倖性のある演出などが人気を呼んでいるが、ハマりすぎて借金や家庭崩壊などに至る人が続出している。その実態を追った。

◆気がつけば賭け金が膨らみ、24時間生活を侵食

公営ギャンブルが盛んな「ギャンブル大国」日本の地下で勢力を拡大している、オンラインカジノデジタル分析支援会社「シミラウェブジャパン」の調査によると、日本からのアクセス数は’18年12月では約64万PVにすぎなかったのが、コロナ流入が確認された’20年1月には約7820万PV、’21年8月には約8300万PVにまで急増。実に100倍以上の増加となった。

現在日本国内でのオンラインカジノ参加者は約200万人とも言われており、巣ごもり需要を背景に一気にユーザーを獲得した形だ。

スマホからでも簡単に入会・アクセスでき、最小0.2ドルからプレイ可能。サイトによっては還元率は97%、高額の当たりも珍しくない。そうした仕組みのせいか、あるギャンブル依存症治療関係者は「昨今はパチスロ、競馬などにオンラインカジノを含めた複合型の依存者が増えている」と話す。

◆借金を作り離婚に至ったケース

ギャンブルによる借金の中には、オンラインカジノによるものも少なくないと推測される。

船橋透さん(仮名・会社員・38歳)は初回登録時に入金額分付与されるボーナスを魅力に感じ、軽い気持ちで200ドルを入金した。

YouTubeで見た『ムーン・プリンセス』という、ブロック崩しのようなゲームでした。当初は1ゲーム0.6ドルで始め、30分ほどで300ドルに。当たった時は、喜ぶよりも賭け金が少額であったことを悔やみました。それで賭け金を5ドルに上げると、15分ほどで入金分を含めすべて消えました」

クレジットカードからの入金のため散財した実感もなかった。結果、20万円ほど負け、妻に内緒で家計の不足分を消費者金融で借りて補塡。より大きな勝ちを求め1回10ドルにしても翌日には溶かした。

気がつけばカードは限度額の100万円に達し、消費者金融への返済も滞るように。そこで初めて妻に告白すると、怒り、嘆かれたが、結局2人の定期預金を崩し支払った。その後、流れるように離婚に至ったという。

海外旅行で経験した本場のカジノが忘れられずにいた田中信吾さん(仮名・会社員・39歳)は、それがオンラインでも出来ることを知ってのめり込んだ。

ビデオスロットボーナスゲームで高額が当たった際には、脳汁がドバドバ出ました。ボーナスゲーム自体の時間は短いので、終わってもう1回当選するまでやろうと考えてました。『オートスピン』を設定して移動中や仕事中に回していましたが、ボーナスゲームが気になり、スマホを見るために仕事中に何度もトイレに篭りました」

◆勝っても負けても理性がたやすく吹っ飛ぶ

ブラックジャックポーカーでは、ディーラーや相手の高めの手に対して勝てたときも興奮が止まらなかった。理性が飛ぶのは、勝ったときよりも負けたときだった。

「次は勝てるという謎の確信を持って入金し続けてしまう。負けた日の夜は生活費や光熱費をどう払おうか考えて眠れませんでした」

すぐに生活が逼迫し、総額30万円ほどをカードローンから借りた。脱却のきっかけは奇しくもほかのギャンブルだった。

「その後会社を辞め、パチスロの専業として安定した収入を得られるようになったのでやめました」

毒をもって毒を制したというべきなのか……。そして高木雄介さん(仮名・会社員・32歳)は、依存状態の原因をこう主張する。

「一回の入金額は2万~3万円程度で少ないほうですし、負けても別のサイトに登録して初回入金100%ボーナスがつけば実質チャラ。サイトは腐るほどあるので、それほどダメージはないです」

◆総額3000万円にまで膨らんだ借金

そんな小さな額が積もり大借金と化したのが山本隆弘さん(仮名・自営業・41歳)。山本さんはオンカジの射倖心を煽る演出にみるみる呑まれていった。

バカラではこちらが8を出したら、相手の目が9。ポーカーなら、AA(エースが2枚)あるのに、2が2枚のヤツに負けた。こういう理不尽なことが起きれば最後、理性が吹っ飛びます」

