
新入社員が今年もやってきました。そこで日刊SPA!では反響の大きかった記事の中から厳選した、モンスター新入社員ベスト10を発表。今回はギャップ編。世代間の考えの違いから起こった、驚きのエピソード第8位はこちら!(初公開2020年8月11日 集計期間は2018年4月~2021年12月まで)
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入社後、すぐに辞めてしまう新入社員は後を絶たない。先輩社員のなかには「根性が足りない」などと言う人もいるかもしれないが、新入社員にも言い分はある。
実際にどんな退職理由なのだろうか。2020年、新型コロナウイルスの感染が拡大するなか、入社9日で仕事を辞めたというももさん(Twitter:@momochan1998_)に話を聞いた。
◆入社9日で辞めた新入社員、退職の理由は…
「大学時代にネットカフェで約3年働き、接客が好きになって。卒業後は社会や人の役に立つ仕事がしたいと思うようになりました。私としては介護職が最上級の社会貢献だと思い、面接を受けて内定をもらいました」
ももさんは介護の知識や経験はなかったため、介護レベルが低めの人が多く入所するグループホームを希望した。企業説明会の段階で、施設には自分で動ける人が多いと聞いており、「私にも出来るのではないか」と入社を決めたそうだ。
しかし入社3日目、漠然と「辞めたい」と感じ始める。
「介助が比較的少ない方が多いと会社説明会でも言われていました。でも実際の配属は介護レベルが少し高めで、認知症の方が多くいらっしゃるところでした。ご入居者様は、昔の記憶は鮮明に覚えているので、『自分で歩ける、食事できる、トイレにいける、入浴できる』と思い込んでる方がとても多く、よく介護拒否をされました。先輩スタッフは『放置しておけばいい』と、特に何もしないうえ、ご入居者様の愚痴を目の前で言い、『聞こえてないから大丈夫』と話していて。尊敬できる人は誰もいませんでした」
他にも、“休憩”とは名ばかりで働かなければならない環境や、連休が取りにくくワークライフバランスが保てないと感じたそうだ。
責任は非常に重いのに給料が低いことも気になった。また、職員は施設の近くに住んでいる人が多い一方、ほとんどの新卒社員は施設まで電車で通っていた。
新型コロナが拡大する中、ある職員が「新卒組しか電車通勤じゃないんだから十分に気を付けてね」と嫌味のように言ったそうだ。
「社長からはコロナでも無くならない仕事に就けて安定だとか、幸せだと言われました。確かにそうなのかもしれませんが……」
入社3日目で母親に電話で仕事が辛いことを伝えたそうだ。離れて暮らす家族とは電話での連絡やLINEでのメッセージで頻繁にやりとりしていた。
「初日は頑張ると言っていたので、3日目で辛いというのは少しためらいましたが『仕事が辛くなりそうだ。社員は連休も取れないから帰省はしばらくできないかもしれない』と伝えました。
『あまり無理しないで』と母親にいわれ、逆に頑張らないと、と思いました。その後7日目にまた電話をし、『もう無理だ』と伝えると母親が『退職代行』を提案してきました」
入社数日で辞めたい、と伝えることに当初は後ろめたさを感じていたももさんだが、家族は賛成してくれた。むしろ、他にやりたいことがあるならやりなさい、と伝えられた。もっと反対されるかと思っていたので、家族の反応に驚きつつ、非常に安心したという。
◆最初で最後の給料が振り込まれ…
退職前に、新卒採用担当者やエリアマネージャーにも職場環境や仕事内容について相談していたが、「次第に慣れる。もう少し頑張れないか? 一緒に良い環境作りをしていこうよ」と言われたそうだ。「1年後には都内勤務か本社勤務も選べるから」と言われたが、信じられなかったという。
エリアマネージャーとの相談で辞めたい気持ちがさらに強まったももさんは退職の意向を固めた。その日さっそくLINEで退職代行サービスに登録。翌日、退職すると伝えて欲しいと依頼した。
「翌朝、退職代行業者から『希望時間より10分程早めに退職を伝えた』とLINEで連絡がきました。そして伝言で、退職届などの郵送物を確認次第、手続きをすすめるとのことでした」
退職の連絡を受けたのか、勤務先のエリアマネージャーから何度か電話が入っていたそうだが、出なかったそうだ。その後、淡々と言われた通りに書類を郵送。退職届や要望書は代行業者が雛形を送ってくれ、手間はかからず、名前、住所、印鑑を押すだけだった。
翌月、最初で最後の給料が振り込まれ、その2週間後に離職票が届いた。退職代行で退職を伝えてから約2か月で全ての手続きが完了した。
「初めて使うもので、身近に使ってる人もいないので不安もありました。もしこれで辞められなかったら気まずいとも思いましたが、直接言うのは絶対無理だったのでとても助かりました」
退職直後はとりあえず安心したが、無気力感や脱力感で何もできなかったそうだ。SNSで上手くいっている同世代を見るのがとにかく辛かったのだとか。
それでも2週間後、将来について改めて考え始め、転職サイトに登録。退職からなんと1か月後にはIT企業での採用が決まった。採用が決まってからもコロナの影響で入社日が先送りになる中で、「起業の夢を持つようになった」と話す。
「入社まで時間があったので、今できることをしようとツイッターで同じ悩みを持った人の話を聞くようになりました。いろんな方が相談にきてくれて、元々カウンセラーになりたかったので、誰かの為になっていることが嬉しかったです」
先輩社員からすれば、すぐに辞めてしまう社員を理解できないのかもしれない。しかし、辞めるのにはそれなりの理由があり、大きな決断が存在している。もしも若手がすぐに辞めてしまうことがあれば、職場環境などを見直すサインなのかもしれない。<取材・文/星谷なな>
【星谷なな】
5歳の頃からサスペンスドラマを嗜むフリーライター。餃子大好き27歳。 たまに写真も撮ります。Twitter:@nanancypears

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