組織を統合したり、分割したりという組織改革を、数年おきに実施しているような会社はたくさんあります。統合と分割を繰り返していると、中にいる人から見れば、「なぜそんな“無限ループ”を繰り返すのか」と思うことも多いでしょう。筆者がいたリクルートも、十数年前に事業ごとに会社を分割したのですが、少し前に7社を吸収合併して再度、「リクルート」に統合しました。

 分割、統合の意図が分からなければ、「無駄なことをやっている」だけに見えるかもしれないのですが、企業はそれほど非合理なものではないと、筆者は思っています(非合理なことばかりしていれば、そのうち競争に負けて、なくなってしまうことでしょう)。では、背景にはどういう理由があるのでしょうか。

集権化と分権化の間で変わり続ける

 組織改革の中で最もよく行われているのは、組織の「集権化」と「分権化」です。集権化とは、組織におけるさまざまな決定権限を少人数の中央組織に集約して、中央から最前線のメンバーに号令して動かす体制にすることです。トップダウンともワンマン体制などとも言われます。

 分権化とはその逆で、権限を最前線の組織に委譲して、行動を自己決定する体制にすることです。組織を分けたり、合わせたりしているように見える現象の本質はこれです。集権化するのであれば一つの組織にしておく方が便利ですし、分権化するのであれば、自己決定してよい範囲に組織を分けておく方が分かりやすいということです。

 それがなぜ繰り返されるのかと言えば、2つの体制のどちらがよいということはなく、どちらにもメリットデメリットがあるからです。ですから、その時に組織が直面している問題を解決するために、集権化がよければそうするし、分権化がよければそうするので、集権化と分権化が繰り返されていくのです。

 いわば2つの体制は振り子の両端のようなもので、組織はその間を揺れ動いているのです。どちらかの体制がどんな環境においても理想の体制であれば、こんなことは起こりません。そうではないから、「より適している体制」に都度変え続けているのです。

一つの方針を徹底するなら集権化

 集権化は、一つの行動をダイナミックに組織全体で徹底することに向いています。このため、危機に際して迅速に対応するときや、これまでの方針を一気に転換すること、また、安定したビジネスモデルが確立されたときも、それを組織全体で長期にわたって徹底して実行していくことで、最大限の成長を成し遂げることにも有効です。

 ただ、集権化には問題もあります。例えば、中央が全体の情報を集めると、情報は「伝言ゲーム」をすることで劣化していきます。また、指示された行動をするばかりであれば、最前線のメンバーは自発性や創造性を失っていきます。

自律的行動を促したいなら分権化

 一方で、分権化すると、人々はチーム全体を隅から隅まで把握しやすくなり、迅速で正確な意思決定と実行ができます。変化の激しい環境や、確実な大方針が決まっていない状況においては、これはとても重要な効果です。また、意思決定を任されれば、個人は持てる自律性を発揮し、組織の多様性が増し、創造性が高まります。

 ただ、分権化も落とし穴があります。全体を見ずに下した現場の判断は、全体最適ではない偏った判断かもしれません。また、多様性が増せば、コミュニケーションコストが高まり、全体の動きを鈍くします。せっかくのよいアイデアも、全体に波及しにくくなるかもしれません。

だから、集権化と分権化を繰り返す

 結局のところ、集権化も分権化もそれぞれにメリットデメリットがあり、企業は自社の置かれた環境や課題に応じて、どちらの組織体制を目指すかを決めています。ただ、企業は事業方針がはっきりしている時期もあれば、これまでの方針が陳腐化し、次の大方針を探し迷う時期もあります。これらを繰り返して事業は進展していくので、組織も集権化と分権化との間の変化を繰り返すのです。

 中にいる人にとっては、組織変更の繰り返しは苦しいことでしょうから、不満を言いたくなるのも分かります。しかし、今日の企業にとっては、環境の変化に応じてどれだけ迅速に適切な体制に移り変われるかが勝負です。そのため、「組織改革の無限ループ」は、立ち向かわねばならない「永遠の課題」なのです。

人材研究所代表 曽和利光

なぜ組織改革を繰り返す?