1965年11月、神奈川県内で世にも奇妙な「未成年強盗」が発生した。

 11月某日の昼過ぎ、剣を手にした学生服の少年が「金を出せ!」と住宅に押し入った。異様だったのは、この学生の後ろに少女たちが青ざめた表情で立っていたことだ。

 事の発端は数日前にさかのぼる。県内の中学校に通う3年生のAは同級生から400円あまりの金を無心し、そのことを知った中学校教師や実の父親から叱責されたのだ。

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 教師はともかく、父親から責められたことはAにとってもショックだった。Aは学校の教師に復讐しようと考え、自宅の物置から太平洋戦争中に使われたゴボウ剣(三十年式銃剣)を持ち出し、学校へと向かった。

 学校に到着したAは、教室の机に一人で突っ伏している同級生の女子生徒を見つけた。この日、学校では卒業アルバム用の写真撮影を行っていたが、女子生徒は途中で気分が悪くなり教室で休んでいたのだ。

 Aはこの女子生徒に剣を突き付け、「金を出せ。一緒に来い」と学校の外に連れ出した。Aは近くの山へと向かい、ハイキングを楽しんでいた10代の会社員女性を同じく剣で脅し、自分についてくるよう脅した。

 Aはその後、たまたま近くにあった住宅に人質とともに押し入り、2000円を奪い、さらに逃走用の車を要求したという。

 だが、やり放題だったAもここまであった。「不審な学生を見た」との情報が相次ぎ、しばらくしてAは監禁、強盗の容疑で逮捕された。

 女性たちがAを振り切り、逃げることができなかったのは、Aが剣を持ちながら「俺は先生を刺してきた」と言っていたため、怖くて逃げられなかったのだという。

 「女性を連れた中学生の男子が剣を片手に金品を奪う」という、かなり異様な強盗事件はけが人もなく無事に解決した。