ほどなくして山本さんの全財産は消え、借金をするに至った。

「銀行では50万円ほど借りるつもりが、金利がお得だからと言われ300万円借り入れました。その後友人や知人経由で総額3000万円にまで膨らみました」

誘惑を断ち切るためパソコンを何度も壊し、スマホを川に投げ捨てるなどしたが効果はなかった。結局、1500万円は任意整理で圧縮。残り半分は前職の退職金や、副業で数年かけて返済した。

「妻には退職金がないことがバレたら大ごとになるので、今後数年かけて補塡しなければなりません」

◆今後は取り締まりが強化される可能性も

そもそも日本国内では公営競技以外の賭博は違法だが、オンラインカジノアフィリエイトサイトも多く、ネット広告でも頻出するため違法性が認知されていない。日本国内で運営した場合は、賭博場開張図利罪として罰せられるが、ほとんどが海外で運営しているため違法ではないというのが運営側の主張だ。

一方で平成25年立憲民主党の階猛議員が政府に提出した質問主意書でオンラインカジノの違法性について質問したところ、政府は「一般論としては、賭博行為の一部が日本国内において行われた場合、刑法第百八十五条の賭博罪が成立することがあるものと考えられる」と回答している。

つまり警察の胸三寸で検挙できるばかりか、実際に政府が進めている国内カジノ設置に向け、取り締まりが強化される可能性もある。果たして、中毒者の増加と暴走を止める術はあるのか……?

◆専門家は潜在数の多さを危惧

国内初のギャンブル依存支援施設「NPO法人ワンデーポート」理事の中村努氏は次のように話す。

「この1年くらいの間に、オンラインカジノにハマったという相談も全体の1割程度ではありますが入ってきています」

だが、潜在数はそれ以上であると推定しているという。

ギャンブル障害を抱える人やそのご家族からの電話相談を受けていますが、コロナ以降、公営競技へのネット投票が原因で生活や人間関係が破綻したという相談が増えています。そのような人々にとってオンラインカジノハードルが低いと考えられます。また、合法ではないため隠している可能性もあり、実際の相談件数以上に多いのではないかと危惧しています」

◆問題の埋没化が加速する理由

国際カジノ研究所所長の木曽崇氏は、オンラインカジノの違法性への認識が薄い点と、主務官庁が存在していない点が問題の根源であると指摘する。

「当研究所が’20年に行った小規模の意識調査では、59%が合法またはグレーゾーンであるという認識でした。海外サーバーの違法性に踏み込めないならばリーチサイト(リンク掲載サイト)規制の適用を論議すべきですが、各省庁としては労働が増えるだけで旨みがないのでしょう。よって依存症についても実態調査が行われず、問題の埋没化が加速する」

◆依存症増加の抑止策は法規制以外になし

ギャンブル等依存症対策基本法にはカジノおよびオンラインカジノは含まれていない。両者ともに、オンカジ依存対策は法規制以外にないと話す。

パチンコでは金銭管理などの支援を行うことで節度を持った遊び方に戻ることが可能な人もいるが、オンラインカジノは違法なので適度に付き合うような支援は考えられず、一律の禁止が原則」(中村氏)

アフィリエイト含め、サイト経由で裏社会に流れているカネも多い。そういう観点からも、速やかに取り締まるべき」(木曽氏)

政府が乗り出した頃には、「時すでに遅し」とならないことを願うばかりだ。

【中村 努氏】
NPO法人ワンデーポート理事、施設長。2000年に同施設を開設。共著に『誤解だらけの「ギャンブル依存症」』(彩流社より6月刊行予定)

【木曽 崇氏】
国際カジノ研究所所長。ネバダ大学ラスベガスホテル経営学部卒業。日本で数少ないカジノの専門研究者。近著に『「夜遊び」の経済学』(光文社新書)

取材・文/SPA! オンラインカジノ問題調査班

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