
―[道路交通ジャーナリスト清水草一]―
◆姉さん、事件です
トヨタが’97年の東京モーターショーを前に初代プリウスを発表してから四半世紀――。ついにフランスのルノーが独自開発のハイブリッドを日本で発売しました!「あのルノーがついに」と思うか「今ごろ?」と思うかはともかく、ヨーロッパって数年以内にガソリンの新車販売が禁止になるはず。なんで今ごろ独自ハイブリッドなの? これはちょっとした事件です。
永福ランプ(清水草一)=文 Text by Shimizu Souichi
佐藤靖彦=写真 Photographs by Sato Yasuhiko
◆ルノーが今ごろハイブリッドを発売! そこから見えてきた、ヨーロッパの本音
当コラムのカーマニア軍団(永福ランプと担当K)の間では、ルノー車が旬だ。昨年、永福はオシャレな水色のルノー・トゥインゴ(ド中古)を購入。素敵なカーライフを送っていたが、DCT(ATミッション)がブチ壊れて奇数ギアを喪失。クラッチモーターの交換(約8万円)で直ったものの、Kのアルファ147がご臨終となったため、トゥインゴを貸与。その間に今度は偶数ギアに入らなくなり、再び8万円で復活。そしてKへ正式譲渡――というストーリーをたどっている。
永福:奇数ギア喪失に続いて、偶数ギア喪失とは、さすがルノー車は品質が揃ってるね!
担当K:永福さんのときは奇数ギアがなくなっただけでしょ?
永福:そう。2速で発進して、4速、6速とシフトアップしてた。ぜんぜん普通に走れたよ。むしろスムーズなくらいだった。
担当K:偶数ギアがなくなると、バックもできなくなるんですよ! 車庫入れできないんでレッカー呼びました。
永福:バックはニュートラルに入れて、降りて押せばよかったのに。
担当K:ウチは奥さんも乗りますからムリです! 我が家は一家揃ってトゥインゴにぞっこんなんですよ!
永福:それはよかった。
担当K:奥さんと娘は水色のボディカラーが大好きですし、僕も、乗れば乗るほどRR(リヤエンジン・リヤドライブ)の操縦性が好きになりました。なんでもない交差点を曲がるのが気持ちイイ! Uターンが気持ちイイ! 狭い路地が気持ちイイ! そして首都高も気持ちイイ! 3気筒900ccターボエンジンの振動や音もたまりません!
◆突然ハイブリッドカーを出したと聞いて…
永福:そんなルノーが、突然ハイブリッドカーを出したと聞いてビックリしたね。
担当K:「Eテックハイブリッド」って言うから、てっきり日産のeパワーの流用かと思ったら、まったく別物。ルノーの独自開発だって聞いて、たまらなく不安になりました。
永福:車名も「アルカナ」だもん。聞いた瞬間に「ないかな~」って気がした。
担当K:ドグミッションという、シトロエンのハイドロのような唯一無二的なメカの正体を知りたくて、久しぶりに試乗前の車両説明を真面目に聞きましたよ! 案の定、中身は超複雑ですね。
永福:トヨタから遅れること四半世紀、ヨーロッパ初のフルハイブリッドだ。日本の特許を避けるのが大変だったのかも。ヨーロッパはこの先EV一本で行くはずなのに、狂ったか!?って感じだよ。
◆運転してみた感想は…
担当K:運転してみた感想は、高速の合流時の加速とかは思ったほどでもなくて、こんなもんかなあという感じでした。加速が足りないわけじゃないんですが、ちょっと伸びがイマイチですね。
永福:オレは自分が乗ってた初代プリウスを思い出した。なんかちょっとフィーリングが似てない?
担当K:さすがに、アレよりはだいぶ速いと思いますよ。
◆エンジンとモーターのスペックを見ると…
永福:でもエンジンとモーターのスペックを見ると、かなり近いんだよ。ああ、ヨーロッパは初代プリウスに追いつくのに四半世紀かかったのか~って思った。
担当K:正直、ディーゼルのほうが全然いいとは思いますけど、それは時代が許さないんですね。
永福:ルノーによれば、これはディーゼルの代わりなんだってね! でもヨーロッパでは、数年以内にディーゼルもガソリンも、そしてハイブリッドも禁止されるはず。なのに今さらこんなのを出したのは……。
担当K:そんなに早く全部EVにするのはムリかもしれない、って思ってるからですかね?
永福:そう! バッテリーの量産が間に合わないかもしれないしさ。つまりアルカナのハイブリッドはその保険! ヨーロッパの本音が透けて見えたね! しかし今頃になって初代プリウスを出すとは……。
担当K:いくらなんでも、初代プリウスよりはだいぶ速いと思いますよ!
◆【結論!】
ルノーが独自ハイブリッドを開発したのは、「eパワーじゃフランスなどの高速で時速130㎞巡行した際に、燃費もパワーもいまひとつだから」。アルカナは低速域ではモーター主体、高速ではエンジン主体で走る。カタログ燃費はeパワーの日産キックスよりわずかに上!
【清水草一】
1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中。清水草一.com
―[道路交通ジャーナリスト清水草一]―

コメント