物価高が止まらない。サントリー食品インターナショナル10月からのペットボトルを中心とした主要な飲料商品の値上げを発表するなど、生活への影響が大きくなってきた。

 ロシアによるウクライナ侵攻の影響を受けた原油高や円安進行はしばらく続く見通しで、庶民生活が圧迫されるのは避けられそうにない。

サントリー10月から一律20円値上げ、コカ・コーラや国内競合も

 サントリーは16日、「サントリー天然水」「クラフトボス」「サントリー烏龍茶」など165品の清涼飲料を、希望小売価格ベース10月から20円引き上げると発表した。

 ペットボトルの容量は500ミリリットル前後の小型から2リットルなどの大型容器まで含まれ、スーパーコンビニ自動販売機など全ての販売ルートが対象となる。

 同社は値上げの理由について、原油価格の高騰によるペットボトルの調達コスト上昇や、急激な円安進行によりコーヒー豆や砂糖などの原材料の仕入れ価格が高騰していることなどを挙げている。

 サントリーだけではなく、コカ・コーラ ボトラージャパン5月1日出荷分より2リットル、1.5リットルの大型ペットボトルの値上げを実施したこともあり、国内の競合他社が追随する可能性は極めて高い。

◆原油高によるコスト高、スシローフルーツも価格上昇

 値上げは飲料だけにとどまらない。庶民の味方の代表格である回転寿司大手チェーンスシロー」を運営する、あきんどスシローは円安による調達コストの上昇で10月1日から値上げを実施すると発表した。

 値上げ幅は皿や店舗によって異なり、10〜30円程度を見込むが、一番安い皿を税抜100円から値上げするのは1984年の創業以来、38年間で初めてだという。

 輸入フルーツも高騰している。農林水産省の市場調査によると、5月17日時点の1キロあたりの卸売価格はバナナ173円(前年同日が165円)、オレンジ352円(同295円)、グレープフルーツ276円(同241円)と約1割も値上がりしている。

◆食料・資源輸入国の日本、黒田総裁が円安継続宣言でさらに輸入コストが上昇

 そもそも日本は食料自給率が低い国だ。2020年度の食料自給率はカロリーベースで37%と過去最低を記録した18年度と同水準に落ち込んだ。

 大まかにいって日本人は食料の6割を輸入に頼っていることになるため、今回のロシアによるウクライナ侵攻といった非常事態が発生し国際秩序が乱れた場合、すぐに食料品価格が高騰するリスクが非常に高い。

 小麦に関しては、ウクライナは世界第3位の生産国のため、今回の侵攻による被害で国際価格が上昇することになった。直近でも第2位のインドが国内価格の上昇を受けて禁輸措置を発表したため、さらに価格が高騰した。これを受け、日本でもパン製品などの価格上昇が見込まれる。

 日本の場合、食料や原油の輸入価格を引き上げているのは、日本政府・日銀が金融緩和による円安政策をアベノミクス以来継続している要因も大きい。日銀の黒田東彦総裁は先月末の金融政策決定会合で「全体として円安がプラスという考え方を変えたわけではない」と大規模緩和の継続を明言している。

 ただ、欧米諸国がインフレ抑制のために政策金利の引き上げに動く中、「マイナス金利政策の日本との金利差がひらけばますます円が売られ、1ドル=150円の大台も全く不思議ではない」(国内証券アナリスト)とする声も少なくない。

 円安が日本の消費者を苦しめる局面はしばらく続きそうだ。

中小企業で給与にシワ寄せも。購買力が弱れば節約志向が強まる悪循環

 日本人の給料が上がらず、購買力が低下することも懸念される。

 日銀が16日に発表した4月の国内企業物価指数(速報値)は前年同月比10.0%上昇した。企業間で取引されるモノの価格動向を示すこの統計が明らかにしたのは、製造工程が川上から川下に移るにつれて価格転嫁が進んでいないことだった。

 素材メーカーなどの川上の大手企業は取引先企業に原材料の価格高騰分を転嫁することが比較的容易だが、川下の部品メーカーや加工メーカーなどでは顧客や取引先を失うことへの懸念などにより、「価格転嫁をお願いしにくい」ことが基本的な要因と推察される。

「この状況が続けば経営体力のない中小企業の給与が上がらず、コロナ禍による不況で強まった節約志向に拍車がかかり、日本経済はますます勢いを失う」(前出アナリスト)

◆スタグフレーションの影

 景気が良くないのにインフレが進む経済現象を「スタグフレーション」という。日本では1970年代オイルショックの時期がそうであったとされるが、50年越しに到来したこの困難に日本社会は立ち向かっていかなければならない。当時の日本は人口が増加し、まだ経済成長にも大きな伸びしろがあった。しかし現在は……。

 親ロシア派と反ロシア派で、世界的に戦時体制下のブロック経済化が進んでいるのも日本の対応を難しくさせている。

<取材・文/竹谷栄哉>

【竹谷栄哉】
フリージャーナリスト。食の安全保障、証券市場をはじめ、幅広い分野をカバーTwitterアカウントは、@eiyatt.takeya

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